少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記
12話フィールドボス-1
12話
「全員集まりましたか?」
「kufurinn集合しました」
「silvia集合しましたー!」
「アルフレッド、集合したぞ」
「Aya集合いたしました」
私たちはいつもどおりの挨拶を皆で交わして、再度装備などに不備がないかの確認を行います。
特に問題はないですね。
「じゃあパーティー申請を送るね」
silviaさんがそう言うと、私の視界の左上あたりに、「!」マークが現れました。私はそれをタップします。
《プレイヤー名:silviaからパーティー招待が来ています。参加しますか?上限3/5 YES/NO》
 私は迷わずYESをタップします。すると視界の左端に、四つのHPバーが表示されました。それぞれに、silvia、サナ-蛹-、アルフレッド、kufurinnと書かれています。
 それぞれが、パーティーメンバーのHPなどを確認できるようになっているみたいです。便利ですね。
「じゃ、早速行こっかー!」
「ああ」
「行きましょう」
「おー」
「おー!」
 そう言って、私たちは北門を抜けて、【始まりの平原】にいるであろうフィールドボスのところへと歩き出しました。…周りの人から奇異の視線を送られていたのはきっと気のせいですよね。
 とりあえず歩きながらボスについて考察でもしておきましょうか。
 ボス…それに限らずに、このゲームのモンスターには「学習AI」というものが搭載されているそうです。つまり、プレイヤーが戦えば戦うほど、負ければ負け続けるほど「モンスター」は強くなるわけですね。あ、因みにですがその「学習AI」は一度デスポるとリセットされるそうです。
 ––––サナさんたちの話では、未だにフィールドボスを倒した者はいないそうです。しかも攻略組とかいうおそらく強い……と思われる人たちも負け続けているそうです。フィールドボスのスライムさん、絶対学習していますよね。
果たしてどれくらい強くなっているかなのですが…。
 見させていただいたキュウさんの持つ魔物図鑑によると、スライムとは基本的には水属性の魔力からなる精霊が、魔物化したもの…なのだそうです。
もちろん「魔力溜まり」とよばれる謂わば運営の設置したリポップ場所からも現れるそうです。
 それはさておき、上記の通りならスライムは水属性を帯びた【魔力】が意思を持った存在となるわけです。ということは、私の持つ【魔力操作】で分解できるかもしれないんですよね。
 あとは…、もし【魔力】が粒子の一種ならば、【冷却】による粒子の運動の停止が通用するかもしれません。
 絶対零度は約−273度…、【冷却】は1度下げるために1000MP必要なので…、273000MPが必要ですね。はい、無理です。そもそもスライムの体温がわからないので無理ですね。それに【魔力】の凝固点も知りませんし…。【冷却】って魔物に対する攻撃には向きませんね。
やはり使うとしたら【切断】や【氷の球】、【氷の針】ですかね。【切断】は図体がデカければきっと当たりますし、そこまで俊敏ではないと聞いていますので、平気でしょう。
【暴風吹雪】は味方の視界に影響しますので、今回は使いません。
まあ、余裕があったらの話なんですがね。
とりあえず【多重並列詠唱】の【耐冷付与】起点を解除して、【氷の球】起点の【氷の球】三連撃にしておきましょうか。
…コンボ設定があれば楽なんですが、ないんですよね…。
「見えて来ましたよ」
サナさんの言葉に、私は顔をあげます。
……うわ。
「わー…、プレイヤーがめっちゃもぐもぐされてるんだけど…」
「…特攻かましてる人たちですね」
サナさんとsilviaさんが苦笑いを浮かべてあの〈滅茶苦茶やばいスライム〉を見つめています。
