少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記
13話虎熊童子-3.
13話虎熊童子-3
 【魔力感知】で【虎熊童子】がこちらに駆け出して来ているのを確認してから、私たちも走り出しました。
 おそらくヘイトは私の方に集中していると思いますので、きっと【虎熊童子】は私を追ってくるでしょう。
 私とカバンさんは入り組んだ路地を駆け巡りながら、サナさんに指定された地点へと向かいます。
「絶ッッッ対コロスゥゥゥゥゥゥ!!」
 結構な距離が離れているはずなのに、【虎熊童子】の咆哮が聞こえてきました。物騒な鬼ですね。そんなんじゃ嫁の貰い手も見つかりませんよ?
「ッ!カバンさんっ、影空間に!」
「了解っ!」
 カバンさんは私の腕を掴み抱えて私とともに【影空間】に入りました。その直後––––私たちが先ほどまでいたところが、大きなクレーターを残して消滅しました。
「………うわぁ」
「……ちょっと怒らせすぎましたかね」
 般若の顔を浮かべて咆哮を繰り返している【虎熊童子】の様子を私たちは影空間から見つめます。
「誰の嫁の貰い手がいねえだぁぁぁ!!」
 心でも読めるんですかね、この鬼。もしくは被害妄想が激しいかですね。
 さて…、この状況どうしましょうか。指定された地点まではまだ結構な距離がありますし、今影空間から出ればあの馬鹿みたいな力で殺されるのがオチです。
 ……そういえば。
 このゲームでのヘイトは、システム的なものなのでしょうか。それとも…感情的なものなのでしょうか。もしも後者ならば……。
 少し賭けに出ましょうか。
「カバンさん。––––––––––できますか?」
「っ!なるほど…。できます。やってみましょう」
 私とカバンさんはとあるスキルを発動させて、【影空間】の外に出ました。
「ミィツケタァァォァァァァ……ァ?」
 【虎熊童子】は突然現れた私たち…、というより私たちの姿に驚いているようです。
「な、なんで女が四人になっているんだ?!」
 そうです、現在私は四人に増えています。…なんてことはなく、カバンさんの持つスキル【変装】と【分身】を利用したものです。
「……(あっかんべー)」
 カバンさんが私の顔で、あっかんべーをしました。……効果は抜群だったようです。
 私もあっかんべーをします。……効果はあまりないようです。【虎熊童子】視線はカバンさんに釘付けになっています。
 いったいなにが違うのでしょうか。やはり、カバンさんには人を馬鹿にする才能でもあるのでしょう。
 さて……、
「準備はいいですか?」
「大丈夫ですよ」
 私とカバンさんとその分身は、違う方向へと一斉に駆け出しました。……カバンさんとその分身はそう見せかけて、【影空間】に入りました。
「【壁走り】」
 私は【星屑のブーツ】を履き、発動させました。ショートカットしましょう。
 わざわざ入り組んだ路地を走り回るのも疲れましたし。…まあ気分的な問題ですね。
 私は家屋の壁を駆け上がります。屋根の上に登り、そのまま屋根伝いに指定されたポイントに向かいます。
「マァァァァテェェェェェェェ!!」
 【虎熊童子】は姿の見えている私を追いかけてきました。
 …ふむ、ヘイトについては後者のようですね。まあヘイト上昇のスキルを使っていないときの場合のようですが。
 【虎熊童子】は家屋を破壊しながら私の方へと向かってきているようです。ドカンドカンという破砕音が聞こえてきます。
 ……このままでは追いつかれてしまいますね…。どうしましょうか。
「……【反転】は反動が大きいから今使ってしまうのは悪手。魔法もおそらく意味はないでしょう」
 ……あれ、もしかしてこれ詰みじゃないですか?
