少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記
25話
25話
学校から家への帰り道を、道行く人からの視線を感じながら速足で歩く。
羨望の篭った視線。嫉妬の篭った視線。珍しいものを見るかのような視線。ねっとりとした視線。
その全てを無視しながら、前を向いて歩く。
ただただ機械的に歩くこと数分。赤色の歩道者用信号機に差し掛かり、黄色い点字ブロックの前で歩みを止める。
–––ふいに、横断歩道を挟んだ先の歩道に、仲睦まじげに話しながら歩くランドセルを背負った2人の少女が目に入った。
ランドセルの綺麗さと、胸元の名前の書かれたワッペンからして、おそらく今日入学式を迎えたのだろう。
花が咲いたような笑顔。キラキラと輝く純粋無垢な瞳––それがどうしても、あの子と被ってしまう。
『––わたし、えりっていうの!あなたのおなまえは?』
『––だいじょーぶ!あやちゃんはわたしがまもってあげる!』
『––あやちゃん、わらって!あやちゃんきれいだから、あやちゃんがわらったらみんなしあわせなきもちになれるの!』
『––だいじょうぶ。だいじょうぶだから、大人のひとをよんできて?』
どんな時も、笑顔で幼かった私の隣に立っていてくれたあの子。
両親を失った私の唯一の拠り所だった。それこそ、依存してしまうくらいの。
なんであの子は、いなくなっちゃったんだっけ。
……あれ?
足元がはっきりしない。上手く立っていられない。
突然くらりと世界が歪み、私は前方へと倒れこむ––
「––おい、アヤ!しっかりしろ!」
––そんな道路へと倒れこむ寸前だった私の身体へと手を回し、助けてくれた人がいた。
一瞬誰だろうと思ったが、ボンヤリとした視界に入った私の通っている学校の制服と、今朝方聞いたばかりの声から、誰なのかを察する事は出来た。
「意識はあるか?!あるなら返事をしろ!」
耳元から、怒鳴りつけるような声が聞こえる。
そんなに叫ばなくても聞こえてるよ、と思いつつ意識はあるため返事をしようとする。
しかし––うまく声が出ない。というか、口を動かせない。
「……ッ!救急––は呼ん––るな?!––は?こんだ––人数がいる癖––てるだけ––してな––か?!」
おかしい。怒鳴りつけるような声は近くで発声されているはずなのに、うまく聞き取れない。
頭が痛い。吐き気がする。苦しい。何も聞こえない。
最後には目の前が真っ暗に染まり、何も見えなくなり––私は気を失ってしまった。
「––彼女、幼い頃に負った深いトラウマのせいで、あるものを見ると倒れちゃうのよ」
「––つまり、トラウマのフラッシュバックですか」
聞き慣れた女医さんの声と、聞き慣れない中性よりの声––天嗣さんの声が聞こえた。
聞こえてくる内容からして、どうやら私のことについて話しているみたいだ。
私は目をすっと開けて、病院特有の少し鼻にくる匂いに顔を顰めながら、寝台からゆっくりと身体を起こす。
「––目が覚めたようね。アヤちゃん、気分はどう?」
女医さんは身体を起こした私にすぐさま気づき、椅子から立ち上がってこちらへと近づいてくる。
ずきんずきんと痛む頭を片手で押さえて、女医さんの問いに答える。
「……頭痛が少し、するくらい」
「なら大丈夫ね。……はい、水をどうぞ」
差し出された水の入ったコップを受け取り、ゆっくりと飲む。
よっぽど喉が渇いていたのか、気がつけばコップは空になっていて、無意識のうちにお代わりを要求していた。
「……軽めの脱水症状に、頭痛。吐き気や目眩はなし、と。久し振りに搬送されてきたけど、前よりは良くなってるわね」