「––––さて、では《パーティーモード》に切り替えましょう」
「ほいさー」
「了解」
「はーい」
「わかりました」
私は〈設定〉を開き、〈ノーマルモード〉を〈パーティーモード〉に切り替えます。
すると、私たち以外のプレイヤーが、一瞬にして消えてしまいました。
因みにですがこの〈設定〉は〈ノーマルモード〉〈パーティーモード〉の他に、〈ソロモード〉もあります。〈パーティーモード〉だけは、ほかの誰かとパーティーを組んでいないと選ぶことができません。
「では、説明の手筈の通りに」
「ほいさー」
「了解」
「はーい」
「わかりました」
私たちは一定の間隔を空けて、ボスに向かって走り出します。
「さぁて、とりあえず一発喰らえ。【ドラウ・レイジ】【プロボーグ】【火纏:レイジソード】【シールドバッシュ】」
アルフレッドさんは手に持っている盾と剣を前に構えて、目にも止まらぬ速さで〈滅茶苦茶やばいスライム〉…略してめちゃスラに肉薄していました。
…さて、私も。
「【リジェネ:対象:アルフレッド】【リジェネ:対象:silvia】【リジェネ:対象:kufurinn】【リジェネ:対象:サナ-蛹-】【HP変換×3】【自己修復:420MP消費】【詠唱待機:【リジェネ:対象:アルフレッド】【リジェネ:対象:silvia】【リジェネ:対象:kufurinn】【リジェネ:対象:サナ-蛹-】:30秒後】」
とりあえず、これを30秒ごとに繰り返します。
「【火纏:アローレイン】」
攻撃の初手はサナさんの【火纏:アローレイン】。名前からわかると思いますが、【火属性】を帯びた矢、簡単に言えば火矢のようなものです。
それは、アルフレッドさんもろともメチャすらに降りかかります。
しかしPSお化けタンクのアルフレッドさんは、その全てをかわしたり、弾いたりしています。スライムの攻撃をさばきながら。
スライムに着弾した沢山の矢は、めちゃスラに突き刺さり、そのままその内部へと突き進んでいきます。
【?????198565/200000】
そして矢は、めちゃスラの体内を通り抜けて、地面にざくりと刺さりました。
めちゃスラの体内を通り抜けた矢はすでに火を失っていて、その無様な姿を晒すことになりました。
「…ふむ、矢はあまり効果がないみたいですが…、やるしかないですね」
サナさんは後衛職なのにも関わらず、前衛の立ち位置へと躍り出ました。
そう、サナさんは俗にいう【近接弓】さんなのです。前衛もこなせる後衛ですね。
「ふふーん、とりあえず急所なんてないけど【火纏:急所突き】」
アルフレッドさんとは真逆の位置にいるsilviaさんは、めちゃスラに向かって燃え盛る槍を突き出しました。
「テキパキいこうか。【連撃:急所突き】【ステップ】【三連脚】」
【連撃】…私の持つ【詠唱待機】の物理バージョンみたいなものです。
silviaさんは空より降りかかる火矢や、時々飛んでいくめちゃスラの【水弾】や【溶解液】を躱して、槍を打ち込んでいきます。時々突き出した反動を利用してくるりと回転して、火の魔力…【火纏】を纏わせた脚で蹴りを入れたりしています。
「【多重並列詠唱:起点:【氷の球】:変形】」
先端をまるで刃物のように尖らせた拳大の氷の塊が、15個ほど私の周囲に現れます。
「【対象:めちゃスラ】」
それらの氷の塊は、一斉にめちゃスラへと回転しながら結構な速さで飛んでいきます。
速度の上昇や回転をかけるのは、【魔力操作】の応用でいけました。というかこれ【氷の球】じゃなくて【氷弾】ですよね。
氷の塊は、他のものと違い、初めてめちゃスラの体に突き刺さりました。
『PURUUUUUUUU?!』
一度も声を出していなかっためちゃスラが、初めて声をあげました。
『?????175546/200000』
……一気に一万近く削れましたね。…え、このスライム意外と弱い系ですか?
