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少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

ガブガブ

2話

2話






《種族レベルが10→11に上昇しました。HPが20上昇しました。MPが20上昇しました。ステータスポイント2を獲得しました》


 あれから、どんどん平原の奥に進んで、限界まで痛めつけて回復させるを繰り返すことのできるモンスターを探しましたが、全く見つかりませんでした。


 兎も何種類か見つけましたが、短剣をそっと突き刺すだけで、どの兎もHPバーが消滅してしまいました。
 まあ、所詮は兎ですね。


「……どうしましょう…。【回復魔法】は自分には使えませんし…」


 先ほど自分に【回復魔法】を使えないかと試してみたのですが、やってみると 【回復魔法】は発動せず、【自己修復】が発動したのです。


 つまり【自己修復】を覚えているものは、自分自身には【回復魔法】を使えない、ということになります。とても残念です。


 ということで私は、南東、南西に進んでいくとあるという、【初心者狩りの森】に向かっています。


 名称からして怖そうな場所そうですし、もしかしたら一撃で死なないモンスターがいるかもしれません。




 私が【初心者狩りの森】に向かって歩いていると、水色っぽい色をした、スライムのようなものが、赤色っぽい色をしたスライムと、戦闘を行っていました。


 …なるほど。ここら辺からは兎だけじゃなく、スライムも出現するんですね。


 私は2匹のスライムに近づいていきます。すると赤色のスライムが突然こちらを向い…、向いて?こちらに突っ込んできました。


 あれ、この赤色のスライム、ネームタグがありますね…。もしかして、プレイヤーさんですか?


『ひ、羊人さんんんん!ど、どなたかわかりませんが、ちょっと助太刀をお願いします…!』


 ネームタグには《エレナ》と表示されていました。
 ……なんで頭の上に登るんですかね。まあ、いいんですが。


「…わかりました。ちなみにですがスライムに通用しないものってあります?」


  そう話しているうちにも、スライムはぺったん、ぺったんと、草を溶かしながらこちらに近づいてきます。


『えっと…、物理攻撃は通じません!』


「わかりました」


 私は【世界樹の杖:白桜】を構える。


 …そういえば杖ってなんのためにあるんでしょう。私って杖なくても魔法使えましたよね…?
 あとで杖の有無の違いを確認しましょうか。


「【氷の球アイスボール】:対象:スライム:【追尾ホーミング】」


 杖の先端から拳大の氷の塊が現れ、スライムに向かって飛んでいきます。


 避けようとしたスライムですが、【追尾】によりそれは意味を為さず、ゼリーのようなものを残して、ポリゴン化して消滅しました。


《【氷魔法】のレベル1→2に上昇しました。【魔力操作】のレベルが6→7に上昇しました》


「…マジですか。スライムも、一撃で死ぬんですか……?」


『……え、一撃?しかも今のって氷……?』


 私はスライムの残したゼリーを拾い上げます。




 【スライムゼリー】…食べるとMPを10回復させる。MPポーションの欠かせない材料にもなる。




 おお…。これは、需要がありそうなアイテムですね。
 ふむ、ここらのモンスターは物理でも一撃、魔法でも一撃、どうしましょう?
 もしかしたら、森の魔物も弱いかもしれませんね…。


