少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

ガブガブ

10話

10話






 春休み終了まであと五日になった。
 なのでクリーニングに出していた制服を取りに行って、そのついでに昼食を外で済ませた。化粧は最低限。もちろんマスクは忘れずに。サングラスはつけない。サングラスなんてつけてたら完全にあの人なんかあるなー、って勘付かれるから。
 それらを全部済ませて帰ってくると、すでに時刻は十三時を回っていた。洗濯に掃除を済ませてから《Everlasting・world》にログインした。




 目を開けると、ヒグマくらいの大きさの鬼が忿怒の表情を浮かべてプレイヤーをいたぶっている様子が目に入りました。もちろん、ちゃんと倒せているプレイヤーもいますよ?それに比べていたぶられているプレイヤーが多いってだけで。


 ……上級も人が増えてきましたね…。そろそろ超級にいきましょうか。え?いたぶられているプレイヤーは助けないのかって?当然でしょう。世の中には助けたのに「あと少しで倒せたのに!よくも横取りしやがったな!」とか言って文句をタラタラ言ってくる変な人もいるんですよ。もし私が助けた人がそういう人だったら…、そう考えると面倒くさいので無視です。


 さて、超級にいきましょうか。




 超級には人があんまりいないようです。しかしそのかわりに…、私と同じくらいの身長をして、如何にも強そうな雰囲気をまとった鬼が、色々なところ徘徊して回っています。もちろん【金熊童子】さんよりは弱そうですけどね。
とりあえず奇襲を仕掛けましょうか。


「【氷刃乱舞】」


 【氷刃乱舞】…消費魔力5000(4500)【暴風吹雪】を圧縮して小型化させたもの。しかしその威力は【暴風吹雪】の比ではなく、凶悪なものである。


 昨日上級の難易度で魔法で効率よく(?)鬼を狩っているときに獲得した新しい魔法です。【氷魔法】がレベル45になったら獲得できる魔法のようです。因みにですが私の【氷魔法】は現在46レベルです。
 ―–––突如としてその鬼がいる空間に凍てつく吹雪が起こり、雪のかわりに吹き荒れる氷の刃が、鬼を切り刻みます。
 わずか二秒で、その鬼は死亡時のエフェクトを出して消えていきました。


《イベントポイントを16×1獲得。現在72476ポイント。報酬まで残り2524ポイント》


 ふふふ、驚きました?昨日頑張ってここまで貯めたんですよ。十二時くらいから八時間くらい頑張って。完全に作業ゲーでしたよ。鬼を千切っては投げ千切っては投げの繰り返しでしたからね。
 ………もしかして。
 私はたった今思いついたことを確かめるため、スキル【隠密】を使って鬼の背後に近づきます。あ、【隠密】はスキルポイントを使ってとりました。10ポイントを使いましたが、効果が有能だったのでとりました。【詠唱破棄】と同様バンバンレベルが上がってくれますしね。


「【空間固定】」


 私は鬼を拘束して、身動きを取れないようにします。そして【紅桜】を抜いて、鬼の腕を切り落としました。


「GOAAAAAAAAAAAA?!」


 鬼は死亡時のエフェクトを出して消滅…せずにHPを六割ほど残して生きていました。私が攻撃したことで、私の存在に気づいたのか牙をむき出しにして「GOAA!!」という声を上げてきます。しかし【空間固定】により動くことは出来ていませんが。


「ふふふふ。いけますね。【回復魔法】のレベル上げ装置にさせてもらいましょうか」


 私はニッコリと鬼に笑いかけました。そんな私の笑みを見たからでしょうか。鬼の強面が恐怖に歪みました。失礼な鬼ですね。
 私は【氷刃】を使い、鬼の両手、両脚を切断します。鬼から苦悶の声が上がりますが無視です無視。


「さぁて…、自決はしないでくださいね?」


 相手はシステム上の魔物ですし、手加減しなくていいですよね。欠損部位を修復して––––【氷魔法】のレベルも上げたいので【氷刃】を使いましょうか––––【氷刃】で修復した部位を斬って、を繰り返しましょうか。【部位欠損修復】の消費MPは【回復系統魔法消費MP削減】の効果を合わせると4500MPです。
私の最大MPは6100…。一回しかできませんね。まあ【HP変換】を使えば関係ないんですけどね。


「【部位欠損修復:左腕】【氷の刃】【HP修復】【自己修復】」
「GAOAッ?!」


 左腕を修復させて、また斬り落としました。あ、両脚に右腕を斬り落としたのは逃亡及び自決防止のためのものです。念には念を、ですしね。


「【部位欠損修復:左腕】【氷の刃】【HP修復】【自己修復】」


《【回復魔法】のレベルが40→41に上昇。
【氷魔法】のレベルが46→47に上昇》


 あとはもうこれの繰り返しですね。……うーむ、【回復魔法】のレベル上げの最中に襲いかかってくる鬼たちが邪魔ですね。……あ、【魔法罠】の存在を忘れていましたね。活用しませんと。
 私は鬼の肉達磨を建物と建物の間の隅に寄せます。そして私の後ろに、魔法罠…そうですね、【氷刃乱舞】を四つセットします。