silviaさんによる槍の猛攻、塵も積もれば山となる、そうとしか言いようがないサナさんの矢の雨、ヘイトをしっかりと維持しながら、そしてその相手の攻撃を弾いたり躱したりするやばい人。そして––––
「おまたせしました。【妖術:火炎鬼】」
くふさんがそう呟くと、彼女のすぐ真横に、まるで鬼を模ったような姿をした、燃え盛る炎が現れました。大きさは大体めちゃスラより少し小さいくらいで、それを使うためにSPとMPをたくさん消費したのか、若干くふさんの顔色が悪い。
「Let's go」
何故英語なのかは知りませんが、くふさんがめちゃスラを指差してそう言うと、【火炎鬼】は、めちゃスラに向かって動き出しました。
すると、くふさんは膝をついて地面に倒れてしまいました。HPバーには…【魔力不足】と表示されています。
私は【氷の球】のループを繰り返しながら、くふさんに近づいていきます。ぶっつけ本番ですが…、いけますかね?
私はくふさんに触れます。
「【魔力譲渡】」
魔力を彼女に流しながら、そうつぶやきました。
《マジックアーツ【魔力譲渡】を獲得しました》
いけましたね。魔力が回復したからか、くふさんの顔色は先ほどよりはだいぶましになっていました。
「…魔力を渡しました。立てますか?」
「…ありがとうです」
彼女は私の手を取り、立ち上がりました。
「あんまり無茶はダメですよ?」
「……はーい…」
なんかやっぱりくふさんの様子がおかしいような……。まあ、今は置いておきましょうか。
「【HP変換】【切断:消費MP:3000】【HP変換】【自己修復】」
ザンッという音と同時に、めちゃスラの体が真っ二つに割れてしまいました。
ちなみにめちゃスラの絶叫が聞こえない理由は耳栓をしているからです。あんまりにも煩いので、ね?
突然真っ二つになっためちゃスラに、アルフレッドさんたちは一瞬驚いていましたが、すぐに気を引き締めて、獲物を構えています。
【?????165623/200000】
そしてそこに、【火炎鬼】が身を賭して突っ込んでいきました。
ドオオオオオン!!
視界がホワイトアウトし、まるでなにかが爆発したような音が聞こえました。
そして私はいつのまにか、地に伏していました。
…耳栓つけててもあんまり意味ないですね。私は耳栓を外してインベントリにしまいました。
手をついて立ち上がり、周りの状況を確認しました。
silviaさんは膝をついていて、kufurinnさんはなんの影響も受けていないのか、この状況にアワアワとしていて、アルフレッドさんは盾をめちゃスラに向かって構えていて、サナさんは外套がなくなっていて、両腕を前に出して動きを止めていました。
ていうかくふさん以外HPやばいですね。
とりあえず…
「【範囲回復】【範囲回復】【範囲回復】【HP変換】【範囲回復】【自己修復】【状態異常回復〈並〉】×3【回復:超】×3」
全員のHPを回復させます。幸いだったのはボスがなぜか動いていないことですね。
「…助かった。…リンよ、あいつが水属性というより「水」があの姿を模り、意思を持った存在とは言ったよな?」
「は、はい」
「【火炎鬼】の詳細は?」
「えっと…、MPの9.9割、SPの5割を消費で、対象に触れた際、温度が急激に上昇した後に消滅する。です」
「具体的な温度は載ってないんだな?」
「はい」
「…なるほど。リンよ、流石の私でも【水蒸気爆発】は防げないぞ?パリィもできないし、攻撃して狙いを外させることもできない」
あ、この惨状って【水蒸気爆発】のせいですか。だから火傷を負っていたんですか。
【?????135674/200000】
「………次から気をつけてくれ」
「はい」
【?????135774/200000】
……ん?
【?????135874/200000】
これは……!
