少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

ガブガブ

6話 Aya vs 金熊童子-2

6話






「おーおーおー…、生きてんじゃねぇか…。しかも逃げずに奇襲をかけてくるったぁ、随分と度胸があるじゃねえか。気に入ったぜ」
「貴方に気に入られても別に嬉しくないのですが…」


 私は【星剣ミザール】を強引に引き抜いて、【空歩】と【グラスホッパー】を利用してすぐさまその場から離れます。
 さすがはSSRの剣ですね。これだけ酷使しても一切刃こぼれしていません。
 私は剣先を【金熊童子】に向けて、警戒しながら【金熊童子】を睨みつけます。
 私のHPは4割ほど残っています。先ほど【ソードパリィ】に失敗したためダメージを負ってしまいました。…まあ【自己修復】で回復するんですけどね。


「じゃ、第二ラウンドといこうぜ」
「望むところです」


 残り一分しか保ちませんがね。
 先に剣を振りかぶってきたのは【金熊童子】のほうでした。先ほどまでとは違い、粗暴な感じはなく、まるで私たちがスキルを使ってきている時のような、そんな感じでした。
 ……これは、おそらく【ソードパリィ】では弾けませんね。主に技術的な意味で。ダメージは受けないようにできますが、おそらく弾き飛ばされて大きな隙が出来てしまいます。剣が二本あるのなら別なのですが…、あいにくありませんしね。


「ははははは!【竜巻斬り】」
「……!【回転斬り】」


 おそらく…、【回転斬り】の上位互換のスキルですね。【回転斬り】に風属性…のようなものを纏わせているようですね。


 ガガガガガガ!!と剣と剣がぶつかり合う音が、辺りにおおきく響いています。ギリギリ打ち合えていられるのは【星剣ミザール】のお陰でしょうね。もし【金熊童子】の剣が一つでも上のランクの剣だったら…、私はとっくに負けていたでしょうね。


「ははははは!生きてたら今度酒でも飲み交わそうや!」
「残念ですが私は未成年なので…」


 私と【金熊童子】は剣戟を交わしながら、そんな軽口を交わし合う。


「ミセイネン……?なんだそりゃ」
「…一定の年齢以下の人を指す言葉です。それ以下の人はお酒やタバコを吸ってはいけないのですよ。守らない人も居るんですけどね」


 私が【金熊童子】に説明してあげると、【金熊童子】は顔を一瞬だけしかめて、獰猛な笑みを浮かべました。


「うん、俺にはそんな難しいことはわからねえわっ!」
「…たいして難しい話ではないのですが……」
「ははははは!!そんな褒めるなよ!」
「褒めてませんよっ!」


 私は【デュアルスラッシュ】を発動させます。すると【金熊童子】は【トリプルスラッシュ】…だと思われるものを発動させてきます。…埒があかないですね。


「……なぜ貴方は私を一瞬で殺せるはずなのに、こうしてわざわざ私と打ち合ってくれているのです?」
「ははははは!なに馬鹿なこと言ってやがる、楽しいからに決まってるだろうが!たしかに俺はお前を直ぐにでも殺せる。だがなあ、俺とまともに打ち合える奴をすぐに殺しちまうたあ、つまらないだろう、がッ!」


 【金熊童子】は目をギラギラとさせて笑みを浮かべて剣をおおきく振りかぶってきました。
 おそらくこれは誘いでしょう。しかし同時に、漬け込むことのできる隙でもあります。


「お前だってあるだろう?わざと手加減してでも、楽しみたいと思える時が!」
「……ありませんよ、そんなこと」


 両親に、親友を失ってしまってから私の日常は色褪せてしまっています。楽しいと感じたことは、残念ながらなかったと思います。…振り返って見てみればつくづく私って嫌なやつですね。楽しい楽しいと言っておきながら、内心ではこうなのですし。


「可笑しいこと言うじゃねえか!じゃあなんでお前は「笑って」いるんだよ」
「…………は?」


 私は思わず握っていた剣を地面に落として、自らの顔をペタペタと触って確認してしまいます。その間に剣戟が飛んでこないのは、彼なりの優しさなのでしょうか。
 私は、たしかに笑っていました。心の中では別に笑っているわけでもないのに、作り笑いをしているわけでもないのに、顔だけは笑っていました。
 ……一体どうなっているのでしょうか。なんか不気味ですね…。自分のことなんですけれど。


「楽しいんじゃねえのかよ?笑ってるってことは!」
「……わかりません。なぜ、笑っているのか」
「はっはっは…、そうか。なら、そのうちわかるだろうぜ!」


 私は剣を拾い上げ、最後の力を振り絞って彼に振りかぶりました。


「【星の爪】」
「ははははは!!今までで一番いい剣じゃねえか!今度は……ガチで受けてやるぜ!」


 【金熊童子】は赫いオーラを纏い、剣の腹をこちらに向けてきました。


 【星の爪】とは、剣技ではありません。いわゆるバフ…、補助魔法のようなものです。私は、彼に【星の爪】は剣技である、と思い込ませられたでしょうか。


「【流星斬り】」
「【悪鬼羅刹】」


 先ほど【剣術】がレベル25になった際に、獲得したアーツです。
 【金熊童子】の剣と、私の剣がぶつかり合って––––




「ははははは!!!まさか俺のこの剣が折れるとは思っていなかったぞ!」
「…………」


 危なかった。【金熊童子】の剣が折れなければ、私は絶対に負けていました。SSRの剣である【星剣ミザール】にも、僅かながらヒビが入っています。ヒビ入るの早くない?と言う気持ちも有りますが、それだけ彼のアーツ【悪鬼羅刹】がヤバイものだったんでしょう。


「さ、続きをやろうや」


 彼はどこからか、先ほどよりも凄そうな真っ黒い太刀を取り出して、私に笑いかけてきました。


「……残念ですが、時間切れです」


 私は剣をインベントリにしまい、【金熊童子】に告げました。
 私の視界の右上のあたりには、魔法使用不可という文字と、その横に900秒という数の表示が出ていました。


「ははははは!そうか、そういうことか。お前、いやそうだな、アヤと呼ばせてもらうぞ」
「お好きにどうぞ」
「勝負はお前の勝ちだ。だが…死合いは俺の勝ちだな。また殺り合おうぜ、アヤ」


 そして彼は、私に剣を突き刺してきました。ふむ、HPが0になってもすぐには意識は消えないのですね。ならは…。
 私は薄れゆく意識の中、彼に告げます。


「……そうですね。また殺り合いましょうか。ですが【金熊童子】さん、あなたの言葉には一つ間違いがあります」


 私はニヤリと彼に笑いかけます。


「あぁ?」
「死合いは私たちの勝ちですよ。バトンタッチです。アルフレッドさんたち」


 視界の端でこちらに向かって爆走してくるアルフレッドさんを確認してから、私は意識を失いました。




《アルフレッドが参戦しました。
 silviaが参戦しました。
 kufurinnが参戦しました。
 サナ-蛹-が参戦しました。
 ………
 …………
 ……………
 参加人数103/--》


参加人数制限がないんですね。数の暴力わろた。









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