ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版
続・生活魔法
エルフの魔法でもう一つ試したいことがあったので、リュシアンは新たに二つの巻物を取り出した。
それは「水」を出す、という魔法だ。
案外これは画期的というか、すごい魔法である。
なにしろ、飲み水を出せるのだ。いつでもどこでも、魔力さえあれば。
これがどれほどすごいことかわかるだろうか。
それなのに、一般的でない理由はただ一つ。必要属性が、水と光だからだ。飲み水ではないウオッシャ―などは光魔法は使わないけれど、どうやら飲むための水には光属性が必須らしい。
光魔法は稀有な魔法なうえに、五大魔法と光や闇の属性は普通は同時に持つことがない。
ちなみにエドガーは、水も光も扱えるのでこの魔法は簡単に使えるのだが。
「うわ、なにこれ」
その水は驚くほど美味しかった。
例えば、ここの川の水はもちろん美味しいけれど、それとは違う美味しさなのだ。リュシアンは、一つの可能性に気が付いた。
これは「魔水」に近いのではないかと。
一般に出回っている魔水は、手間をかけ魔力を使って錬金術で作る。魔力に馴染みがよく、あらゆる錬金に欠かせない貴重な錬金水である。身近なところで、魔法陣などを描くためのインクにも使われている。
もともとエルフが使う魔水を参考に、人の手で改良され錬金術で作られるようになったのかもしれない。
やがて、夜の見張りを決める夕礼に行っていたみんなが帰って来た。
リュシアンは病み上がりで留守番だったので、諸々のお礼を兼ねて、甘いお菓子でも提供しようと、さっそく準備を始めていた。テーブルには、すでに焼き菓子がいくつか並べられている。
「お帰り、ごくろうさま」
「ただいまー、大人しくしてた? ……あら、これなに?」
まるで子供に対する態度のニーナに、リュシアンは思わず苦笑しつつも、先ほどの魔水で淹れたハーブティーを、順番にカップへと注いでいった。
「クッキーだよ、作って持ってきてたんだ」
「く? なんだって? ……ぃてっ!」
聞くが早いか、エドガーがさっそくつまみ食いしようとしたので、リュシアンはピシャッと手を叩いた。
「ちゃんと手を洗ってくるように!」
目を吊り上げたリュシアンに、エドガーだけではなく全員がビクッとして手洗い場に走っていった。どうやら何人かは手を伸ばそうとしていたらしい。エドガーはそんな彼らと一緒に、ワイワイと、時にふざけながら手を洗っている。
すっかり学園生活に染まっているエドガーに、リュシアンは思わず肩を竦めた。
「お菓子はもともと出すつもりだったんだけど、今日はみんなにも迷惑かけちゃったしね。特別な水で淹れたお茶も追加したんだ」
かくして、リュシアンの提供したお茶とお菓子は、皆の心を鷲掴みだった。
ニーナなどはどこで買ったんだ、このお茶のブランドはどこだと鬼気迫る勢いだ。危うく顔がくっつきそうになる距離で、リュシアンは本気で焦った。
茶葉は普通のだし、クッキーは手作りだと言ったはずだが、それだけでは納得しなかったらしい。
「白状しなさい……、あら? なんだかリュシアン、いい匂いがするわね」
それは「水」を出す、という魔法だ。
案外これは画期的というか、すごい魔法である。
なにしろ、飲み水を出せるのだ。いつでもどこでも、魔力さえあれば。
これがどれほどすごいことかわかるだろうか。
それなのに、一般的でない理由はただ一つ。必要属性が、水と光だからだ。飲み水ではないウオッシャ―などは光魔法は使わないけれど、どうやら飲むための水には光属性が必須らしい。
光魔法は稀有な魔法なうえに、五大魔法と光や闇の属性は普通は同時に持つことがない。
ちなみにエドガーは、水も光も扱えるのでこの魔法は簡単に使えるのだが。
「うわ、なにこれ」
その水は驚くほど美味しかった。
例えば、ここの川の水はもちろん美味しいけれど、それとは違う美味しさなのだ。リュシアンは、一つの可能性に気が付いた。
これは「魔水」に近いのではないかと。
一般に出回っている魔水は、手間をかけ魔力を使って錬金術で作る。魔力に馴染みがよく、あらゆる錬金に欠かせない貴重な錬金水である。身近なところで、魔法陣などを描くためのインクにも使われている。
もともとエルフが使う魔水を参考に、人の手で改良され錬金術で作られるようになったのかもしれない。
やがて、夜の見張りを決める夕礼に行っていたみんなが帰って来た。
リュシアンは病み上がりで留守番だったので、諸々のお礼を兼ねて、甘いお菓子でも提供しようと、さっそく準備を始めていた。テーブルには、すでに焼き菓子がいくつか並べられている。
「お帰り、ごくろうさま」
「ただいまー、大人しくしてた? ……あら、これなに?」
まるで子供に対する態度のニーナに、リュシアンは思わず苦笑しつつも、先ほどの魔水で淹れたハーブティーを、順番にカップへと注いでいった。
「クッキーだよ、作って持ってきてたんだ」
「く? なんだって? ……ぃてっ!」
聞くが早いか、エドガーがさっそくつまみ食いしようとしたので、リュシアンはピシャッと手を叩いた。
「ちゃんと手を洗ってくるように!」
目を吊り上げたリュシアンに、エドガーだけではなく全員がビクッとして手洗い場に走っていった。どうやら何人かは手を伸ばそうとしていたらしい。エドガーはそんな彼らと一緒に、ワイワイと、時にふざけながら手を洗っている。
すっかり学園生活に染まっているエドガーに、リュシアンは思わず肩を竦めた。
「お菓子はもともと出すつもりだったんだけど、今日はみんなにも迷惑かけちゃったしね。特別な水で淹れたお茶も追加したんだ」
かくして、リュシアンの提供したお茶とお菓子は、皆の心を鷲掴みだった。
ニーナなどはどこで買ったんだ、このお茶のブランドはどこだと鬼気迫る勢いだ。危うく顔がくっつきそうになる距離で、リュシアンは本気で焦った。
茶葉は普通のだし、クッキーは手作りだと言ったはずだが、それだけでは納得しなかったらしい。
「白状しなさい……、あら? なんだかリュシアン、いい匂いがするわね」
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