ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
ゾラの報告
国王は今回の事を受けて、イザベラを処罰するべく動き出していた。
とはいえ、さすがに貿易国であり友好国である彼女の母国との兼ね合いや、各国王家などへ嫁いだ彼女の姉妹の力関係、彼女(エドガー王子)を推す有力貴族が擁護したため、極刑という事にはならなかった。
常に実行犯が不明、または死亡していたおり確固たる証拠がないことも理由の一つだった。
それでも国王は、イザベラ妃に地方離宮への永蟄居を命じた。
つまり、王宮からの永久追放だ。離宮から一歩たりとも外へ出てはならないし、エドガー王子との面会も、彼女の方から申し出ることはできない。
そうすることで、有力貴族や力のある他国王族などとのパイプを切り離し、これ以上彼女の陰謀が実行されない手段を取ったのだ。彼女のような人間にとって、ある意味では極刑より厳しい処分かもしれない。
今回の事で、国王の怒りがどれほどのものか思い知った貴族たちの中には、彼女から離れていく者は少なからずいたし、利益を望むだけの諸外国も同様だろう。
彼女の母国であるクレイセンクール王国が、この先どう出るかは正直わからないが、少なくとも力関係ではモンフォール王国に太刀打ちできないことは確かだ。
エドガー王子を推す派閥は、かなりの力を失うことになったが、もちろん彼への直接の処罰や、継承権の剥奪などは一切なかった。その辺は、もともとのリュシアンの願いを、国王が聞き入れた形となっていた。
「……イザベラ妃のことはわかったよ。それで、エドガーがどうしたって?」
あまり過激な刑が下されることがなくてよかったと安堵しつつ、リュシアンはその先の報告を促した。
心情的なものは別にして、国内で争いが起こるような事態は本意ではない。確かに彼女が生きている限り、おそらく完全に憂いが断たれたわけではないだろう。たとえ彼女が直接動かなくても、周りは勝手に動くものだからだ。それでも、助命を願う理由は一つしかない。
「エドガー殿下は……、王宮に戻られてすぐ陛下にお会いしたそうです」
再び口を開いたゾラは、一度も顔を上げることなく幾分声を落とした。まるで周りに気を使うかのように、どこか密やかな口調になっていた。
嫌な予感がヒシヒシと忍び寄る。
リュシアンは、躊躇するゾラを促すように、小さく頷いた。
「殿下は……、継承権を放棄したいと、申しておりまして」
「ッ!? はあっ? 何言ってんの」
ゾラの言葉を遮るように、リュシアンは「やっぱりだよ!」と、頭を抱えた。
(あの単細胞ときたら、何を勝手に突っ走ってんだ。様子がおかしいと思っていたら、案の定、ロクなこと考えてなかったよ!)
「ほ、本来、未成年の王族に放棄の権利はありませんが、母親が罪人としてすでに放逐されていることもあり……」
「ダメに決まってるでしょ! それで、陛下はなんて言ってるの?」
思わず立ち上がったリュシアンは、俯いたまま跪くゾラを見下ろしたした格好になった。
「……陛下は、まだお答えになっておりません」
とはいえ、さすがに貿易国であり友好国である彼女の母国との兼ね合いや、各国王家などへ嫁いだ彼女の姉妹の力関係、彼女(エドガー王子)を推す有力貴族が擁護したため、極刑という事にはならなかった。
常に実行犯が不明、または死亡していたおり確固たる証拠がないことも理由の一つだった。
それでも国王は、イザベラ妃に地方離宮への永蟄居を命じた。
つまり、王宮からの永久追放だ。離宮から一歩たりとも外へ出てはならないし、エドガー王子との面会も、彼女の方から申し出ることはできない。
そうすることで、有力貴族や力のある他国王族などとのパイプを切り離し、これ以上彼女の陰謀が実行されない手段を取ったのだ。彼女のような人間にとって、ある意味では極刑より厳しい処分かもしれない。
今回の事で、国王の怒りがどれほどのものか思い知った貴族たちの中には、彼女から離れていく者は少なからずいたし、利益を望むだけの諸外国も同様だろう。
彼女の母国であるクレイセンクール王国が、この先どう出るかは正直わからないが、少なくとも力関係ではモンフォール王国に太刀打ちできないことは確かだ。
エドガー王子を推す派閥は、かなりの力を失うことになったが、もちろん彼への直接の処罰や、継承権の剥奪などは一切なかった。その辺は、もともとのリュシアンの願いを、国王が聞き入れた形となっていた。
「……イザベラ妃のことはわかったよ。それで、エドガーがどうしたって?」
あまり過激な刑が下されることがなくてよかったと安堵しつつ、リュシアンはその先の報告を促した。
心情的なものは別にして、国内で争いが起こるような事態は本意ではない。確かに彼女が生きている限り、おそらく完全に憂いが断たれたわけではないだろう。たとえ彼女が直接動かなくても、周りは勝手に動くものだからだ。それでも、助命を願う理由は一つしかない。
「エドガー殿下は……、王宮に戻られてすぐ陛下にお会いしたそうです」
再び口を開いたゾラは、一度も顔を上げることなく幾分声を落とした。まるで周りに気を使うかのように、どこか密やかな口調になっていた。
嫌な予感がヒシヒシと忍び寄る。
リュシアンは、躊躇するゾラを促すように、小さく頷いた。
「殿下は……、継承権を放棄したいと、申しておりまして」
「ッ!? はあっ? 何言ってんの」
ゾラの言葉を遮るように、リュシアンは「やっぱりだよ!」と、頭を抱えた。
(あの単細胞ときたら、何を勝手に突っ走ってんだ。様子がおかしいと思っていたら、案の定、ロクなこと考えてなかったよ!)
「ほ、本来、未成年の王族に放棄の権利はありませんが、母親が罪人としてすでに放逐されていることもあり……」
「ダメに決まってるでしょ! それで、陛下はなんて言ってるの?」
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