再び水の入ったコップを私に渡して、紙に何かを書き込んでいく女医さん。
どうやらホッとしているようで、声色は随分と明るい。
––ふと、水面に映る自分の顔が目に入った。
いつも通りの無表情。いつも通りの死んだ魚のような目。
しかし肌はいつもよりも病的なくらいに白くなっている。
汗も酷くかいていて、下着が肌にべったりとくっついて気持ち悪い。
「天野さんには連絡を入れておいたから。そろそろ来るはずよ」
「……!そう、ですか」
私は膝元にかかっていたタオルケットをそっと寝台のはじに寄せて、震える手と足に力を入れながらそこから降りようとする。
しかし当然ながら、その行動は女医さんに止められてしまう。
「……手も足も震えてるじゃない。天野さんに心配かけたくないからって、前みたいに逃げ出そうとしたらだめよ?」
女医さんは困ったように眉をひそめると、「まだ寝てなさい」と言い私の膝元にまたタオルケットをかけた。
流石の私も聞き分けのない子供ではないため、大人しく寝台で横になる。
––とそこで、いままで黙っていた天嗣さんが口を開いた。
「……アヤは脱走したことがあるのか?」
心底驚いたという表情をして問いかけてくる天嗣さん。
それに対し私は寝っ転がりながら、顔を天嗣さんの方へと向けて返答をする。
「……まえに一度、したことがある」
あれはたしか小学六年生の春、新一年生の入学式に出席したときのことだった。
その日は練習通りに歌を歌って、新一年生を歓迎して、長ったらしい主賓と先生の話を聞いて、片付けをして下校をした。
その下校の最中に今日みたいに赤色のランドセルを背負った二人の女の子を見て、パニックになって倒れてしまった。
それよりも前に何回か倒れたことがあったけど、この時が一番症状が酷かったらしい。
で、なんで逃げ出したか。その理由は目が覚めた瞬間に、顔のない人たちに囲まれていたからだ。
顔のない……というより私が他人の顔を認識できなくなったというのが正解か。
どんな人でも、顔がぼやけて見えないのだ。……なんとなくの雰囲気はわかるけど。
それはさておき、誰だって目が覚めた瞬間に顔がぼやけた存在に囲まれていたら恐怖するだろう。
だから私はその時、逃げ出してしまったのだ。
……今はもう慣れたけど。
「……そうか。アヤは昔御転婆だったんだな」
何をどう勘違いしたらそうなるのか。しかしにやにやと笑う天嗣さんを見て、勘違いを正す気も失せた。
そんなこんなで話すうちに時間が経っていたのだろう。
部屋の扉をあけて血相を変えた天野さん––社長さんが入ってきた。
「アヤちゃん大丈夫?!……ってあら。なにやら楽しそうに喋ってるじゃない」
「……楽しそう?」
「……アヤちゃんは楽しくないの?」
楽しいか楽しくないかって訊かれても、ただ天嗣さんの質問に対して機械的に答えているだけだ。
返答に困った私は、無言で首を傾げた。
するとどうだろう。社長さんは目元を押さえて眉間にしわを寄せているのに、天嗣さんは何故か鼻のあたりを押さえていた。
前者は悲しんでいる、呆れていると取れるけど、後者は意味がわからない。
「––こほん。天野さん、念のためアヤちゃんには様子見として今日の夜だけ病院で入院してもらいたいんだけど……大丈夫かしら?」
女医さんの問いに対し、社長さんはコクリと頷いてから、横になっている私の頭を撫でてきた。
……不思議と、「嫌」という気持ちは湧いてこなかった。
なんとも言えない心地よさに、思わず目を細めてしまう。
「お願いするわ。アヤちゃん倒れたの久しぶりだし、心配だから」
「前と同じく個室でいいかしら?」
「ええ」