「皆さん、このスライムHPが1秒おきに100ほど回復していってます!」
その言葉に、silviaさんたちは休めていた手を再び動かし始めました。
「うわー…、こんな初期ボスがHP回復持ちとか…つらたん」
「動かなかった理由はそれのようですね」
【急所突き】や【矢の雨】を再び浴びせさせていくsilviaさんとサナさん。
「攻撃してこないのか?【プロボーグ】【レイジソード】【ドラウ・レイジ】」
「【狐火】【狐火】【狐火】【黒狐の炎】【妖魔弾】」
「【多重並列詠唱:起点:氷の球】」
そしてヘイトを奪い、攻撃を受け流したり弾いたりするアルさんに、【妖術】や【魔法】を撃つ私とくふさん。
【?????95684/200000】
めちゃスラの僅かな変化に、いち早く気づいたのは、タンク役をしているアルさんだった。
「……!こいつの攻撃速度が落ちた!なにかデカいのがくるかもしれない!気をつけろ!」
そして––––
『PURUOOOOooOOOooo!!!』
数千個以上あるであろう大量の【溶解液の塊】が、一瞬にして現れめちゃスラの周囲に現れ、そのま此方へと飛んできます。
「えぇ……、これはきつくない?避けれないじゃん」
「なにか方法があるんじゃないですか?」
「とくに思いつきませんが…」
「私もです」
あと数十秒で、私たちのいる空間へとたどり着くでしょう。…さて、どうしましょうか。
【空間魔法】の切断で盾を作る…、【魔力】が足りませんね。
【氷の球】で相殺する?おそらく威力が足りず溶かされるのがオチでしょう。
私はチラリとアルフレッドさんを見ます。
アルフレッドさんは【溶解液の塊】なんて気にせず、めちゃスラの攻撃をさばき続けています。
…アルフレッドさんが、一瞬だけこちらに視線を寄越してきました。
「…ふむ、皆さん、アルフレッドさんがどうにかしてくれるみたいです」
「…おっけー。なら平気だね」
「分かりました。攻撃を続けます」
「了解でーす」
さて、私も準備しますか。
「全員集まりましたか?」
「kufurinn集合しました」
「silvia集合しましたー!」
「アルフレッド、集合したぞ」
「Aya集合いたしました」
私たちはいつもどおりの挨拶を皆で交わして、再度装備などに不備がないかの確認を行います。
特に問題はないですね。
「じゃあパーティー申請を送るね」
silviaさんがそう言うと、私の視界の左上あたりに、「!」マークが現れました。私はそれをタップします。
《プレイヤー名:silviaからパーティー招待が来ています。参加しますか?上限3/5 YES/NO》
 私は迷わずYESをタップします。すると視界の左端に、四つのHPバーが表示されました。それぞれに、silvia、サナ-蛹-、アルフレッド、kufurinnと書かれています。
 それぞれが、パーティーメンバーのHPなどを確認できるようになっているみたいです。便利ですね。
「じゃ、早速行こっかー!」
「ああ」
「行きましょう」
「おー」
「おー!」
 そう言って、私たちは北門を抜けて、【始まりの平原】にいるであろうフィールドボスのところへと歩き出しました。…周りの人から奇異の視線を送られていたのはきっと気のせいですよね。
 とりあえず歩きながらボスについて考察でもしておきましょうか。
 ボス…それに限らずに、このゲームのモンスターには「学習AI」というものが搭載されているそうです。つまり、プレイヤーが戦えば戦うほど、負ければ負け続けるほど「モンスター」は強くなるわけですね。あ、因みにですがその「学習AI」は一度デスポるとリセットされるそうです。
 ––––サナさんたちの話では、未だにフィールドボスを倒した者はいないそうです。しかも攻略組とかいうおそらく強い……と思われる人たちも負け続けているそうです。フィールドボスのスライムさん、絶対学習していますよね。
