何もしてないのに異世界魔王になれて、勇者に討伐されたので日本に帰ってきました

天都生 てうる

推しが尊い問題は死活問題です。どうでもいいですが世間って狭いですよね

「豆腐65円、木綿と絹ごしは木綿の方がいい、と言ってたような気がしなくもないが...うわっ」


今、ある青年が神戸市のアオンモール(の中のスーパー)にて買い物をしている。と、いうのも青年にとって部下であるJKに任せたら余計なものまで買ってくるし、青年の主人はバイトのシフトが入っており買い物には行けないから。


...と、そんなこんなで豆腐を選んでいた時、青年の左肩に衝撃が走った。自分より少し身長が高いくらいの人物と肩でぶつかり、決して弱そうではないが華奢な方の体つきである青年は、よろけて尻持ちを着いた。情けない限りだ、というふうな表情の青年にその人物は手を差し伸べて声をかけた。


「大丈夫か?すまん、俺が不注意だったせいで」

「いえ、こちらこそすみません」


...その人物の名は緑丘望桜、この物語の主人公であり13代目(元)魔王だ。手で青年を支えながら、この子プライド高そう、意外と可愛いかもと考えているが、顔には出さない。


「っとと...」

「ほんとに大丈夫なのか...?」


まだフラフラとする青年は、自身を助け起こそうとする手の力にすらよろけてしまう。床に着いた方とは逆の、豆腐を持った方の手を胸の前で固定したまま望桜の胸に、よろけた勢いで当たった。


「あ...」

「え?あっ...」


望桜が少し冷っとした腹を見てみると、豆腐は見事にぺったんこ。豆腐の水が望桜の服に沁み広がり、青年の手から滴り落ちた。...なんか気持ち悪い。


「っあ、すみません!ユニテロので良ければ新しいものを買います!すみません!!」

「ああ、いいよいいよ!どうせ洗えば落ちるし...」


今にも土下座をしそうな勢いで頭を下げた青年に対し、望桜はありきたりだけどほんとのことを言う。望桜にとって豆腐の周りの液体...まあほぼ水であろう液体は洗えばすぐ取れる。ってか乾いても普通と変わらないような気がしてならない。


「えっ...でもやっぱり買い直さないことには...」

「これはただの水だと思うぞ?」

「...はっ」


青年は手に着いた液体をしみじみと見た。そしてじっとなにかを考え、何を思ったかハッとして我に返った。


「確かにそれもそうですね...ですが濡れたままだと気持ち悪いですよね、やっぱり俺、買ってきます!!」

「いいって!大丈夫、うちここから近いし!」


「そうなんですか?...でしたら、今回のお詫びも兼ねて今度なにかご馳走させてください」

「あー...」


別にいいんだけどな、と思いつつも食費が浮くのは望桜的にもありがたいことなので、この誘いは受けることにした。


「...こっちのMINEの連絡先教えるから、お互い都合のいい日に行こう」

「わかりました!これですね...」


望桜のスマホ画面に表示されたMINEのIDを入力する青年。俺はMINEもHNだから、なんともふざけた名前になっている。


...刹那、スーパーのアナウンスがなり始めた。


『卵ワンパック198円のタイムセールのお時間です!ただし、おひとり様ワンパックまでとなっておりますので、ルールを守ってお買い物ください〜』

「あっ!ちょっと急ぎの用事を思い出しましたので、これで失礼します!すみませんでした!」

「タイムセールか...ww」


またも勢いよく頭を下げて駆けて行った青年、どうやら彼にとって卵のタイムセールは外せない急用らしい。...まあ、俺が欲しいものはもう既にカゴの中だし、精算して帰るとするか。


