少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記
2話
2話
あと一週間で、春休みが終わってしまう。とても憂鬱である。なんて小学生並みの感想を抱きながら私は昼ごはんを食べていた。
昼ごはんは流石に焼き飯などの簡単につくれるもので済ませている。
「……ご馳走さま」
いつもどうり食器を片付けて、軽く洗って食洗機に放り込む。
そして机の上をウエットシートで拭いてから、洗面所に向かう。
洗面所に着いた私は、口の中を軽くゆすいでから、歯を磨く。
……本当になにしよう。アプデ終了まであと五時間ほど…。
三分ほど経ったので、うがいをします。
歯を磨き終わった私はリビングに向かいます。リビングに着いた私は、リビングのテレビの前に置かれているソファーの上に倒れ込みます。
「【コンシリウム】、なにか暇つぶせるものない?」
【コンシリウム】とは、家庭用のお助けAIと呼ばれるものである。老人の孤独死対策に作られたものだったらしいが、一般家庭にも配備されるようになった。
『先ほど、「社長」さまからお電話がありましたが、連絡しなくてもよろしいのでしょうか?』
「……いつあった?」
『絢香さまが歯を磨いている最中です。マナーモードになっていたのか、音は出ていませんでしたが』
「……わかった」
気が利かない、なんて文句は言えない。人の手によって作られたものなのだから、そういったことができなくても仕方がないのだ。
私は充電器から携帯をひっこぬいて、社長さんに電話を掛ける。
「……こんにちは、絢香です。先ほどはすみません、気づきませんでした」
『だと思った…。まあいいわ。それより今暇ある?』
「…あります。五時間ほど」
『じゅうぶんだわ。支度して家を出てちょうだい。すでに車は手配してあるから』
準備はやっ。
「……わかりました。すぐに向かいます」
『はいはーい。じゃ、切るわね?』
プツッという音とともに、社長さんとの通信が途切れた。私は支度をするために、自分の部屋に向かった。
「あやちゃん、じゃあ行きましょうか」
「…はい」
まさか本人が車に乗っているとは思いませんでした。
しかし社長さん本人がこの車に乗っているということは…。
「……社長さん、今回の仕事先は結構大手企業なんですか?」
「ええ、そうよ。––––あやちゃんって、《Everlasting・world》ってVRゲーム知ってる?」
「…知ってます」
「なら話は早いわ。今向かってるのはそれを開発した会社よ。あやちゃんにとあるキャラのモデルを頼みたいらしくって」
「……なるほど」
私そのゲームやってるんだけど、大丈夫なのかな…?
「…荒田くん、失礼するわね?」
社長さんはドアを三回ノックしてから、扉をあけて部屋に入っていった。私もそれに続いて、部屋に入る。
「…時雨さん、こんにちは。お久しぶりですね」
「久しぶり、荒田くん。まさかあなたがここの会社の社長だとは思ったないなかったわ」
「ふふ、賞賛と受け取っておくよ。––––さて、今回モデルになってもらう絢香さんは…、おお、噂通りの美人だね。あまりの美しさにCGじゃないかという噂もあったが…、それは嘘のようだね」
「…ありたきりなお世辞をどうも」
後ろの秘書っぽい人が青筋立てて荒田さんを睨んでるんだけど、大丈夫なのかな?
「ははは、さて話は聞いていると思うが…、今回君には《Everlasting・world》のとあるキャラのモデルになってもらいたい」
入ってきてくれ。荒田さんがそう言うと、四人の女性、四人の男性がこの部屋に入ってきた。
「彼らが《Everlasting・world》の開発チームだ。とりあえず自己紹介でも」
荒田さんが彼らに視線を送ると、まず男性たちのほうから自己紹介を始めた。
「私は新田というものだ。絢香さん、よろしく」
「僕は羽田です。よろしくね、絢香さん」
「君が絢香ちゃんかー…。僕は森田。よろしくね」
「俺は鹿田。よろしくな、絢香さん」
次に女性陣。
「私は真田。よろしく、絢香さん」
「私は安倍。あーちゃんって呼んでもいいよ?よろしくね、絢香さん」
「私の名前は蓮。ヨロシクね?絢香ちゃん」
「あたしは霜降。よろしくな」
全員の自己紹介が終わると、荒田さんはジッとこちらを見つめてきた。この流れは私にも自己紹介をしてねってことかな。
「…わたしの名前は鈴仙絢香。高校生ですがモデルをやってます。よろしくお願いします」
私が自己紹介を終えると、荒田さんは満足そうにうん、うんと頷いて、
「君には【花の精霊王】のモデルになってもらいたい」
「……は、はあ」
さっそくこれをつけてくれたまえ。荒田さんがそう言ってヘッドギアを私に渡してきました。
私は用意されていた椅子に座り、それを被った。そして視界は暗転した。
いつのまにか私は、前にキャラクターメイキングを行った場所に似た場所にいました。
自分の容姿を確認すると、私は《Aya》になっていることがわかりました。