 【虎熊童子】はもうすぐそこまで迫ってきています。苦い顔を浮かべて立ち止まっている私をみて、【虎熊童子】はニヤリと笑みを浮かべました。
「はははははは!!どうした、諦めたのか?」
 私は少しずつ、背後に下がっていきます。気づかれないように、そぉーっと。
 バゴォーン!という音とともに私の後ろの屋根や家屋が破壊されました。
「…バレバレだぞ?諦めろ、ハハハハハ!!」
「……そうですね」
 私は両腕を広げて膝立ちになりました。
「降参のつもりか?そんなの…、許すはずがないだろう!」
 【虎熊童子】は剣を私はに振り下ろしてきました。
 ……終わりですね。
「【無駄なしの弓】」
 幾十本の矢が私の頭上を通過し、【虎熊童子】に突き刺さりました。
 【虎熊童子:113000/250000】
 倒せてないじゃないですか!……ってあれ、パーティ欄のサナさんに死亡エフェクトが付いているんですが……。
『ごめん死んだ』
『ドンマイです。…なにがありました?』
『分身体が一体ずつしか現れないって言っていましたよね?』
『はい。…ということは』
『ご察しの通り、【虎熊童子】が突然現れてね。殺されたよ』
 ……それは非常にマズイですね。サナさんが居なくなって…、カバンさんと私だけでは正直キツイですよ?三体を相手にするなんて。
「【アサシネイト】」
 【虎熊童子:100000/250000】
 あ、二体に減りましたね。カバンさんがやってくれたようです。
「……サナさんが死んだみたいですが、なにかあったんですか?」
「ええ。実はかくかくしかじかで…」
「…ふむ、なるほど。…サッパリ解りませんね。まあなんとなく察しはつきますが」
 カバンさんは短剣についた血をはらい、腰にある鞘に収めました。そして私の方を向き、人差し指を立ててきました。
「一人一体で」
「わかりました。私は本体を殺りますね」
「俺は分身体を殺りましょう」
 【魔力感知】の反応からして、分身体と本体は別々の場所にいるようです。私はその旨をカバンさんに伝えてから、本体のいる場所へと向かいました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《シズクが参戦しました。参加人数4/20(1名死亡)》
「……あれ、だれもいない」
 …やっほー。わたしの名前はシズク。どんなゲームも無理のない課金で楽しむエンジョイ勢です。…みんなから廃人って言われてるけど別に人生削ってやっているわけじゃないよ?
 …ちゃんと寝てるし、ちゃんとご飯も食べてるし。…バイトに関しては外に出なくてもいい内職みたいなのやってるし。
 睡眠と食事に関しては他人よりもちょっと特殊なだけで。主に生まれつきの病気の影響で。
 閑話休題。
 わたしはあやちゃんに呼ばれてイベントの超級エリアにやってきた。
 しかしながら目の前に広がっているのは無惨にも破壊された家屋やここからじゃちょっと底が見えないクレーター。世紀末ですか?
「ひゃっはー」
 前のゲームの影響もあってテンションがおかしくなりそうなので、早くあやちゃんを見つけましょう。
「【地の精霊】さん、わたしの探し人を見つけて」
『承りました』
 この子はロック。地の精霊さんである。【地魔法】をレベル50にしたら獲得できた【地精霊召喚】で召喚して、契約した。
 この子は少し特殊らしくて、戦闘にはあまり向いていないが、索敵能力が高いみたい。
 なにやら意識を地脈に接続してなんちゃら…。まあ細かいことは気にせずに。
「あぁ…。やっぱり思い出しちゃうなぁ……」
 はぁ…、あやちゃんと殺しあ––––ダメダメ、そもそもゲームが違う。こっちじゃPKになっちゃうし、それはデメリットが多すぎるからねー。
「……うん?」
 ドドドドドド!という破砕音が聞こえた。そしてロックからこちらになにかが近づいてくる反応がある、という報告があった。
「……え––––」
 わたしがふと顔を上げると、そこには気持ち悪い鬼の顔があって––––
「ひいっ?!【火砕流】」
 わたしは反射的に【自然魔法】の【火砕流】を打ってしまった。この魔法は名前の通り、火砕流を発生させる。大きさは小規模なものだが。それでも、効果は絶大である。