...後に緑丘望桜は、彼等と会い、そして彼らの正体を知った経緯のことをこう語る


─────────────とても騒がしかったと。


「あ"ー...」

「どしたの?最近ため息ばっかりだけど...」

「いや、それがな?...」


俺は買い物でのことを話し、そこから少し進んだMINEでの会話のことも話すことにした。


...青年の名は餅月 或斗もちづき あると、兵庫県明石市に住んでいる19歳の主夫?らしい。他2人とシェアハウスしてる...俺とほぼ同じような生活環境にいて、主に家事係を担当しており、買い物以外で外に出ることはまあないとのこと。そしてお互いが都合のいい日(或斗側に特別な用事が入ることはほぼないので、俺のバイトが休みの日)をMINEで確認して、結果次の土曜日ということになった。


そこまではいいのだ、そこまでは。


問題は外で食べるのはなんだか腑に落ちないから、或斗が家で何か作ってご馳走することに決定したこと。俺も甘かった、結構好みの青年だったからってテンションの勢いのまま快諾してしまった。...だって家に行けるんだぞ?普通に考えたら快諾するだろ。


そしてなにより1番の問題が...


『瑠凪さんも喜ぶと思います!よろしくお願いします(◍´꒳`◍)』


或斗が送ってきたこの文章だ。瑠凪さん?うちのバイト先にも同じ名前の尊き同僚
がいるのですが...


とにかく、読んだ瞬間めっちゃ焦った。漢字まで一緒だし、よく考えたらオーナーや丞から"瑠凪はシェアハウス生活している"ということがわかる会話何回かしてたわ俺...


「...と、いう感じなんだが...」

「馬鹿じゃん」


このあいだの出来事で、新たに同居人となったベルゼブブ...早乙女 鐘音さおとめ べるね(ちなみにこの仮名は俺が決めた)の短刀の如き鋭いお叱りの言葉を頂いた。


「...テンションのままに快諾したって...理由が馬鹿すぎる。もうなにもせず行けば?」

「...はあ、そうするしかないか」

「ただいま〜」

「あ、おかえり的李」


...と、鐘音とあれこれ議論していたら、的李が帰ってきた。最近は古本屋の客足の伸びがいいらしく、夜までかかって帰ってくることも少なくない。こいつは魔王軍では作戦参謀として、かなりの戦力差があった竜狼族との戦いでも、的確な現場指示と作戦書で勝利に導いてくれた、意見を聞いておくのもいいかもしれない。
  

「...馬鹿だね」

「やっぱそこに行き着くのかお前らぁ〜...」


今に始まったことじゃないが、うちの同居人は2人とも毒舌、無自覚のハートブレイカーだ。


「気分のまま快諾した時点でダメなのだよ。もっと相手の情報を得て弱点を探り、それから敵の本丸に乗り込むか否かを判断せねば。まったく、人間というものは無能な猿から進化した生物、望桜もそれであるだけのかなり短絡的な考え方なのだよ」

「お前何か勘違いしてねえか??あと俺今は悪魔とのハーフなんだが...」

「君はちょっと特別で、猿から人間に進化して、そこから悪魔に進化したのだよ。だから元は同じ」

「まじかぁ〜」

(断るか?でも結構MINEの文章内容的に或斗くんめっちゃ嬉しそうだしなー...)

「...あ〜!!もうどうすればいいんだろうな〜!!...あ”あ”〜!!!」

「望桜煩い!!」

「鐘音!もうその墓穴堀野郎はほっといて夕食を食べ給え!」


今日も本町のマンションで怒号が鳴り響いた。行くのを楽しみにしている反面、お互いの立場が立場なのでちょっとだけ不安だった。


──────────その頃、明石市のマンションにて...