果たしてどれくらい強くなっているかなのですが…。
 見させていただいたキュウさんの持つ魔物図鑑によると、スライムとは基本的には水属性の魔力からなる精霊が、魔物化したもの…なのだそうです。
もちろん「魔力溜まり」とよばれる謂わば運営の設置したリポップ場所からも現れるそうです。
 それはさておき、上記の通りならスライムは水属性を帯びた【魔力】が意思を持った存在となるわけです。ということは、私の持つ【魔力操作】で分解できるかもしれないんですよね。
 あとは…、もし【魔力】が粒子の一種ならば、【冷却】による粒子の運動の停止が通用するかもしれません。
 絶対零度は約−273度…、【冷却】は1度下げるために1000MP必要なので…、273000MPが必要ですね。はい、無理です。そもそもスライムの体温がわからないので無理ですね。それに【魔力】の凝固点も知りませんし…。【冷却】って魔物に対する攻撃には向きませんね。
やはり使うとしたら【切断】や【氷の球】、【氷の針】ですかね。【切断】は図体がデカければきっと当たりますし、そこまで俊敏ではないと聞いていますので、平気でしょう。
【暴風吹雪】は味方の視界に影響しますので、今回は使いません。
まあ、余裕があったらの話なんですがね。
とりあえず【多重並列詠唱】の【耐冷付与】起点を解除して、【氷の球】起点の【氷の球】三連撃にしておきましょうか。
…コンボ設定があれば楽なんですが、ないんですよね…。
「見えて来ましたよ」
サナさんの言葉に、私は顔をあげます。
……うわ。
「わー…、プレイヤーがめっちゃもぐもぐされてるんだけど…」
「…特攻かましてる人たちですね」
サナさんとsilviaさんが苦笑いを浮かべてあの〈滅茶苦茶やばいスライム〉を見つめています。
「––––さて、では《パーティーモード》に切り替えましょう」
「ほいさー」
「了解」
「はーい」
「わかりました」
私は〈設定〉を開き、〈ノーマルモード〉を〈パーティーモード〉に切り替えます。
すると、私たち以外のプレイヤーが、一瞬にして消えてしまいました。
因みにですがこの〈設定〉は〈ノーマルモード〉〈パーティーモード〉の他に、〈ソロモード〉もあります。〈パーティーモード〉だけは、ほかの誰かとパーティーを組んでいないと選ぶことができません。
「では、説明の手筈の通りに」
「ほいさー」
「了解」
「はーい」
「わかりました」
私たちは一定の間隔を空けて、ボスに向かって走り出します。
「さぁて、とりあえず一発喰らえ。【ドラウ・レイジ】【プロボーグ】【火纏:レイジソード】【シールドバッシュ】」
アルフレッドさんは手に持っている盾と剣を前に構えて、目にも止まらぬ速さで〈滅茶苦茶やばいスライム〉…略してめちゃスラに肉薄していました。
…さて、私も。
「【リジェネ:対象:アルフレッド】【リジェネ:対象:silvia】【リジェネ:対象:kufurinn】【リジェネ:対象:サナ-蛹-】【HP変換×3】【自己修復:420MP消費】【詠唱待機:【リジェネ:対象:アルフレッド】【リジェネ:対象:silvia】【リジェネ:対象:kufurinn】【リジェネ:対象:サナ-蛹-】:30秒後】」
とりあえず、これを30秒ごとに繰り返します。
「【火纏:アローレイン】」
攻撃の初手はサナさんの【火纏:アローレイン】。名前からわかると思いますが、【火属性】を帯びた矢、簡単に言えば火矢のようなものです。
それは、アルフレッドさんもろともメチャすらに降りかかります。
しかしPSお化けタンクのアルフレッドさんは、その全てをかわしたり、弾いたりしています。スライムの攻撃をさばきながら。
スライムに着弾した沢山の矢は、めちゃスラに突き刺さり、そのままその内部へと突き進んでいきます。
【?????198565/200000】