 さて、再開しましょう。






「………あっ」
「GAッッ!!」


 力加減を誤ってしまい、間違えて鬼を殺してしまいました。時間は…開始から二時間ほど経ってますね。


《イベントポイントを16×43+1獲得。現在73180ポイント。報酬まであと1820ポイント》
《【回復魔法】のレベルが41→50に上昇。
 【氷魔法】のレベルが47→50に上昇。
 【隠密】のレベルが14→31に上昇。
 【回復魔法】のレベルが48に上昇したため、職業レベルが13→16に上昇しました。
 【氷魔法】のレベルが50に上昇したため、【氷精霊召喚】を獲得しました。
 【回復魔法】のレベルが45に上昇したため、魔法【中位範囲回復】を獲得しました。
 【回復魔法】のレベルが50に上昇したため、魔法【ハイリジェネ】を獲得しました。
 一定条件を満たしました。称号【血濡れの聖職者】を獲得しました》


 【氷精霊召喚】…消費MP0。下位氷精霊を召喚する。召喚された精霊は生涯あなたの契約精霊となる。経験を積むことで、育っていく。


 【中位範囲回復】…消費魔力:パーティメンバー×400MP消費。パーティメンバーのHPを300回復させる。ただしパーティを組んでいないと使えない。


 【ハイリジェネ】…消費MP1500。三十秒間HPを60回復し続ける。リジェネとの重ね掛けは可能。


 ……お、なにやら面白そうな魔法が手に入りましたね。【氷精霊召喚】ですか…。レベル50で獲得できたということは、ほかの魔法でもレベルを50にすると獲得できるんですかね?まあ掲示板に載っているでしょうし、どうでもいいですね。
 え?称号ですか?ふふっ、そんなもの獲得していませんよ。ええ。


 私は伸びをして––––振り向いて家の陰に鋭い視線を向けます。


「…誰ですか?」


 十中八九プレイヤーでしょうね。鬼には隠れるということを考えつくような頭はありませんし。


「…気付かれましたか。師匠からの試練は失敗ですね」


 物陰から現れたのは––––黒色のネコミミと尻尾を生やしたナ○ック星人。思わず無表情になってしまいましたよ。いやいや、それにネコミミを生やすって…。
 アスさんではないでしょうね。あのナメッ○星人にはネコミミなんて生えていませんでしたし。おそらく…、というより絶対カバンさんでしょうね。


「…師匠がどなたかは存じあげませんが、お久しぶりですね。カバンさん」


 私がそう告げると、カバンさんは驚いたような顔をして、


「ふむ、バレてしまいましたか。お久しぶりですね、あやさん。そんなにわかりやすかったですか?俺」
「いえ、そのようなアバターをつくる知り合いはあなたとあなたのお姉さんくらいしか知りませんので」


 カバンさんは合点がいったというような顔をして、頷きました。


「因みにですが俺の姉も俺も、今回はきちんとしたアバターでやっていますよ?」
「…それがですか?」
「いえいえ、これは僕の種族スキル【変装】によってなったものです。うちの姉も似たようなものですね」
「…なるほど」


 ……あ、鬼が二体ほどこちらに近づいてきてますね。ふむ、どうしましょうか。


「【アサシネイト】」


 すると近づいてきていた二体の鬼の首が、両方とも胴体から斬り離されました。
 カバンさんは……動きから察するに、STR型の暗殺者系のステータスでしょうか。


「では俺はこれで。師匠への任務失敗の報告があるので。では––––」
「またお会いしましょう」


 カバンさんは来た道を戻ろうとして––––
 …………【魔力感知】に反応あり。【金熊童子】と同等、もしくはそれ以上の魔力を持った生命体がこちらに向かって疾走してきています。


「カバンさん、上へ」
「……?了解」


 私は【加速装置グラスホッパー】を発動させて上へ跳び、屋根に着地します。


「【魔法職】は通常では【剣術】を覚えられなかったような…」
「私は【回復術師】ですので」
「………え––––」


 それ以上喋るなと、私は人差し指を口の前で立てます。そして後ろを指さします。
 くるりと背後に振り向いたカバンさんは、やべえという顔をして、すぐさま私を置いて屋根の上を駆け出しました。
 そう、私たちでも視認できる距離に白色の鬼がいたからです。現在こちらに向かって爆走中。
 さて、私も逃げますか。


「【隠密】」


 私は屋根から飛び降りて、入り組んだ路地に入って駆け出しました。ふふふ、カバンさん。囮役よろしくおねがいしますね?









「少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く