「うぬぬぬ...あ!ちょっとおま、お前え〜!!仲間殺してどーすんのさ!」

「忙しいねぇ〜」

ソファに座ってテレビゲームをする小柄な少年...瑠凪と、その横で寝転がるJKが居た。

「いや、だって仲間殺すっておかしいでしょ!?」

「るったんちょっと落ち着きな?」

「いや...謀反して何か得がある訳でもないでしょこのゲーム...単純な5VS5なんだから...!」

「ダメだあれ...あっ!そのコスのノア君可愛い〜!!」

「貴様も落ち着けニート」

瑠凪を落ち着かせようとしている過程で、自分も2次元の推しを見つけ興奮しだしたJKにツッコミを入れた青年、その青年こそが渦中の人物、餅月或斗である。或斗の同居人は2人、桃塚瑠凪と沙流川 太鳳さるがわ たおだ。

瑠凪は望桜のバイト先の同僚であり推し(望桜の中では)。沙流川太鳳は鈴蘭台にある私立聖ヶ丘學園の3年生で、バレー部に所属している。見た目は金髪を後ろに流し、その1部を2つにまとめたツインテールに、肩出しの服と膝上丈のミニスカとかなり活発に見えるのだが、家でゴロゴロして、お菓子食べて、外に出るのはアニメイトや遊園地等の娯楽施設に行く時と學園だけ。ニートJKである。

「ところで、るったんはボクとあるきゅん以外の人が家に居ても大丈夫なの?」

「俺の事を変なあだ名で呼ぶなニート」

「ニート言うな!!」

「大丈夫だよ?てか僕は人数多い方が楽しいと思うし、なんならみんなでこれで対戦してもいいし」


と言いながらゲームを見やる瑠凪。来客も、一緒に昼食をとってはいさようならじゃ虚しくなるだろう。自分だったら少なくとも寂しくはなる。


「いいの!?やったー!!!」

「よろしいのですか?」

「いいよいいよ!昼食後にすぐ帰ってもらうのじゃ、ちょっと可哀想だしねww」

「にしし!来客ごときにはボクは負けないぞ!ってことでるったん、ボクと勝負だ!まずは君を倒ーす!!」

「お!いいよ、望むところだ!僕も負けないからね!」

「その前に夕食ができましたので、先にお召し上がりください」

「はーい!」

「わかった〜」

「ところで、るったんってボクとあるきゅん以外の人の前じゃ一人称"俺"だよね?でも元々は僕だったじゃん?」

「んー...まあそうだね」

「それって信頼されてるってことでいい?」

「うん」

「やたー!やったぁー!!」


こちらはこちらで、元気のいい声が響き渡る。来客が来るのを楽しみにしており、歓迎ムードだ。



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そして土曜日がやってきた。待ち合わせ場所は神戸ポートタワー。或斗曰く、同居人と観光に行くので望桜がそこで待っててくれれば、こちらから迎えに行くとのこと。望桜の家からはあまり距離は無いため、そこまで苦でもない。


「お待たせしました」

「おー!遅かったじゃねえか或斗!...と?」


時間通りに来た或斗...と同居人であろう美女。或斗は長いGパンにスニーカー、上にTシャツというカジュアルスタイル、同居人の彼女はノースリーブの上にジーンズ生地の上着を肩からかけており、膝上丈のミニスカという服装だ。...ほんま或斗は顔が整ってるし、彼女もめっちゃ美人なんだけど!


「ボクは沙流川太鳳でーす!好きなように呼んで〜!」

「おお!MINEで言ってた同居人か!」

「はい、こいつのことは気軽にニー「その呼び方はやめようねあるきゅん」

「あるきゅん...」

「その名前で呼ばないでください!...あの、なんとお呼びすればいいですか?」

「うーん、望桜でいいよ」

「わかりました、望桜さん」


望桜は顔では余裕をもっているつもりだが、心の中では興奮と不安がひしめきあってる。
...だって或斗がかなり可愛い。いや、ふつうにかっこいいんだけど、そこにプライドが高そう...ってか高いだろ、って所とちょっと童顔入ってるとことか可愛い!太鳳も普通に美女!最高だな!けど今日ほんとに大丈夫なのか??