「わあ、これは想定外。絢香さんって【聖女】さまだったんだ…」
荒田さんに似た人が、驚愕の表情で私を見つめてきます。
「…知っていると思っていたのですが…」
「…うーん、まあいいかな。……ほいっと。君にここだけ専用のアカウントを用意したから、それに切り替えて。やり方は…」
私は言われた通りの方法で、アカウントを変更します。
「おお、いつもの私に戻りましたね」
笑みを浮かべておくのは忘れずに。
「じゃ、あとは開発チームにまかせるから。では」
そう言うと、荒田さんはこの場から去っていきました。
「––––えーっと、あやちゃん、まずキャラメを押して?」
「はい」
私は【キャラクターメイキング】と書かれた項目をタップします。
「……よいしょ。じゃ、あやちゃん。コード入力ってところに、00000って入力して?」
「はい」
00000ですね。私はそれを入力して、決定ボタンを押しました。
すると私の容姿が一瞬にして早変わりして––––
「おおおおおお!!私が命を削って(4徹)して考えた甲斐があったぁぁぁ!!かわゆすー!」
抱きついて来ようとしたので体を後ろに引いて避けます。
「へぶっ」
女性が出してはいけないような声を出していますが…、放っておきましょう。
「真田さん、でしたっけ。すみません、鏡を貰えますか?」
「わかりました。はい、どうぞ」
彼女が指をパチンと鳴らすと、私の目の前に、私以上の大きさの鏡か現れました。そこには、薄桃色の髪を三つ編みにして、目の色を翠にして、そして膝まである緑色のワンピースを着た私が映っていました。
おお……。まあ、うん。少し印象が変わっただけの私ですね。
「うん。やっぱりモノホンは違うね。作られた感がしない」
真田さんは手元のタブレットを操作しながら言ってきました。
「さて、今日はありがとう。お金は振り込んでおいたから。また機会があればよろしく頼むよ?」
「そういうのは社長に言って下さい」
私に言われても対応しかねます。
「…リンクオフ」
そしてまた、私の視界は暗転した。
「………バレてないよね」
真田は絢香が出て行った空間で、そう呟いた。
「いやー、うん。君男性キャラでプレイしてるんだから流石にバレないでしょ」
「それでもあの人のことです。気づいてるかも…」
「【殲滅槍士】は気づいてるっぽいしね」
「………えっ」
「あと【ジャパニーズモンスター】も【殲滅槍士】に聞いてたような…」
「え"……」
あと一週間で、春休みが終わってしまう。とても憂鬱である。なんて小学生並みの感想を抱きながら私は昼ごはんを食べていた。
昼ごはんは流石に焼き飯などの簡単につくれるもので済ませている。
「……ご馳走さま」
いつもどうり食器を片付けて、軽く洗って食洗機に放り込む。
そして机の上をウエットシートで拭いてから、洗面所に向かう。
洗面所に着いた私は、口の中を軽くゆすいでから、歯を磨く。
……本当になにしよう。アプデ終了まであと五時間ほど…。
三分ほど経ったので、うがいをします。
歯を磨き終わった私はリビングに向かいます。リビングに着いた私は、リビングのテレビの前に置かれているソファーの上に倒れ込みます。
「【コンシリウム】、なにか暇つぶせるものない?」
【コンシリウム】とは、家庭用のお助けAIと呼ばれるものである。老人の孤独死対策に作られたものだったらしいが、一般家庭にも配備されるようになった。
『先ほど、「社長」さまからお電話がありましたが、連絡しなくてもよろしいのでしょうか?』
「……いつあった?」
『絢香さまが歯を磨いている最中です。マナーモードになっていたのか、音は出ていませんでしたが』
「……わかった」
気が利かない、なんて文句は言えない。人の手によって作られたものなのだから、そういったことができなくても仕方がないのだ。
私は充電器から携帯をひっこぬいて、社長さんに電話を掛ける。
「……こんにちは、絢香です。先ほどはすみません、気づきませんでした」
『だと思った…。まあいいわ。それより今暇ある?』
「…あります。五時間ほど」
『じゅうぶんだわ。支度して家を出てちょうだい。すでに車は手配してあるから』
準備はやっ。
「……わかりました。すぐに向かいます」
『はいはーい。じゃ、切るわね?』
プツッという音とともに、社長さんとの通信が途切れた。私は支度をするために、自分の部屋に向かった。
「あやちゃん、じゃあ行きましょうか」
「…はい」
まさか本人が車に乗っているとは思いませんでした。
しかし社長さん本人がこの車に乗っているということは…。
「……社長さん、今回の仕事先は結構大手企業なんですか?」
「ええ、そうよ。––––あやちゃんって、《Everlasting・world》ってVRゲーム知ってる?」
「…知ってます」
「なら話は早いわ。今向かってるのはそれを開発した会社よ。あやちゃんにとあるキャラのモデルを頼みたいらしくって」
「……なるほど」
私そのゲームやってるんだけど、大丈夫なのかな…?
