少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記
9話 チュートリアル-6
9話 チュートリアル-6
「……凄い。治りました、治りましたよ!ソニアさ……」
ぐらりと、私の身体が横に傾く。しかし、ギリギリのところで足に力を入れることができたので、倒れずに済んだ。
「は、ははは…。うん、凄いね、いや、素晴らしいよ。Aya、君は」
まるで懐かしいものを見るような視線を、ソニアさんは私に送ってきた。
「–––さて、本筋を離れたことはこれくらいにして、【魔力】を大気中に出す–––その練習に戻ろうか」
「はい!」
【自己修復】を使ったあとの余韻に浸っている暇もなく、【魔力】を大気中に出す練習は、再開された。
「とりあえず、Aya。きみ、【魔力】ほとんど残ってないでしょ。ほれ、【魔力譲渡】」
ソニアさんが私に触れると、残り120しかなかったMPが、一瞬にして全回復した。
「あ、ちなみにですが私にもその、【魔力譲渡】ってやつ、使えますか?」
「んー、これは【回復魔法】の亜種みたいなものでね。【回復魔法】が使えるようになったら…、というか【魔力】を大気中に出せるようになったら使えるようになるよ」
「……!頑張ります!」
私はそう意気込んで、練習に取り組むことにした。
そんな私を、ソニアさんは優しげな表情で見つめていた。そしてソニアさんはどこからかノートを取り出して、なにかを書いていた。
–––さて、【魔力】を大気中に出すには、固め留める力を意識するんでしたよね…。
私は手慣れたように、MP100を手のあたりにまで移動させた。
そうですね…。なら、魔力を氷みたいにして、空気中に出してみますか…。
私は氷の塊を頭の中でイメージしながら、そっと空気中に【魔力】を出した。
《スキル【氷魔法】を獲得しました》
【氷魔法】…【魔力】が氷属性を帯びて、攻撃魔法として顕現したもの。
〈Lv1〉…【氷の球】〈消費MP100〉氷の球で対象を攻撃。ただし真っ直ぐにしか飛ばない。(【追尾】は【魔力操作】にて可能。)※この()は【魔力操作】を取得しているものにのみ表れます。
…なんか違うの覚えてしまいましたね。失敗ですか。
よし、気を取り直してもう一度…。
今度は、土の塊に……。いや、ダメですね。【魔力】が土の属性を帯びて出てくるとしか考えられません。
うーん…、そうだ。球体を思い浮かべるのはどうでしょう?その中に【魔力】を閉じ込める感じで。
私はそのイメージで、魔力を空気中に出してみた。
《スキル【空間魔法】を獲得しました》
《スキル【空間魔法】【魔力操作】からマジック・アーツ【魔力抽出】が派生しました》
《【魔力操作】のレベルが上昇しました》
【空間魔法】…汎用性の広い魔法。補助にも攻撃にも優れている。
〈Lv1〉…【魔力固定(特殊)】〈消費MP100〉純粋な魔力を閉じ込める空間を作り出す。形は薄い膜で作られる球体。外側からの魔素などの進入を拒む。使用者の任意で【魔力】を外に出せる。
〈Lv1〉…【空間固定】〈消費MP100〉空間を固定する。
これは……、成功で、いいのでしょうか?
私は【魔力視】を使って、この球体を確認した。
外側の薄い膜だけは、空色–––おそらく空間属性の色–––を帯びていたが、その中にある【魔力】は桜色を帯びていた。
そういえば私、自分の【魔力】の色を確認するのを忘れてますね…。
そう思い、私は【魔力視】で自分の【魔力】の色を確認した。
それはまるであの、《世界樹:春の姿》から舞い降りていた、サクラの花びらのような色をしていた。
つまり、この球体の中にある【魔力】の色と一致する。
「ソニアさん、みて下さい!できましたっ!」
私はそう言いながら、ソニアさんの方を向いた。
私がソニアさんの方を向いた時、ソニアさんは何故か–––泣いていた。
「………え?」
私は思わずそう呟いてしまう。
「ど、どうしたんですかっ?!そ、ソニアさん」
私がそう言って心配する素振りを見せると、ソニアさんは、「大丈夫。」と涙をぬぐい、
「ふふ、君の【魔力】が綺麗だったから、少し感動してしまっただけさ」
妖しい笑みでもない、慈しむような笑みでもない、ただ、自然と浮かべられるような笑みを彼女は浮かべてみせた。
「–––おめでとう。見事に正解に辿り着いたね。【空間魔法】は、イメージが難しいと思ったけど、まあ、大丈夫だったみたいだね」
「ということは、【回復魔法】が使えるようになる、というわけですね?」
「うん、そういうこと。【回復魔法】は…すでに獲得しているみたいだね。使えるようになっているはずだ」
《【魔力抽出】【魔力操作】【回復魔法】の獲得が確認されました。これにより、【回復魔法】を使用可能になります》
《エクストラチュートリアル:最終目標:【回復魔法】を使ってみよう!が開始されました》
…エクストラチュートリアルってなんでしょう。
普通のチュートリアルの終わり方ではない、ということですよね…?