「ところで、或斗達はこっちに来てどのくらい経つんだ?」

「そうですね...約3年?と言った所でしょうか?」

「へえ〜...そのことなんだけど、俺こっちに来てまもないから或斗達が良ければこの街案内して欲しいんだが...」

「ボクは別に構わないよー!」

「人と街を散策したりするのは楽しいですし、ちょうど俺も主様に何か買って帰ろうと思っていたところなのでむしろ大歓迎です。では行きましょうか」

「ある...だな!」

「おー!!」


─────────────そして或斗達の自宅へ...



「ただいまぁー!」

「ただいま戻りました」

「お邪魔しまーす」


僕の部下が帰ってきた。或斗と太鳳、それにあと1人誰かが...どこかで聞いたことがあるような声もした。誰だろう?


「どうぞ〜...て、望桜じゃん!なんで望桜が来んのさ!!」

「え...え...」

「え〜!!」

「あれ?人が多い方が良いって、言ってなかったっけ?るったん」

「う...」


またこいつは...太鳳は昔から人の揚げ足を取るのが大得意だ、ひょっとしたらそこらの大悪魔より悪魔かもしれない。そしてなんで望桜が...


「俺は昼食の用意をしてきますので、その間ゲームでもしてお待ちください」

「はーい!!」

「わかったぜ」

「うう...なんで望桜が」


(なんか悲しくなってきた...ベルゼブブが13代目魔王である望桜に会えるようちょっとだけ手を貸したら、あとはもう無干渉でいようと思ったのに...)


結構長くなるけど、もともとベルゼブブと僕は師弟関係、僕が下界に堕ちてきて、サタナエル率いる総計100万の魔王軍の軍勢が30万くらいにだった時から親交があって、んでその時から魔法陣の書き方を教えたり、魔力弾道の高速展開の方法とかを教えてるうちに師弟関係になった。


その時まだ生まれたばかりだったベルゼブブが属する蝿蟲族(グロースインゼクト)と親交のある一族であった毒驢族(ギフトエーゼル)の頭領であり、ベルゼブブの世話係だったアスタロト。そしていつしかその師弟関係であったことと親交のある一族の次期頭領によくしてあげてたってことで、蝿蟲族と毒驢族は魔王軍の傘下にすんなり入った。


そこから更に仲良くなって、いつしかアスタロトが僕の直属の部下になった。その関係でアスタロトの下についていた精霊族(ヒンメルガイスト)とその頭領サルガタナスも傘下に入った。そこから勇者軍に負けて、また負けて、更にまた負けて、それでも悪魔は兵を募って挑む。それはこの世界の平和のため。その理由は"あいつ"から託された僕しか知らない事で、まだ誰にも明かせないこと。


...その暗闇に包まれたままの下界の戦争に異世界の人間が召喚されて、また状況がややこしくなった。正直一旦魔王軍から身を引いてる僕らとしては、この世界をさらに混沌に陥れたこの13代目魔王 緑丘望桜には関わりたくない。異世界の人間が召喚されるっていう噂が流れ始め、その噂に確証があるってわかった時から一旦身を引いて、その世代が終わって忘れ去られた頃にまた戻るつもりだった。


だから心苦しいけど異世界人間魔王時の幹部であるベルゼブブの僕に関する記憶を消して、こっちの世界に引っ越してきた。というのも、ゲートに強く念じると行きたいところに連れていってくれるっていう伝承があるから、それを試して"戦争から一時的に身を引けて、且つ住んでる間は平和に過ごせる場所"って念じたらここが行先になってた。だからアスタロトに餅月或斗(もちづき あると)、サルガタナスに沙流川 太鳳(さるがわ たお)、そして自分に桃塚 瑠凪(ももつか るな)って名前を考えてもらって、住み始めたのが3年前。


この間偶然ベルゼブブに話しかけられたから、とりあえず望桜に確実に会える事を伝えておいて、そこではい終わりー!だったはずなのに...


