ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
帰還
武術科恒例、新年度合同キャンプ実習は中止となった。
あの後、ゾラにより学園にもたらされた情報で、急遽、救護班と討伐隊が組まれ現地に送られた。結果的には目的の魔物は倒された後だったが、諸々の後始末には大いに役立った。なにしろ生徒たちはバラバラに逃げていたので迷子が続出し、しかも結界外まで飛び出した生徒もいたらしく、魔物討伐もあったらしい。
これは後で聞かされた話だが、キャンプ地でも騒動が起こっていた。
リュシアン達が遭遇した魔物ほどではなかったが、見たことがない魔物が数匹現れ暴れていたというのだ。武術科の教師陣が総出で、しかも一部の討伐隊も協力してなんとかそれを撃退したらしい。小型で強さもそれほどではなかったが、魔力を吸収するバケモノだったようだ。
リュシアンはというと、自らの中級治癒魔法により傷はほとんど癒えたが、そのあとの記憶はぷっつりと途絶えていた。どうやらそのまま眠ってしまったらしく、気が付いた時にはすでに学校に戻っていた。
目が覚めると、そこは見慣れた寮の部屋ではなく、前にも来た事がある医務室のベットであった。
(うわっ、身体が重い……この感じ、懐かしいぞ)
三日位徹夜して、少し仮眠を取った時の感じだ。全然疲れが取れてない上に、寝る前より余計に眠い、みたいな最悪な状態。
とにかく酷い目にあった。
あんなに楽しみにしていたキャンプは、最終的に散々な結果になった。
なかなか起き上がる気になれず、白い天井をぼーっと見つめていると、いきなりチョビが頭から移動してきて顔の上を歩いてきた。視界がチョビ一杯になって、リュシアンはびっくりして飛び起きた。
「わっ、こ、こら……、どこ歩いて、チョビ」
チョビは顔からコロッと落ちて、リュシアンが掬うように広げた両手の中に納まった。見下ろすリュシアンをじっと見つめてから、チョビは自慢の角をごりごりごりごりと手のひらに擦りつけてくる。
「いたたっ、ごめんね…、そっかチョビにも心配かけたよね」
黒くつぶらな瞳が気のせいかうるっとして、パタパタと小さな羽根で飛んでリュシアンの肩に乗ると、ゾリゾリと頬ずりした。かと思えば頭に登って髪をもみくちゃにして、また手のひらに戻って来る。忙しく往復して、目いっぱい甘えモードだ。
「あははっ、痛いよチョビ」
じゃれついてくるチョビに、リュシアンは少し元気を貰ったようにようやく笑った。そして、ふと視界の端っこに何かが映った気がして、視線をベットの脇…、その下に向けた。
「…っっ!?」
ビクッと、思わずチョビを放り投げそうになった。
そこには、顔を俯けたまま静かにひざまずく隠密ゾラの姿があった。無言のままピクリとも動かず、まるで置物のようにその場に控えていた。
――い、いつからそこにいたの?
あの後、ゾラにより学園にもたらされた情報で、急遽、救護班と討伐隊が組まれ現地に送られた。結果的には目的の魔物は倒された後だったが、諸々の後始末には大いに役立った。なにしろ生徒たちはバラバラに逃げていたので迷子が続出し、しかも結界外まで飛び出した生徒もいたらしく、魔物討伐もあったらしい。
これは後で聞かされた話だが、キャンプ地でも騒動が起こっていた。
リュシアン達が遭遇した魔物ほどではなかったが、見たことがない魔物が数匹現れ暴れていたというのだ。武術科の教師陣が総出で、しかも一部の討伐隊も協力してなんとかそれを撃退したらしい。小型で強さもそれほどではなかったが、魔力を吸収するバケモノだったようだ。
リュシアンはというと、自らの中級治癒魔法により傷はほとんど癒えたが、そのあとの記憶はぷっつりと途絶えていた。どうやらそのまま眠ってしまったらしく、気が付いた時にはすでに学校に戻っていた。
目が覚めると、そこは見慣れた寮の部屋ではなく、前にも来た事がある医務室のベットであった。
(うわっ、身体が重い……この感じ、懐かしいぞ)
三日位徹夜して、少し仮眠を取った時の感じだ。全然疲れが取れてない上に、寝る前より余計に眠い、みたいな最悪な状態。
とにかく酷い目にあった。
あんなに楽しみにしていたキャンプは、最終的に散々な結果になった。
なかなか起き上がる気になれず、白い天井をぼーっと見つめていると、いきなりチョビが頭から移動してきて顔の上を歩いてきた。視界がチョビ一杯になって、リュシアンはびっくりして飛び起きた。
「わっ、こ、こら……、どこ歩いて、チョビ」
チョビは顔からコロッと落ちて、リュシアンが掬うように広げた両手の中に納まった。見下ろすリュシアンをじっと見つめてから、チョビは自慢の角をごりごりごりごりと手のひらに擦りつけてくる。
「いたたっ、ごめんね…、そっかチョビにも心配かけたよね」
黒くつぶらな瞳が気のせいかうるっとして、パタパタと小さな羽根で飛んでリュシアンの肩に乗ると、ゾリゾリと頬ずりした。かと思えば頭に登って髪をもみくちゃにして、また手のひらに戻って来る。忙しく往復して、目いっぱい甘えモードだ。
「あははっ、痛いよチョビ」
じゃれついてくるチョビに、リュシアンは少し元気を貰ったようにようやく笑った。そして、ふと視界の端っこに何かが映った気がして、視線をベットの脇…、その下に向けた。
「…っっ!?」
ビクッと、思わずチョビを放り投げそうになった。
そこには、顔を俯けたまま静かにひざまずく隠密ゾラの姿があった。無言のままピクリとも動かず、まるで置物のようにその場に控えていた。
――い、いつからそこにいたの?
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