頭を撫でられているうちに、気がつけば社長さんと女医さんの話は終わっていて––そんなわけで、私は病院に1日だけ入院することになった。
そして突然現れた社長さんにどうしていいかわからず戸惑っていた天嗣さんは、話が終わったタイミングを見計らって再び口を開いた。
「……私は邪魔になりそうだな。名残惜しいが、お暇させてもらおう」
ものすごく不満だとでも言いたげに天嗣さんはそう言うと、悲しげな雰囲気を醸し出しながら荷物置きに置いたあった学校のカバンを手に取った。
天嗣さんがこの場にいたことに気がついていなかったのか、社長さんは「え、誰この子」と小声で呟いた後、慌てて天嗣さんを引き留めた。
「もしかして貴女、アヤちゃんのお友だち?!」
社長さんの鬼気迫る様子に身をたじろがせた天嗣さんだったが、すぐに気を取り直して社長さんに向き直った。
「い、いや。友人では––「ちがう」……」
自分から否定したくせに、私もついでに否定すると天嗣さんは何故か落ち込んだ様子を見せた。意味がわからない。
そんな私たちに対し、社長さんは微笑ましいものを見るかのような視線を向けてきた。
……こっちも意味がわからない。
「……よかったわ。アヤちゃんに新しいお友達が出来そうで」
「……だから、ちがう」
「アヤちゃんね、昔のある出来事のせいで人を遠ざける様になったの。だからお友達が出来て本当に嬉しいわ」
「……」
はぁと溜息を吐き、私は否定するのをやめた。
こうなった社長さんは、どれだけ否定しても無駄なのだ。
ほら、よく居るような……自分の妄想に浸ってしまったら、周りの言うことなんて全く耳に入らない人。いまの社長さんはそんな感じ。
だからか、天嗣さんも戸惑いながら首を縦に振ってしまっている。
心なしか嬉しそうに見えるのはきっと気のせいだろう。
「仲がいいのはいいことね。それじゃ、あやちゃん落ち着いたら言ってね?個室に案内するから」
女医さんの言葉に、今すぐ行きます––とすぐさま返答して、私はいち早くこの場から脱出を図った。
しかし––
「あやちゃん、まだ足が震えてるじゃない。無理はしちゃダメよ?」
寝台から起き上がり、降りようとした私を社長さんは押し留めてきた。
……事実、足は震えていたので反論のしようがない。
私は非常に不本意ながらも、渋々この場にとどまることにした。
学校から家への帰り道を、道行く人からの視線を感じながら速足で歩く。
羨望の篭った視線。嫉妬の篭った視線。珍しいものを見るかのような視線。ねっとりとした視線。
その全てを無視しながら、前を向いて歩く。
ただただ機械的に歩くこと数分。赤色の歩道者用信号機に差し掛かり、黄色い点字ブロックの前で歩みを止める。
–––ふいに、横断歩道を挟んだ先の歩道に、仲睦まじげに話しながら歩くランドセルを背負った2人の少女が目に入った。
ランドセルの綺麗さと、胸元の名前の書かれたワッペンからして、おそらく今日入学式を迎えたのだろう。
花が咲いたような笑顔。キラキラと輝く純粋無垢な瞳––それがどうしても、あの子と被ってしまう。
『––わたし、えりっていうの!あなたのおなまえは?』
『––だいじょーぶ!あやちゃんはわたしがまもってあげる!』
『––あやちゃん、わらって!あやちゃんきれいだから、あやちゃんがわらったらみんなしあわせなきもちになれるの!』
『––だいじょうぶ。だいじょうぶだから、大人のひとをよんできて?』
どんな時も、笑顔で幼かった私の隣に立っていてくれたあの子。
両親を失った私の唯一の拠り所だった。それこそ、依存してしまうくらいの。
なんであの子は、いなくなっちゃったんだっけ。
……あれ?