「なんでぇー、なんでー!!」

「まーいーじゃん!!わるいひとじゃないんでしょ?」

「うう〜...」

「あ...」


どうしようもない感情を表すのにとりあえず呻いていると、或斗が小さいが声を上げた。なにかあったのかな。


「すみません...ちょっと牛乳が足りないですね...ちょっと買ってきます。おいニート!貴様は今のうちに奥の部屋を掃除しておけ!」

「だからニート言うな!」

「では行ってきます」


財布と最低限の荷物を持ってスニーカーの紐を軽く結ぶと、太鳳への指示とこちらに対する言葉を捨て台詞に、或斗は玄関から走って出ていった。


「あ〜...太鳳は...」

「ボクもちょっと片付けてくるね〜」

「えっ...」


太鳳も報告をしてから奥の部屋へと行った。

...え、まって厄介事の種である望桜と2人きり?


「...なあ、2人がいないからちょっと聞きたいんだが」

「な、なに...?」

「瑠凪は俺の事嫌いか?なら話しかけたりするのは辞めるが...」

「えっ...別に嫌いじゃ...ないけど...」


萎れた大型犬のように僕が座っている横に座ってきて、質問してきた。嫌いかと言われれば別に嫌いじゃないんだけど、こちらからすれば関わればめんどくさい事になるのは目に見えるから、関わりたくない。 でも悲しまれるのは...


「そうか?でも常に反応が冷たいから悲しいんだよな...」

「それは...まあ...その...」

「嫌いなら嫌いで結構だが、もしそうじゃないなら...改めてよろしくな!」

「えっ...うん、よろしく」

「...」

「...望桜?」


望桜の表情がちょっと微笑みが混じった顔になったかと思うと、急にうずくまって黙り込んでしまった。ここまできたらもういっその事関わるのも仕方ないかな、と思ってうんって返事したけど...こっちの世界の人間って脆いから、もしかして死んじゃった?でも悪魔とのハーフになったって聞いてるけど...


「...やったー!!俺お前と仕事以外のろくな会話したことなかったから嬉しいなーって」


さっきまでの空気が嘘のように軽くなった。望桜の顔は晴れ渡り、真夏の昼間特有の陽射しと部屋の照明が相まって、余計に嬉しそう見える。え?さっき僕なにをよろしくされたの?ただ今までと同じじゃなくて挨拶を返したり、冷たくするなっていうよろしくだよね?


「...そうだっけ」

「そうだよ!」

「...そっか、ごめんね?」


僕は面倒ごとは嫌いだから避けてたけど、偶然にここまで引っ付かれてちゃ、もう関わるしかないよね...だってバイト先は同じだしベルゼブブには声かけられるし、挙句の果てには或斗といつの間にか知り合いになってるし。


「...うっ」

「え?もしかして今度こそ心臓発作が...救急車...!」

「胸がくる...し...」

「ちょっと大丈夫!?スマホっ、スマホさっきどこ置いたっけ??」

「ちが...」

「何が違うの!?苦しそうじゃん、救急車呼ぶよ!?ちょ、スマホは...ほんとどこ置いたっけ??」

「か...」

「か?」

「可愛い...」

「...は?」

「可愛すぎて胸がっ...胸が...!」

「お前...人の気も知らないで...」

「あははwwごめんてw、え、ちょ、その頭の上に構えてる手は一体...」

「いっぺん死ね!!」

「いだっ」

「可愛いって言うな!俺はどっちかと言われればかっこいいって言われたいの!」

「そっかぁー...でもあれ?さっきのあんまし痛くなかったような...?」

「なっ、悪かったな貧弱で!!もーいい!確か冷蔵庫にチョコあったはずだから食べてくる!」

瑠凪は頭の上に構えた拳を、望桜の脳天めがけて勢いよく振り下ろした。途端にちょっと強い痛みと衝撃が走る。望桜が感想を正直に伝えると、瑠凪はまた怒りだした。そんな少年の怒号と青年の呻き声が聞こえる中、自室の掃除をしていた太鳳は、リビングの様子を見て...