そして矢は、めちゃスラの体内を通り抜けて、地面にざくりと刺さりました。
めちゃスラの体内を通り抜けた矢はすでに火を失っていて、その無様な姿を晒すことになりました。
「…ふむ、矢はあまり効果がないみたいですが…、やるしかないですね」
サナさんは後衛職なのにも関わらず、前衛の立ち位置へと躍り出ました。
そう、サナさんは俗にいう【近接弓】さんなのです。前衛もこなせる後衛ですね。
「ふふーん、とりあえず急所なんてないけど【火纏:急所突き】」
アルフレッドさんとは真逆の位置にいるsilviaさんは、めちゃスラに向かって燃え盛る槍を突き出しました。
「テキパキいこうか。【連撃:急所突き】【ステップ】【三連脚】」
【連撃】…私の持つ【詠唱待機】の物理バージョンみたいなものです。
silviaさんは空より降りかかる火矢や、時々飛んでいくめちゃスラの【水弾】や【溶解液】を躱して、槍を打ち込んでいきます。時々突き出した反動を利用してくるりと回転して、火の魔力…【火纏】を纏わせた脚で蹴りを入れたりしています。
「【多重並列詠唱:起点:【氷の球】:変形】」
先端をまるで刃物のように尖らせた拳大の氷の塊が、15個ほど私の周囲に現れます。
「【対象:めちゃスラ】」
それらの氷の塊は、一斉にめちゃスラへと回転しながら結構な速さで飛んでいきます。
速度の上昇や回転をかけるのは、【魔力操作】の応用でいけました。というかこれ【氷の球】じゃなくて【氷弾】ですよね。
氷の塊は、他のものと違い、初めてめちゃスラの体に突き刺さりました。
『PURUUUUUUUU?!』
一度も声を出していなかっためちゃスラが、初めて声をあげました。
『?????175546/200000』
……一気に一万近く削れましたね。…え、このスライム意外と弱い系ですか?
silviaさんによる槍の猛攻、塵も積もれば山となる、そうとしか言いようがないサナさんの矢の雨、ヘイトをしっかりと維持しながら、そしてその相手の攻撃を弾いたり躱したりするやばい人。そして––––
「おまたせしました。【妖術:火炎鬼】」
くふさんがそう呟くと、彼女のすぐ真横に、まるで鬼を模ったような姿をした、燃え盛る炎が現れました。大きさは大体めちゃスラより少し小さいくらいで、それを使うためにSPとMPをたくさん消費したのか、若干くふさんの顔色が悪い。
「Let's go」
何故英語なのかは知りませんが、くふさんがめちゃスラを指差してそう言うと、【火炎鬼】は、めちゃスラに向かって動き出しました。
すると、くふさんは膝をついて地面に倒れてしまいました。HPバーには…【魔力不足】と表示されています。
私は【氷の球】のループを繰り返しながら、くふさんに近づいていきます。ぶっつけ本番ですが…、いけますかね?
私はくふさんに触れます。
「【魔力譲渡】」
魔力を彼女に流しながら、そうつぶやきました。
《マジックアーツ【魔力譲渡】を獲得しました》
いけましたね。魔力が回復したからか、くふさんの顔色は先ほどよりはだいぶましになっていました。
「…魔力を渡しました。立てますか?」
「…ありがとうです」
彼女は私の手を取り、立ち上がりました。
「あんまり無茶はダメですよ?」
「……はーい…」
なんかやっぱりくふさんの様子がおかしいような……。まあ、今は置いておきましょうか。
「【HP変換】【切断:消費MP:3000】【HP変換】【自己修復】」
ザンッという音と同時に、めちゃスラの体が真っ二つに割れてしまいました。
ちなみにめちゃスラの絶叫が聞こえない理由は耳栓をしているからです。あんまりにも煩いので、ね?
突然真っ二つになっためちゃスラに、アルフレッドさんたちは一瞬驚いていましたが、すぐに気を引き締めて、獲物を構えています。
【?????165623/200000】
そしてそこに、【火炎鬼】が身を賭して突っ込んでいきました。
ドオオオオオン!!