足元がはっきりしない。上手く立っていられない。
突然くらりと世界が歪み、私は前方へと倒れこむ––
「––おい、アヤ!しっかりしろ!」
––そんな道路へと倒れこむ寸前だった私の身体へと手を回し、助けてくれた人がいた。
一瞬誰だろうと思ったが、ボンヤリとした視界に入った私の通っている学校の制服と、今朝方聞いたばかりの声から、誰なのかを察する事は出来た。
「意識はあるか?!あるなら返事をしろ!」
耳元から、怒鳴りつけるような声が聞こえる。
そんなに叫ばなくても聞こえてるよ、と思いつつ意識はあるため返事をしようとする。
しかし––うまく声が出ない。というか、口を動かせない。
「……ッ!救急––は呼ん––るな?!––は?こんだ––人数がいる癖––てるだけ––してな––か?!」
おかしい。怒鳴りつけるような声は近くで発声されているはずなのに、うまく聞き取れない。
頭が痛い。吐き気がする。苦しい。何も聞こえない。
最後には目の前が真っ暗に染まり、何も見えなくなり––私は気を失ってしまった。
「––彼女、幼い頃に負った深いトラウマのせいで、あるものを見ると倒れちゃうのよ」
「––つまり、トラウマのフラッシュバックですか」
聞き慣れた女医さんの声と、聞き慣れない中性よりの声––天嗣さんの声が聞こえた。
聞こえてくる内容からして、どうやら私のことについて話しているみたいだ。
私は目をすっと開けて、病院特有の少し鼻にくる匂いに顔を顰めながら、寝台からゆっくりと身体を起こす。
「––目が覚めたようね。アヤちゃん、気分はどう?」
女医さんは身体を起こした私にすぐさま気づき、椅子から立ち上がってこちらへと近づいてくる。
ずきんずきんと痛む頭を片手で押さえて、女医さんの問いに答える。
「……頭痛が少し、するくらい」
「なら大丈夫ね。……はい、水をどうぞ」
差し出された水の入ったコップを受け取り、ゆっくりと飲む。
よっぽど喉が渇いていたのか、気がつけばコップは空になっていて、無意識のうちにお代わりを要求していた。
「……軽めの脱水症状に、頭痛。吐き気や目眩はなし、と。久し振りに搬送されてきたけど、前よりは良くなってるわね」
再び水の入ったコップを私に渡して、紙に何かを書き込んでいく女医さん。
どうやらホッとしているようで、声色は随分と明るい。
––ふと、水面に映る自分の顔が目に入った。
いつも通りの無表情。いつも通りの死んだ魚のような目。
しかし肌はいつもよりも病的なくらいに白くなっている。
汗も酷くかいていて、下着が肌にべったりとくっついて気持ち悪い。
「天野さんには連絡を入れておいたから。そろそろ来るはずよ」
「……!そう、ですか」
私は膝元にかかっていたタオルケットをそっと寝台のはじに寄せて、震える手と足に力を入れながらそこから降りようとする。
しかし当然ながら、その行動は女医さんに止められてしまう。
「……手も足も震えてるじゃない。天野さんに心配かけたくないからって、前みたいに逃げ出そうとしたらだめよ?」
女医さんは困ったように眉をひそめると、「まだ寝てなさい」と言い私の膝元にまたタオルケットをかけた。
流石の私も聞き分けのない子供ではないため、大人しく寝台で横になる。
––とそこで、いままで黙っていた天嗣さんが口を開いた。
「……アヤは脱走したことがあるのか?」
心底驚いたという表情をして問いかけてくる天嗣さん。
それに対し私は寝っ転がりながら、顔を天嗣さんの方へと向けて返答をする。
「……まえに一度、したことがある」
あれはたしか小学六年生の春、新一年生の入学式に出席したときのことだった。
その日は練習通りに歌を歌って、新一年生を歓迎して、長ったらしい主賓と先生の話を聞いて、片付けをして下校をした。
その下校の最中に今日みたいに赤色のランドセルを背負った二人の女の子を見て、パニックになって倒れてしまった。
それよりも前に何回か倒れたことがあったけど、この時が一番症状が酷かったらしい。
で、なんで逃げ出したか。その理由は目が覚めた瞬間に、顔のない人たちに囲まれていたからだ。
顔のない……というより私が他人の顔を認識できなくなったというのが正解か。