「うるさいなぁ...」

と呟いたのは、誰かに聞こえただろうか?



────────────そして或斗が帰ってきました



「ただいま戻りました」

「おかえりー!!遅かったね!」

「或斗お〜!!」

「ど、どうしたんですか主様...」


帰ってきて早々、瑠凪にくっつかれる或斗、当人にとってしてみれば信頼を寄せる主が半分涙目で抱きついてきたら困惑もするだろうが...そうなる要因である望桜からしてみれば、美青年に美少年が泣きつくというなんとも眼福極まりない眺めである。


「望桜がいじめるぅ〜!!」

「虐めてねえよ!ああ可愛い...」

「可愛いのはわかりますが、主様をあまり虐めないでくださいね?例え望桜さんが客人の立場だとしてもあまりに俺の目に余るような行為をされましては、俺としても手を下さなくてはならなくなりますから」

「あ、ハイ...以後気をつけます」


ちょっとドスの効いた声で注意してくる或斗。或斗にとって主の色んな意味での身の安全の保証は、絶対的保守案件なのかもしれない。


「主様大丈夫ですか?」

「え?うん...だいじょぶだいじょぶぅ...」

「ほんとかなあ...」


ソファで寝転がりスマホをいじっていた太鳳も起き出してきた。ここ数十分の中でも数回、2,3m動くのも面倒くさがる素振りを見せた彼女ですら瑠凪の泣きつく様に焦って起き出す。そういえば、或斗は瑠凪のこと"主様"って呼ぶの、なんでなんだろうな...


ていうかさっきから妙に酒の匂いがするんだが。確か瑠凪がチョコを食べたあたりから...


「るったんるったん」

「なにぃ〜?」

「もしかして〜、ボクのウィスキーポムポム食べた?」

「たべたぁ〜...あったからぁ...だめ?」


やっぱり酒が入ってた。にしてもウィスキーが入ってるとはいえ、あの小さなチョコを1箱食べたくらいで酔うなんて...やっぱり可愛いな、推しだわ。


「や、別にボクはまた買ってくればいいから構わないんだけど...大丈夫?」

「んえ、何がぁ〜?」

「舌足らずなニートの変わりに補足説明させて頂きますと、穀潰し的には問題はありませんが、主様の方は体調や意識等大丈夫ですか?との事です」

「だいじょうぶぅ...なんじゃない?」

「あるきゅんボクの呼び方変わりすぎじゃね?」

「貴様は事実穀潰しなニートだ。つまりどちらとも貴様を連想する言葉であり、呼び名として使っても問題ない」
 
「そっかあ!」

「だから貴様はいい加減働くあてを考えろ!」

「やだー!!」

「貴様!!」

「ボクは一日中家でゴロゴロしてたいのー!!!」

「ねぇ〜、或斗達はさっきからなにを喧嘩してるの?」

「さあな、俺が知った事じゃねえよ」


瑠凪のキャラ崩壊が酷い...可愛いけど。


にしてもこの3人は相当仲がいいな。やっぱり"ルームシェアしてる同居人"以外の繋がりがあるはずだ、でないとここまで仲良くはならない。色々聞くのは失礼だろうけど、いつ聞こうかな。


「ところで沙流川」

「ほんとかわりすぎじゃね?でなに〜?」
     ...
「向こうは大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思うよ〜?」


ん?向こう?太鳳は仕事してないって会話で言ってたし、その言い方はまるで俺らと同じように向こうの世界から?


...どういうことだ?或斗達も向こうの世界から来たとか?まさかとは思うが...そのまさかか?


