少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

ガブガブ

11話

11話






 どんちゃん騒ぎがあったその翌日。
 私は現在、【始まりの平原】の奥地で散歩をしています。
 その理由はまあ、ついこの前獲得した新しい魔法の試し撃ちですね。流石にぶっつけ本番で撃つほどの度胸は私にはありませんからね。
 【回復魔法】はすでにくふさんで試してきました。ニッコリとした笑顔でとても喜んでいましたよ。ですのであとは【空間魔法】と【氷魔法】だけです。


 まずは【氷魔法】の新しい魔法から試していきたいと思います。私が新しく獲得した【氷魔法】は、【耐寒付与】【耐冷付与】【暴風吹雪】【冷却】で、おそらく【冷却】を除いた三つの魔法は【多重並列詠唱】を使ってセットで使うものだと思われます。
 先程から、茂みをげしげしと蹴ったり、【探知】でウサギがいないか探しているのですが、なかなか見つからないのです。
 前に来た時はたくさん居たのですが…、何故ですかね?


「……仕方ありません。先に【空間魔法】を試しましょうか」


 【空間魔法】で新しく覚えた魔法は全部で二つ、【切断】と【空歩】です。
 【切断】は、【攻撃系統魔法】にも分類されますが、両方とも【補助系統魔法】に分類されていますので、敵対モンスターなどがいなくても使用可能です。
…はじめは【氷魔法】をくふさんに使ってみるのもありかなと思ったのですが、流石に可哀想かなと思ったのでやめました。


「さて、まずは【空歩】」


 私は【空歩】を発動させます。因みに私の魔法に詠唱が無いのは、【詠唱破棄】が作用しているからです。




 【詠唱破棄】…このスキルのレベル以下の魔法の詠唱を破棄することができる。威力は変わらない。




 今の私の【詠唱破棄】の35レベルなので、【空間魔法】レベル30の【空歩】は破棄できます。
 しかもやばいんですよ、これ。【魔力操作】を使って、魔法を撃つだけでバンバンレベルが上がっていたのですよ。しかも効果も有能ですし。


 私はふわりと一歩踏み出します。すると、まるで空中に足場があるかのように、宙を歩くことができました。


「お、おおお……。す、凄いです…!」


 これがあれば戦略の幅がだいぶ広がりますよ…!というか【空歩】って【天狐】の初期スキルではなかったでしょうか?こんな簡単に手に入っていいんですかね…?


 私は階段を登るかのように、上へ上へと登っていきます。


「……ふむ、上へ登ろうとすると消費魔力が少し上がるみたいですね」


 今度は逆に階段を下るかのように、下へと降りていきます。


「…逆に下に降りると消費魔力が減るみたいですね」


 詳しくいうと、上へ一歩登ると、登った時のみ、消費魔力が100+50になり、降った時のみ、消費魔力が100−50となることがわかりました。


「しかし、私の魔力の総量はおおよそ4600…。たった45秒…、あれを考慮すると44秒ですか…」


 もちろん、上り下りを考慮しない場合です。もし上り下りを考慮するならば、30秒も保たないと思われます。まあ【HP変換】と【自己修復】でループさせれば問題ないんですがね。…〈属性系統魔法消費魔力削減〉が働いていませんね。もしかして手動でアクティブ化しないといけないんですかね?…しておきましょうか。
 私はぽちぽちとメニューを操作して〈属性系統魔法消費魔力削減〉と〈回復系統魔法消費魔力削減〉をアクティブ化させました。


「とりあえず降りますか」


 そこまでの高さではないので、私は直接【空歩】を解除して、地面に降ります。さて、次は【切断】ですね。


 【切断】は、指定した空間を切断する魔法。たしか1mの直線につき、300MP消費だったはずです。…〈属性系統魔法消費魔力削減〉があるので、270ですね。


 つまり、魔法や矢などの遠距離攻撃を受けた時は、自分の周囲の空間を切断して、防御することも出来ますし、相手の居る空間を切断して、胴体を跳ね飛ばすことも可能です。
 …まあ、当然ながら動き回る敵を切断するのは難しいと思われるのですがね。


 とりあえず、【切断】で、私のすぐ目の前の空間を、袈裟斬りに切断します。


 【切断】したところは、まるで地割れのような感じで傷が入っています。
とりあえずそれに触れてみます。
 …傷の入っている部分はまるで壁のように硬くて、耐久性は問題なさそうです。
攻撃性は…、やっぱりうさぎで試しましょう。ウサギさーん、居ませんかー?