どんな人でも、顔がぼやけて見えないのだ。……なんとなくの雰囲気はわかるけど。
それはさておき、誰だって目が覚めた瞬間に顔がぼやけた存在に囲まれていたら恐怖するだろう。
だから私はその時、逃げ出してしまったのだ。
……今はもう慣れたけど。
「……そうか。アヤは昔御転婆だったんだな」
何をどう勘違いしたらそうなるのか。しかしにやにやと笑う天嗣さんを見て、勘違いを正す気も失せた。
そんなこんなで話すうちに時間が経っていたのだろう。
部屋の扉をあけて血相を変えた天野さん––社長さんが入ってきた。
「アヤちゃん大丈夫?!……ってあら。なにやら楽しそうに喋ってるじゃない」
「……楽しそう?」
「……アヤちゃんは楽しくないの?」
楽しいか楽しくないかって訊かれても、ただ天嗣さんの質問に対して機械的に答えているだけだ。
返答に困った私は、無言で首を傾げた。
するとどうだろう。社長さんは目元を押さえて眉間にしわを寄せているのに、天嗣さんは何故か鼻のあたりを押さえていた。
前者は悲しんでいる、呆れていると取れるけど、後者は意味がわからない。
「––こほん。天野さん、念のためアヤちゃんには様子見として今日の夜だけ病院で入院してもらいたいんだけど……大丈夫かしら?」
女医さんの問いに対し、社長さんはコクリと頷いてから、横になっている私の頭を撫でてきた。
……不思議と、「嫌」という気持ちは湧いてこなかった。
なんとも言えない心地よさに、思わず目を細めてしまう。
「お願いするわ。アヤちゃん倒れたの久しぶりだし、心配だから」
「前と同じく個室でいいかしら?」
「ええ」
頭を撫でられているうちに、気がつけば社長さんと女医さんの話は終わっていて––そんなわけで、私は病院に1日だけ入院することになった。
そして突然現れた社長さんにどうしていいかわからず戸惑っていた天嗣さんは、話が終わったタイミングを見計らって再び口を開いた。
「……私は邪魔になりそうだな。名残惜しいが、お暇させてもらおう」
ものすごく不満だとでも言いたげに天嗣さんはそう言うと、悲しげな雰囲気を醸し出しながら荷物置きに置いたあった学校のカバンを手に取った。
天嗣さんがこの場にいたことに気がついていなかったのか、社長さんは「え、誰この子」と小声で呟いた後、慌てて天嗣さんを引き留めた。
「もしかして貴女、アヤちゃんのお友だち?!」
社長さんの鬼気迫る様子に身をたじろがせた天嗣さんだったが、すぐに気を取り直して社長さんに向き直った。
「い、いや。友人では––「ちがう」……」
自分から否定したくせに、私もついでに否定すると天嗣さんは何故か落ち込んだ様子を見せた。意味がわからない。
そんな私たちに対し、社長さんは微笑ましいものを見るかのような視線を向けてきた。
……こっちも意味がわからない。
「……よかったわ。アヤちゃんに新しいお友達が出来そうで」
「……だから、ちがう」
「アヤちゃんね、昔のある出来事のせいで人を遠ざける様になったの。だからお友達が出来て本当に嬉しいわ」
「……」
はぁと溜息を吐き、私は否定するのをやめた。
こうなった社長さんは、どれだけ否定しても無駄なのだ。
ほら、よく居るような……自分の妄想に浸ってしまったら、周りの言うことなんて全く耳に入らない人。いまの社長さんはそんな感じ。
だからか、天嗣さんも戸惑いながら首を縦に振ってしまっている。
心なしか嬉しそうに見えるのはきっと気のせいだろう。
「仲がいいのはいいことね。それじゃ、あやちゃん落ち着いたら言ってね?個室に案内するから」
女医さんの言葉に、今すぐ行きます––とすぐさま返答して、私はいち早くこの場から脱出を図った。
しかし––
「あやちゃん、まだ足が震えてるじゃない。無理はしちゃダメよ?」
寝台から起き上がり、降りようとした私を社長さんは押し留めてきた。
……事実、足は震えていたので反論のしようがない。
私は非常に不本意ながらも、渋々この場にとどまることにした。
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