視界がホワイトアウトし、まるでなにかが爆発したような音が聞こえました。
そして私はいつのまにか、地に伏していました。
…耳栓つけててもあんまり意味ないですね。私は耳栓を外してインベントリにしまいました。
手をついて立ち上がり、周りの状況を確認しました。
silviaさんは膝をついていて、kufurinnさんはなんの影響も受けていないのか、この状況にアワアワとしていて、アルフレッドさんは盾をめちゃスラに向かって構えていて、サナさんは外套がなくなっていて、両腕を前に出して動きを止めていました。
ていうかくふさん以外HPやばいですね。
とりあえず…
「【範囲回復】【範囲回復】【範囲回復】【HP変換】【範囲回復】【自己修復】【状態異常回復〈並〉】×3【回復:超】×3」
全員のHPを回復させます。幸いだったのはボスがなぜか動いていないことですね。
「…助かった。…リンよ、あいつが水属性というより「水」があの姿を模り、意思を持った存在とは言ったよな?」
「は、はい」
「【火炎鬼】の詳細は?」
「えっと…、MPの9.9割、SPの5割を消費で、対象に触れた際、温度が急激に上昇した後に消滅する。です」
「具体的な温度は載ってないんだな?」
「はい」
「…なるほど。リンよ、流石の私でも【水蒸気爆発】は防げないぞ?パリィもできないし、攻撃して狙いを外させることもできない」
あ、この惨状って【水蒸気爆発】のせいですか。だから火傷を負っていたんですか。
【?????135674/200000】
「………次から気をつけてくれ」
「はい」
【?????135774/200000】
……ん?
【?????135874/200000】
これは……!
「皆さん、このスライムHPが1秒おきに100ほど回復していってます!」
その言葉に、silviaさんたちは休めていた手を再び動かし始めました。
「うわー…、こんな初期ボスがHP回復持ちとか…つらたん」
「動かなかった理由はそれのようですね」
【急所突き】や【矢の雨】を再び浴びせさせていくsilviaさんとサナさん。
「攻撃してこないのか?【プロボーグ】【レイジソード】【ドラウ・レイジ】」
「【狐火】【狐火】【狐火】【黒狐の炎】【妖魔弾】」
「【多重並列詠唱:起点:氷の球】」
そしてヘイトを奪い、攻撃を受け流したり弾いたりするアルさんに、【妖術】や【魔法】を撃つ私とくふさん。
【?????95684/200000】
めちゃスラの僅かな変化に、いち早く気づいたのは、タンク役をしているアルさんだった。
「……!こいつの攻撃速度が落ちた!なにかデカいのがくるかもしれない!気をつけろ!」
そして––––
『PURUOOOOooOOOooo!!!』
数千個以上あるであろう大量の【溶解液の塊】が、一瞬にして現れめちゃスラの周囲に現れ、そのま此方へと飛んできます。
「えぇ……、これはきつくない?避けれないじゃん」
「なにか方法があるんじゃないですか?」
「とくに思いつきませんが…」
「私もです」
あと数十秒で、私たちのいる空間へとたどり着くでしょう。…さて、どうしましょうか。
【空間魔法】の切断で盾を作る…、【魔力】が足りませんね。
【氷の球】で相殺する?おそらく威力が足りず溶かされるのがオチでしょう。
私はチラリとアルフレッドさんを見ます。
アルフレッドさんは【溶解液の塊】なんて気にせず、めちゃスラの攻撃をさばき続けています。
…アルフレッドさんが、一瞬だけこちらに視線を寄越してきました。
「…ふむ、皆さん、アルフレッドさんがどうにかしてくれるみたいです」
「…おっけー。なら平気だね」
「分かりました。攻撃を続けます」
「了解でーす」
さて、私も準備しますか。
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