『ちょ、ちょちょちょ。羊人さん、その魔法、どうやって獲得したの?!』


「…私の名前は《Aya》です。ネームタグが付いているでしょう?」


『…あ、ほんとだ。ごめんなさい。––––で、Ayaさん!その魔法––––』


 私は頭に手を伸ばして、エレナさんを鷲掴みにします。


「……秘密です。––––それとエレナさん、そうやって相手の手札について聞くのはマナー違反ですよ」


『……ご、ごめんなさい…。し、知りませんでした…』


 エレナさんはしょんぼりとした声色で、そう謝ってきました。


「…なるほど。それなら仕方ないかもしれませんね。次からは気をつけてくださいよ?」


 私はしゃがみ込んでエレナさんをそっと地面に置いてあげます。


「一応、【氷魔法】についてですが、【熱魔法】と【水魔法】を複合させれば手に入ると思いますよ。…【熱魔法】が存在するかはわかりませんが」


 【魔力操作】について言及するのはソニアさんが広めていない時点でダメだと思いますし、とりあえずそれらしいことを言っておきましょう。


『なるほど…!ありがとうございます!』


 エレナさんはポンッポンッと飛び跳ねました。
 ……意外とスライムって可愛いんですね。


「では私は【初心者狩りの森】とやらに向かいますので、ここでお別れです。ここら辺のモンスターは不用意に攻撃しなければ大丈夫だと思いますので」


『……そのことなんだけど…。えっとAyaさん、私のこと殺してくれません?』


 ……とんでもない提案してきましたね、このスライム…いえ、エレナさん。


「いえ、私はPKをするつもりは今のところはないので……」


『大丈夫!私の【種族】は見てわかると思うけどスライムなの。【魔物種】は死んでもデスペナやその…PKのカルマ判定がないらしいの』


 ……うーん……。まあ、そういうことならいいんでしょうかね?


「…わかりました。エレナさんはスライム、ですので物理攻撃は効かないんですよね?」


『ええ』


 ならばやはり【氷魔法】しかないですね。
 私は杖をエレナさんに向けます。


「では、【氷の球アイスボール】:対象:エレナさん」


 杖の先端から氷の塊が現れ、エレナさんに向かって飛んでいきます。
 ブニュッという音を立てて、ポーンとエレナさんが宙に向かって吹き飛びました。


『ふへっ!』


 ……もしかしてこの人。
 私はエレナさんが吹き飛んで落ちたところに行きます。


「……死んで、ないみたいですね」


 私はつんつんとエレナさんを突きます。


『ふ、ふひへっ』


 この人絶対ドMですよね。


 …死んでない、ですか?


「もう一度撃ちますよ?」


 私はエレナさんにそう告げて、もう一発【氷の球アイスボール】をぶっ放しました。


 すると今度こそ、エレナさんはポリゴン化して、消滅しました。


《【氷魔法】のレベルが2→3に上昇しました。【氷魔法】【氷の針アイスニードル】を獲得しました》


《種族レベルが11→12に上昇しました。HPが20上昇しました。MPが20上昇しました。ステータスポイントを2獲得しました》


《システム判断……、完了。脅迫などは確認されませんでした。本人の意思によりPKが許可されたため、これはPKにカウントされません》


 ……PK判定あるじゃないですか。エレナさん、嘘ついたんですか…。まあ、カウントされませんでしたし、良いんですが。


 それは置いておいて…、プレイヤーさんってもしかして、モンスターみたく一撃で死なない系ですかね?
 それなら…!


「種族レベルはともかくとして、【回復魔法】や【職業レベル】をあげられるかもしれません!」


 よし、それなら早速都市に戻りましょう!


 私が都市に行こうと一歩踏み込んだ矢先に、どこからかピピピピピ、という音が聞こえました。


《スキル【念話:大賢者ソフィー】を獲得しました》


『やあ、別れたそうそう悪いね。言い忘れていたことを言っておくね』


 どうやらソ二アさんから連絡が来たようです。


『はい?』


『【魔力操作】についてだけど、まだ広めちゃダメだからね?おそらく君が【魔力操作】を得られたのは本当に偶然だから』


『あ、はい。広めてはいけないのは分かってます』


『ならいいけど。【魔力操作】はおそらく自称【神】がなにやら【いべんと】の報酬として用意するから、と言ってたから』


 …イベントの報酬、ですか。そういえば、


『偶然手に入れられたとしても…、その自称神はなぜ私の【魔力操作】を剥奪しなかったのでしょう?』


『ああ、それはワタシが自称【神】に許可させたからだよ』


 …ゲームマスターから許可を取ったって…。ソニアさんってこの世界の住人なんですよね…?


『なるほど…』


『じゃ、ワタシはそろそろ。またいつか会おうね〜、絶対に』


『はい』


 プツッ、という音がどこからか聞こえたと思ったら、念話が切れました。


 うん、エレナさんに教えなかったのは正しかったようですね。


 さて、都市に戻りましょうか。私は都市に向かって歩みを進め始めました。


 …あ、【魔力操作】を広めてはいけないのなら、【回復魔法】もなるべく他人に見せない方がいいということですよね…。どうしましょうか。



















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