「…荒田くん、失礼するわね?」
社長さんはドアを三回ノックしてから、扉をあけて部屋に入っていった。私もそれに続いて、部屋に入る。
「…時雨さん、こんにちは。お久しぶりですね」
「久しぶり、荒田くん。まさかあなたがここの会社の社長だとは思ったないなかったわ」
「ふふ、賞賛と受け取っておくよ。––––さて、今回モデルになってもらう絢香さんは…、おお、噂通りの美人だね。あまりの美しさにCGじゃないかという噂もあったが…、それは嘘のようだね」
「…ありたきりなお世辞をどうも」
後ろの秘書っぽい人が青筋立てて荒田さんを睨んでるんだけど、大丈夫なのかな?
「ははは、さて話は聞いていると思うが…、今回君には《Everlasting・world》のとあるキャラのモデルになってもらいたい」
入ってきてくれ。荒田さんがそう言うと、四人の女性、四人の男性がこの部屋に入ってきた。
「彼らが《Everlasting・world》の開発チームだ。とりあえず自己紹介でも」
荒田さんが彼らに視線を送ると、まず男性たちのほうから自己紹介を始めた。
「私は新田というものだ。絢香さん、よろしく」
「僕は羽田です。よろしくね、絢香さん」
「君が絢香ちゃんかー…。僕は森田。よろしくね」
「俺は鹿田。よろしくな、絢香さん」
次に女性陣。
「私は真田。よろしく、絢香さん」
「私は安倍。あーちゃんって呼んでもいいよ?よろしくね、絢香さん」
「私の名前は蓮。ヨロシクね?絢香ちゃん」
「あたしは霜降。よろしくな」
全員の自己紹介が終わると、荒田さんはジッとこちらを見つめてきた。この流れは私にも自己紹介をしてねってことかな。
「…わたしの名前は鈴仙絢香。高校生ですがモデルをやってます。よろしくお願いします」
私が自己紹介を終えると、荒田さんは満足そうにうん、うんと頷いて、
「君には【花の精霊王】のモデルになってもらいたい」
「……は、はあ」
さっそくこれをつけてくれたまえ。荒田さんがそう言ってヘッドギアを私に渡してきました。
私は用意されていた椅子に座り、それを被った。そして視界は暗転した。
いつのまにか私は、前にキャラクターメイキングを行った場所に似た場所にいました。
自分の容姿を確認すると、私は《Aya》になっていることがわかりました。
「わあ、これは想定外。絢香さんって【聖女】さまだったんだ…」
荒田さんに似た人が、驚愕の表情で私を見つめてきます。
「…知っていると思っていたのですが…」
「…うーん、まあいいかな。……ほいっと。君にここだけ専用のアカウントを用意したから、それに切り替えて。やり方は…」
私は言われた通りの方法で、アカウントを変更します。
「おお、いつもの私に戻りましたね」
笑みを浮かべておくのは忘れずに。
「じゃ、あとは開発チームにまかせるから。では」
そう言うと、荒田さんはこの場から去っていきました。
「––––えーっと、あやちゃん、まずキャラメを押して?」
「はい」
私は【キャラクターメイキング】と書かれた項目をタップします。
「……よいしょ。じゃ、あやちゃん。コード入力ってところに、00000って入力して?」
「はい」
00000ですね。私はそれを入力して、決定ボタンを押しました。
すると私の容姿が一瞬にして早変わりして––––
「おおおおおお!!私が命を削って(4徹)して考えた甲斐があったぁぁぁ!!かわゆすー!」
抱きついて来ようとしたので体を後ろに引いて避けます。
「へぶっ」
女性が出してはいけないような声を出していますが…、放っておきましょう。
「真田さん、でしたっけ。すみません、鏡を貰えますか?」
「わかりました。はい、どうぞ」
彼女が指をパチンと鳴らすと、私の目の前に、私以上の大きさの鏡か現れました。そこには、薄桃色の髪を三つ編みにして、目の色を翠にして、そして膝まである緑色のワンピースを着た私が映っていました。
おお……。まあ、うん。少し印象が変わっただけの私ですね。
「うん。やっぱりモノホンは違うね。作られた感がしない」
真田さんは手元のタブレットを操作しながら言ってきました。
「さて、今日はありがとう。お金は振り込んでおいたから。また機会があればよろしく頼むよ?」
「そういうのは社長に言って下さい」
私に言われても対応しかねます。
「…リンクオフ」
そしてまた、私の視界は暗転した。
「………バレてないよね」
真田は絢香が出て行った空間で、そう呟いた。
「いやー、うん。君男性キャラでプレイしてるんだから流石にバレないでしょ」
「それでもあの人のことです。気づいてるかも…」
「【殲滅槍士】は気づいてるっぽいしね」
「………えっ」
「あと【ジャパニーズモンスター】も【殲滅槍士】に聞いてたような…」
「え"……」
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