 ………
 …………
 ……………


 十分が経過しました。やはりウサギさんは何処にもリポップしていません。流石におかしいですよね、これ。
 プレイヤーが狩り尽くしているという推測も出来ますが、【探知】にプレイヤーの反応はありません。
 バグか、私自身になにか問題があるかなんですが…。
 とりあえずそれっぽい【称号】や【スキル】がないか確かめてみましょうか。


 前々から持っている【称号】や【スキル】は違うでしょうし…。
 ならこれですかね?


 【龍の祝福】…【種族レベル経験値量減少】と【種族レベルアップ時獲得ステータスポイント二倍】を付与。
パッシブ効果:【龍の威圧】


 【龍の威圧】…自分のレベル以下のモンスターを寄せ付けなくなる。〈ON〉




 一発でビンゴですね。これを〈OFF〉に変えまして、と。
 原因がこれだけならウサギさんたちが沸くはずなのですが…。


「キュー…」


 ウサギの鳴き声が聞こえました!どうやら沸いてくれたようです。私は声のする方へ顔を向けます。
 さーて、狩りましょ………………え?


「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」
「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」「キュー」


 私の目に入ったのは、まるで蟻のように群れているウサギ。
 目算で……、下手したら1000匹以上いますよ……。沸きすぎです。


 なんですか?【龍の威圧】でリポップしなかった分が、一斉に放出された系ですか?
 塵も積もれば山となるとはよく言いますね。うるさ過ぎて耳が死にそうです。
 よし、殲滅しましょう。よかったです。これで【氷魔法】が試せますね!


「【多重並列詠唱:起点:耐寒付与:対象:ウサギさん】発動」


 私の視界の右上に、【耐性:寒冷】と【耐性:凍結】が表示されたと同時に、このあたり一面が薄暗くなってきました。
 そして––––視界が一斉に真っ白に染まりました。


《【氷魔法】のレベルが上昇しました》


 あんなにも煩かったウサギの声が途絶え、ゴオオオオオオオ!!という音しか、耳に入らなくなりました。
 こんな音が聞こえるということは、とてつもなく強い風が吹いているということ。なのに私の体は吹き飛びません。
 あれですか、魔法使用者はその魔法の影響を受けないという謎法則ですか。


《【氷魔法】のレベルが上昇しました》


「…【探知】【魔力視】発動」


 私はこれらを使って、視界を確保します。


《一定の条件を満たしました。スキル【魔力感知】を獲得しました》


 …なにかスキルが生えましたね。【探知】と【魔力視】の上位版ぽいですし、使ってみますか。
 私は【魔力感知】を発動させます。
 すると、白、というより吹雪いてくる雪以外見えなかった視界が、一瞬にして正常なものに戻りました。


「…ふむ、この雪は【魔力】で作られているんですね」


 吹雪いてくる雪は、半透明になって私の視界を埋め尽くしてきます。…半透明なので意味はありませんが。
 私は【暴風吹雪】の対象にしたウサギさんたちを確認します。
 ……あれ、なんか100匹ほどに減っていますね。もしかして、吹き飛んでいっちゃいましたか?
 私は力なく地面に横たわっているウサギに触れます。


「冷たっ」


 あれですね、これ全部凍死してます。


《【氷魔法】のレベルが上昇しました》


 全部素材にして回収していきましょうかー。




ようやくすべて回収し終わりました。私が素材を全て回収し終えた頃、すでに【暴風吹雪】の効果時間がおわったのか、空にはすでにお天道様が顔を出していました。
 効果時間は5分ですが、効果は絶大ですね、これ。


 プレイヤーさんたちが沢山いるところで使ったら誤ってPKしてしまいそうですね。
 …運営さんに要望を出しておきましょうか。


 あとは【冷却】ですか。これはどうせ名前通りでしょうし、やらなくてもいいですね。


 ––––さて、用事も全てすみましたし、集合場所である北門に戻りましょうか。





















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