 あ、この魔法はわたしが【限定スキル】として獲得したやつです。
 当然のごとく鬼にはそれに対する抵抗はなく、淡い光を発して消滅した。周りの建物も一緒に。
「……なにかに投げ飛ばされた、みたいな感じだったけど…、いったい誰が…」
 あやちゃんはステータス的に無理。いくら柔道をやっていてもこの質量を投げ飛ばすのは無理だからね。
 となると……、
「カバンさんか」
 わたしが名前を呼んだ次の瞬間––––わたしの影からにゅっと、黒い布…?のよなものを纏ったカバンさんが飛び出てきた。
「ご明察です。あ、そこ気をつけてください。飛んできますよ」
「…ほいほい」
 わたしは咄嗟に【突風】を使い、自らの身体を前に飛ばしました。吹き飛ん先には家屋の壁。【壁走り】を使い、そのまま上に駆け上がる。
 ちらりと先程までいた場所に目を向けてみると、すでにカバンさんの姿はなかった。先程の光景から推察するに、【影】にでも潜ったのだろう。
「……なにもおこらないけど」
 建物の屋根に登り終わったわたしは、そこから先程の場所を眺める。
 すると突然わたしの顔に影がかかり、わたしの上に遮蔽物なんてあったっけと思いながら、顔を上げると––––
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
 般若の形相をした鬼が、拳を前に突き出しながらこちらに飛んできている姿が目に入った。
「…明らかにわたしを狙っているのはなぜ…」
 防ぐ?
 →無理。防ぐ手段がない。
 避ける?
 →無理。間に合わない。
 弾く?
 →もっと無理。両手剣があれば弾けるかもだけど、あいにく手持ちにない。
 カバンさんに影に引きずり込んでもらう?
 →無理。もう間に合わない。
 結論。
 →詰み。
 あ、オワタ。眼前に【鬼】の拳が迫り来て––––
「フォッフォッフォッ。お手を失礼しますぞ」
 ––––気がつくとわたしは、見知らぬ建物の中に立っていた。
「……あ、変態執事さんにメリーちゃんやっほー」
「やっほー。しずちゃんおひさ」
「フォフォフォフォ。おひさしぶりですぞ」
《アモーレ・クックラーが参戦しました。メリーが参加しました。参加人数6/20(一名死亡)》
 【魔力感知】で【虎熊童子】がこちらに駆け出して来ているのを確認してから、私たちも走り出しました。
 おそらくヘイトは私の方に集中していると思いますので、きっと【虎熊童子】は私を追ってくるでしょう。
 私とカバンさんは入り組んだ路地を駆け巡りながら、サナさんに指定された地点へと向かいます。
「絶ッッッ対コロスゥゥゥゥゥゥ!!」
 結構な距離が離れているはずなのに、【虎熊童子】の咆哮が聞こえてきました。物騒な鬼ですね。そんなんじゃ嫁の貰い手も見つかりませんよ?
「ッ!カバンさんっ、影空間に!」
「了解っ!」
 カバンさんは私の腕を掴み抱えて私とともに【影空間】に入りました。その直後––––私たちが先ほどまでいたところが、大きなクレーターを残して消滅しました。
「………うわぁ」
「……ちょっと怒らせすぎましたかね」
 般若の顔を浮かべて咆哮を繰り返している【虎熊童子】の様子を私たちは影空間から見つめます。
「誰の嫁の貰い手がいねえだぁぁぁ!!」
 心でも読めるんですかね、この鬼。もしくは被害妄想が激しいかですね。
 さて…、この状況どうしましょうか。指定された地点まではまだ結構な距離がありますし、今影空間から出ればあの馬鹿みたいな力で殺されるのがオチです。
 ……そういえば。
 このゲームでのヘイトは、システム的なものなのでしょうか。それとも…感情的なものなのでしょうか。もしも後者ならば……。
 少し賭けに出ましょうか。
「カバンさん。––––––––––できますか?」
「っ!なるほど…。できます。やってみましょう」
 私とカバンさんはとあるスキルを発動させて、【影空間】の外に出ました。
「ミィツケタァァォァァァァ……ァ?」
 【虎熊童子】は突然現れた私たち…、というより私たちの姿に驚いているようです。
「な、なんで女が四人になっているんだ?!」