そういえば対勇者最終戦の5日前くらいに、向こうの人...本気で誰だったかは忘れたが、最近異世界に移住しようとしている悪魔がいるって言ってたような...?俺の代の聖邪戦争の最終戦は約3年と割と短い期間で終わった。或斗達がここに住み始めたって言ってたのは...約3年前、時期ぴったり。と、いうことは...?


「或斗、俺が今から質問することに答えて欲しいんだが、もし違うなら違うってはっきり否定してくれ、いいな?」

「は、はあ...」

「お前らの元住んでたところは..."魔界"、であってるか?」

「...よくわかりましたね。その通り」

「!!...やっぱりな」

「...あるきゅん誘導尋問って知ってる?」

「誘導尋問...はっ、望桜さん、あなたもしかして...」


或斗達は向こうの世界から来たという確証が得られた。そして或斗もまた俺の正体に気づいたようだな...いや、俺は元々日本の男子高校生·緑丘望桜、むしろ向こうで"13代目魔王"と名がついているから、むしろ正体はこっちの人間であったことだよな...


「ボクは会った時からなーんとなく気付いてたんだけどねえ...」

「13代目魔王、緑丘望桜!?」

「そうだ!俺は青森県出身の元男子高校生、そして13代目魔王緑丘望桜だ!」

「どうして俺達も魔界から来たって思ったんですか?」

「まずお前らがこっちに住み始めた"3年前"に、魔界では異世界に移住しようとしてる悪魔がいるって噂になってたんだよ」

「あいつら...」

「心当たりがあるんだな?そして今日、さっきのお前らの会話。あれって一体なんだ?向こうでなにか役割を貰ってると?」

「...では、俺達の本名を教えますね。俺はアスタロト、元智天使で現毒驢族の頭領の悪魔です」

「そしてボクは下界の全精霊をまとめる精霊長であり悪魔のサルガタナスだよー!!一応あるきゅんの配下」

「そして主様...って、寝てますね」

「瑠凪...?」

ソファの方を見てみると、規則正しい寝息をたてながら丸まって寝ている瑠凪の姿があった。バイトの時はいつも纏めてる長髪を今は後ろに流してるから、ちらちらと見え隠れする項が妙に色っぽい、可愛い。いや、人の目があるし嫌われたくないから襲わないけどね?でも2人がいない時にちょっかいぐらいは出すかも...?


...そういえばサルガタナスはともかくアスタロトって、高校生の時fwikipediaで調べたことがあるが、ベルゼブブの配下の悪魔だったはず...だがベルゼブブ...もとい鐘音は今本町の自宅で的李と家にいるはずだ、こっちで初めてあった時は1人だったし、鐘音に俺を連れ戻すよう言って顎で使えるような奴は少なくとも配下ではない。それに魔王の時も配下の悪魔はいたがアスタロトでは無かったし。


...とと、或斗が瑠凪のことについて話すみたいだな。


「主様はルシファー...元熾天使であり暁の天使長...そして7罪の"傲慢"の肩書を持つ大悪魔です」

「ルシファー...って、あの悪魔か!たしか地獄の長...?」

「まあそうですね...地獄というより魔界?でも長ではありますが1代目魔王様ではないですよ」

「1代目魔王の瑠凪には敬称を使うんだな?」

「当たり前ですよ、位がかなり上ですから」

「そゆことね」

「と、ゆーことだから...改めてよろしくね?望桜くん?」

「よろしくお願いします」

「んお?お、おお...よろしくな!」


瑠凪にやったようなことを2人に返されたな...まあいいか


こうして、大悪魔3人が新たに知り合いに加わりました...兵庫って悪魔を引き寄せる街かな?


────────日が陰りはじめた頃の、とある本町の歩道にて...


「魔力...この辺りで魔力の反応があるわ」

「間違いないな」


魔力と相反する力である聖なる力·神気をまとった、ドイツ語を話す2人の人間が街を見回しながらなにかを探していた...




───────────────To Be Continued──────────────







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