少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

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13話フィールドボス-2

13話






 めちゃスラに攻撃を続けるAyaたちだったが、当然そのHPの全てを削り取ることは叶わない。
 そして、悠々とAyaたちに近づいてくる、数千を超える【溶解液の塊】が、その暴威を振るおうとして––––


「【敗北を知らぬ愚者】」


 めちゃスラの攻撃をさばきながら、アルフレッドはそう呟いた。
 するとAyaたちに暴威を振るわんとしていた数千を超える【溶解液の塊】は、一斉に軌道を変えて、その全てがアルフレッドに迫っていった。




 さて、話は変わるがこのゲーム、《Everlasting・world》には当然ながらベータ版が存在した。
 ベータ版のテストプレイヤーは、正式版の配信の際、特典として一つのスキルが与えられることになっている。
 Ayaのもつ【慈悲者ザドキエル】も、その一つだ。初期ステータス設定の際【限定スキル】と表示されていたもの、それがベータ版の特典に当たる。


 【限定スキル】は、ベータ版をプレイしたものの、戦い方などを参考にして、それに見合ったものが配布される。当然ながら選ばなくても大丈夫だ。


 Ayaに《慈悲者》が与えられた理由は、ベータ版の際【回復魔法】の使った回数が、全プレイヤーの中で多かったから。
 そしてアルフレッドが【敗北を知らぬ愚者】を与えられた理由、それはベータ版で彼女が行った数千をゆうに超える戦闘で、一度もダメージを負わなかったからだ。
 そしてその効果は【敵対状態にあるモンスターおよびその他勢力の攻撃を全て自分に引き寄せる。そして十秒の間一切の攻撃を受けつけなくなる(武具、防具の耐久値は減少しない)】である。




「はははははは!!!ヌルイヌルイヌルイ!そんなもので私が倒れるか!」


 アルさんは笑いながら、数千にも及ぶ溶解液の塊をさばき続けています。
 …あの状態から考えて、無敵状態と思われますが…、溶解液の塊をわざわざそらしたり避けたりする必要あるんですかね?


 9秒。


「おおー…。あれがアルちゃんの切り札かー。なら私も、やっちゃおうかな」


 silviaさんは攻撃の手を止めて、槍を地面に突き刺しました。


 8秒。


「なら僕も。やりましょうかねぇ」


 サナさんも同様に、攻撃の手を止めて弓を下ろしました。


 7秒。


「なら私も…、と言いたいところですが私のは攻撃系統のものではないんですよね」


 なら言わなくてよろしいです。
 いや、ノリで言ったのは分かりますが、ついツッコミを入れたくなるんですよ。…なりますよね?
 と言いつつも、私の【慈悲者】も攻撃系統ではないんですよね。


 6秒。


 ならば…、これにしましょうか。


「【耐寒付与:対象:パーティメンバー】【耐冷付与:対象:パーティメンバー】」


 さて、タイミングよく行きましょうか。私の【魔法】の発動を見たくふさんは、あ、それでもいいんですか的な表情を浮かべました。


「…切り札ではないですが…、【発動待機: 黒狐の煉獄】」


 5秒。


「さーて、みんな準備おっけー?」
「いいですよ」
「おけです」
「大丈夫です」


 4秒。
 silviaさんが、地面に突き刺さっていた槍を抜いて投槍の構えを取り、サナさんは目を細めて弓を構えています。
 …隙だらけですが、この空間にあれ以外にモンスターって居ませんよね?


 3秒。2秒。1秒。


 そして––––


「【破壊の槍トリシューラ】」
「【無駄なしの弓フェイルノート】」
「あ、くふさんそれもらいますね––––【魔素化】【魔法合成】【氷結地獄】」
「【発射––––……え?ちょ、えーー?!」


 【魔素化】と【魔法合成】は、たった今試したらできました。いや、なんかできそうだなーと思ったら出来ました。……くふさんには後でお詫びしましょうか。


 ––––【破壊の槍トリシューラ】は、めちゃスラに刺さった瞬間、その刺さったところを起点として、めちゃスラの大半の肉体を消滅させました。
 …うわ、えげつないですね。流石は【殲滅槍士】と呼ばれたsilviaさんの切り札ですね。…まあ、デメリットも相当デカイんでしょうね。


 【?????46543/200000】


 次にめちゃスラに着弾したのは、私とくふさんの【合成魔法(笑)】の【氷結地獄】でした。【氷結地獄】はめちゃスラに着弾した瞬間に、【破壊の槍】による消滅を免れためちゃスラの肉体を全て凍結させました。
 ふむ、気候の変化などはないみたいですね。うーむ…、くふさんがいないと使用できないのが難点ですね。


 【?????40005/200000【状態:凍結】【状態:全スキル使用不可】】


 そういえばアルさん大丈夫ですかね?


 ––––すると突然、凍りついためちゃスラの体がキラリと発光し始めました。
 数秒後、やがて光は収束しました。しかしそこにはすでにめちゃスラの姿はなく、その代わりに赤色の球体のようなものが浮いていました。
 …もしかして、第二形態でもあるんですかね?だとしたら、その変身途中でしょうか?


 ……そういえばサナさんの【無駄なしの弓】から放たれた矢はどこにいったのでしょうか…。


『ふ、ふはははは!!よくぞここまで痛みつけてくれたな蝿共!いまに見せてやる、我の真の姿を!』


 …なんか赤色の球体が急に喋り出しましたね。………あ。


『ふ、ふはは、は、は、は、は?』


 トスッ


 天より降ってきた一本の矢が、赤色の球体を貫きました。
 そしてその矢はとどまるところを知らないのか、地面すらも貫いて、地の底へと沈んでいきました。


『ぐ、ぐおぉおあ。き、貴様ら…!何をした……!』


 【スライム王14350/200000】


 まだいきてるんですか。しぶといですね。


『こ、この…!』


 トスッ、トストストストストストストストスッ。
 幾本もの矢が、さらに天より赤い球体に降り注ぎます。


 【スライム王9554/200000】


『く、この空気読めない奴ら共……!返信くらいさせろ!』
「何故ですか?一番楽な時に倒すのがセオリーでしょう?」


 サナさんが、ニッコリと笑みを浮かべて赤い球体に近づいていきます。


 【スライム王1504/200000】


『こ、この…!覚えておけ!いつか必ず我は返り咲く!』
「はいはい、そうですね。」


 サナさんは赤い球体を適当にあしらい、そこら辺に落ちている石を拾いました。


『な……!貴様、まさか、や、やめろっ!』
「ふふふふふ。スライムの王とはあろうものが、「石ころ」で死ぬなんて、屈辱ですよね?」


 わー……、流石はサナさんです。しようとしていることががえげつないです。
ほらみて下さい。silviaさんとくふさんも頰がひきつってますよ。


「ふふ。ではさようなら」


 赤い球体に、「石ころ」を叩きつけました。


 【スライム王 0/200000】


 終わりましたね。


〈ワールドアナウンスです。ただいま、【初心者の平原】のフィールドボス、〈グラスウルフ〉が《silvia》率いる《聖女さまと愉快な仲間たち》に討伐されました。これにより、【第1都市】の流通が回復しました。これにより、【第二都市】への道が解放されました〉
《【始まりの平原】のフィールドボスを討伐しました。報酬はポストに投函されます〉


 ……………………へ?《グラスウルフ》、ですか?私たちが倒したのって、《スライム王》じゃ……?



















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