 そうです、現在私は四人に増えています。…なんてことはなく、カバンさんの持つスキル【変装】と【分身】を利用したものです。
「……(あっかんべー)」
 カバンさんが私の顔で、あっかんべーをしました。……効果は抜群だったようです。
 私もあっかんべーをします。……効果はあまりないようです。【虎熊童子】視線はカバンさんに釘付けになっています。
 いったいなにが違うのでしょうか。やはり、カバンさんには人を馬鹿にする才能でもあるのでしょう。
 さて……、
「準備はいいですか?」
「大丈夫ですよ」
 私とカバンさんとその分身は、違う方向へと一斉に駆け出しました。……カバンさんとその分身はそう見せかけて、【影空間】に入りました。
「【壁走り】」
 私は【星屑のブーツ】を履き、発動させました。ショートカットしましょう。
 わざわざ入り組んだ路地を走り回るのも疲れましたし。…まあ気分的な問題ですね。
 私は家屋の壁を駆け上がります。屋根の上に登り、そのまま屋根伝いに指定されたポイントに向かいます。
「マァァァァテェェェェェェェ!!」
 【虎熊童子】は姿の見えている私を追いかけてきました。
 …ふむ、ヘイトについては後者のようですね。まあヘイト上昇のスキルを使っていないときの場合のようですが。
 【虎熊童子】は家屋を破壊しながら私の方へと向かってきているようです。ドカンドカンという破砕音が聞こえてきます。
 ……このままでは追いつかれてしまいますね…。どうしましょうか。
「……【反転】は反動が大きいから今使ってしまうのは悪手。魔法もおそらく意味はないでしょう」
 ……あれ、もしかしてこれ詰みじゃないですか?
 【虎熊童子】はもうすぐそこまで迫ってきています。苦い顔を浮かべて立ち止まっている私をみて、【虎熊童子】はニヤリと笑みを浮かべました。
「はははははは!!どうした、諦めたのか?」
 私は少しずつ、背後に下がっていきます。気づかれないように、そぉーっと。
 バゴォーン!という音とともに私の後ろの屋根や家屋が破壊されました。
「…バレバレだぞ?諦めろ、ハハハハハ!!」
「……そうですね」
 私は両腕を広げて膝立ちになりました。
「降参のつもりか?そんなの…、許すはずがないだろう!」
 【虎熊童子】は剣を私はに振り下ろしてきました。
 ……終わりですね。
「【無駄なしの弓】」
 幾十本の矢が私の頭上を通過し、【虎熊童子】に突き刺さりました。
 【虎熊童子:113000/250000】
 倒せてないじゃないですか!……ってあれ、パーティ欄のサナさんに死亡エフェクトが付いているんですが……。
『ごめん死んだ』
『ドンマイです。…なにがありました?』
『分身体が一体ずつしか現れないって言っていましたよね?』
『はい。…ということは』
『ご察しの通り、【虎熊童子】が突然現れてね。殺されたよ』
 ……それは非常にマズイですね。サナさんが居なくなって…、カバンさんと私だけでは正直キツイですよ?三体を相手にするなんて。
「【アサシネイト】」
 【虎熊童子:100000/250000】
 あ、二体に減りましたね。カバンさんがやってくれたようです。
「……サナさんが死んだみたいですが、なにかあったんですか?」
「ええ。実はかくかくしかじかで…」
「…ふむ、なるほど。…サッパリ解りませんね。まあなんとなく察しはつきますが」
 カバンさんは短剣についた血をはらい、腰にある鞘に収めました。そして私の方を向き、人差し指を立ててきました。
「一人一体で」
「わかりました。私は本体を殺りますね」
「俺は分身体を殺りましょう」
 【魔力感知】の反応からして、分身体と本体は別々の場所にいるようです。私はその旨をカバンさんに伝えてから、本体のいる場所へと向かいました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《シズクが参戦しました。参加人数4/20(1名死亡)》
「……あれ、だれもいない」
 …やっほー。わたしの名前はシズク。どんなゲームも無理のない課金で楽しむエンジョイ勢です。…みんなから廃人って言われてるけど別に人生削ってやっているわけじゃないよ?
 …ちゃんと寝てるし、ちゃんとご飯も食べてるし。…バイトに関しては外に出なくてもいい内職みたいなのやってるし。
 睡眠と食事に関しては他人よりもちょっと特殊なだけで。主に生まれつきの病気の影響で。
 閑話休題。
 わたしはあやちゃんに呼ばれてイベントの超級エリアにやってきた。
 しかしながら目の前に広がっているのは無惨にも破壊された家屋やここからじゃちょっと底が見えないクレーター。世紀末ですか?
「ひゃっはー」
 前のゲームの影響もあってテンションがおかしくなりそうなので、早くあやちゃんを見つけましょう。
「【地の精霊】さん、わたしの探し人を見つけて」
『承りました』
 この子はロック。地の精霊さんである。【地魔法】をレベル50にしたら獲得できた【地精霊召喚】で召喚して、契約した。
 この子は少し特殊らしくて、戦闘にはあまり向いていないが、索敵能力が高いみたい。
 なにやら意識を地脈に接続してなんちゃら…。まあ細かいことは気にせずに。
「あぁ…。やっぱり思い出しちゃうなぁ……」
 はぁ…、あやちゃんと殺しあ––––ダメダメ、そもそもゲームが違う。こっちじゃPKになっちゃうし、それはデメリットが多すぎるからねー。
「……うん?」
 ドドドドドド!という破砕音が聞こえた。そしてロックからこちらになにかが近づいてくる反応がある、という報告があった。
「……え––––」
 わたしがふと顔を上げると、そこには気持ち悪い鬼の顔があって––––
「ひいっ?!【火砕流】」
 わたしは反射的に【自然魔法】の【火砕流】を打ってしまった。この魔法は名前の通り、火砕流を発生させる。大きさは小規模なものだが。それでも、効果は絶大である。
 あ、この魔法はわたしが【限定スキル】として獲得したやつです。
 当然のごとく鬼にはそれに対する抵抗はなく、淡い光を発して消滅した。周りの建物も一緒に。
「……なにかに投げ飛ばされた、みたいな感じだったけど…、いったい誰が…」
 あやちゃんはステータス的に無理。いくら柔道をやっていてもこの質量を投げ飛ばすのは無理だからね。
 となると……、
「カバンさんか」
 わたしが名前を呼んだ次の瞬間––––わたしの影からにゅっと、黒い布…?のよなものを纏ったカバンさんが飛び出てきた。
「ご明察です。あ、そこ気をつけてください。飛んできますよ」
「…ほいほい」
 わたしは咄嗟に【突風】を使い、自らの身体を前に飛ばしました。吹き飛ん先には家屋の壁。【壁走り】を使い、そのまま上に駆け上がる。
 ちらりと先程までいた場所に目を向けてみると、すでにカバンさんの姿はなかった。先程の光景から推察するに、【影】にでも潜ったのだろう。
「……なにもおこらないけど」
 建物の屋根に登り終わったわたしは、そこから先程の場所を眺める。
 すると突然わたしの顔に影がかかり、わたしの上に遮蔽物なんてあったっけと思いながら、顔を上げると––––
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
 般若の形相をした鬼が、拳を前に突き出しながらこちらに飛んできている姿が目に入った。
「…明らかにわたしを狙っているのはなぜ…」
 防ぐ?
 →無理。防ぐ手段がない。
 避ける?
 →無理。間に合わない。
 弾く?
 →もっと無理。両手剣があれば弾けるかもだけど、あいにく手持ちにない。
 カバンさんに影に引きずり込んでもらう?
 →無理。もう間に合わない。
 結論。
 →詰み。
 あ、オワタ。眼前に【鬼】の拳が迫り来て––––
「フォッフォッフォッ。お手を失礼しますぞ」
 ––––気がつくとわたしは、見知らぬ建物の中に立っていた。
「……あ、変態執事さんにメリーちゃんやっほー」
「やっほー。しずちゃんおひさ」
「フォフォフォフォ。おひさしぶりですぞ」
《アモーレ・クックラーが参戦しました。メリーが参加しました。参加人数6/20(一名死亡)》
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