《要望にお応えします。【回復術師】の一般的なチュートリアルは、【錬金術】を獲得して終わります。
しかし、エクストラチュートリアルは、名前通り、【回復魔法】が使用可能になって終了します。
【回復術士】のエクストラチュートリアルの始め方は、【第1都市見回り兵:階級:伍長】に扮装した【カリス大佐】の信用を得て、【教会】に案内を頼むと、【大賢者ソフィー】が司祭をしている【教会】に案内されます。そして、普通のチュートリアルを受けます。しかしなんらかの要因で【大賢者ソフィー】に気に入られると、【回復魔法】に必要な技術を得ることができる、エクストラチュートリアルが始まります。
そしてさらに、ほとんどあり得ないことですが、【大賢者ソフィー】に気に入られると、【師弟関係】を結ぶことができます。もし結んだ場合、エクストラチュートリアル終了後、《レジェンダリジョブクエスト》が開始されます》
ログを確認すると、《エクストラチュートリアルが開始されました》という言がかかれているのを発見した。
…なるほど。私が知らず知らずのうちにその条件を満たしていたようですね。
というかあの伍長さん、大佐さんだったんですか……。
それにしても、《レジェンダリジョブクエスト》ですか。訳すると《伝説の職業の探求》、いえここは《伝説の職業クエスト》と読むんでしょうね。
私はソニアさんと【師弟関係】になっているはずなので、そのクエストを受けることなるわけですが。
まあ、あとのお楽しみにしましょうか。
「–––【回復魔法】の初期魔法は【回復】、そして【下位状態異常回復】。この二つだよ」
そう言うとソニアさんは、【毒付与】と呟いた。
【回復】…消費MP100。対象のHPを50回復させる。
【下位状態異常回復】…消費MP200。軽い状態異常(例:毒(軽))を一つ回復させる。
「–––いま、ワタシは【毒(軽)】を負っている。つまり、どんどんダメージを負っていっている状態だな」
「ということは、【キュア】を使ったあとに、【ヒール】を使え、ということですね?」
「そう。では早速やってみてくれ」
私は【魔力抽出】を使い、空気中に【魔力】を出した。そしてその【魔力】の塊をソニアさんの方へ向けて、
「【キュア】」
そう唱えた。
しかし何故か、【キュア】は発動されず、【魔力】の塊は私の手元に残っていた。
「うん。【回復魔法】を使うときは、対象をしっかり設定しないとダメだよ」
「わかりました」
私は言われた通りに、今度は対象をしっかりとソニアさんと定めて、【キュア】を発動させた。
「【キュア:対象:ソニアさん】」
すると手元にあった【魔力】の塊が消失し、ソニアさんが淡い桜色に発光した。
「うん、成功だ。【回復】も、同じ要領でやれば成功するはずだ」
「わかりました」
私は【キュア】と同様にして、【ヒール】を発動させる。
「【ヒール:対象:ソニアさん】」
先ほどと同様、手元にあった【魔力】の塊が消失し、ソニアさんが淡く発光した。
「うん、上出来だ。おめでとう、これでチュートリアルは終了だ」
私はそのソニアさんの一言に、ホッと息をついた。
《エクストラチュートリアルをクリアしました。条件を満たしたため、《レジェンダリジョブクエスト》【大賢者への道】を開始します》
……【大賢者の弟子】という時点で薄々気づいてはいましたが、やっぱりそうなるんですね…。
「さて、基本は全て君に教えた。–––師匠として、君に一つ試練をやろう。【大賢者】になるための修行はそれをクリアしてからだ」
ソニアさんはそう言って、ノートのページのようなものを渡してきた。
私がそれを手に取った瞬間、それは目映い桜色に発光した。反射的に目を瞑ってしまう。
目を開けてそれを確認すると、それは私の名前と、【通行証】と書かれたカードのようなものに変化していた。
「【通行証】……?」
「そう。それがあればどんな国でも無条件で入ることができる。とりあえずだ。Aya、【聖女】になってきたまえ」
「……凄い。治りました、治りましたよ!ソニアさ……」
ぐらりと、私の身体が横に傾く。しかし、ギリギリのところで足に力を入れることができたので、倒れずに済んだ。
「は、ははは…。うん、凄いね、いや、素晴らしいよ。Aya、君は」
まるで懐かしいものを見るような視線を、ソニアさんは私に送ってきた。
「–––さて、本筋を離れたことはこれくらいにして、【魔力】を大気中に出す–––その練習に戻ろうか」
「はい!」
【自己修復】を使ったあとの余韻に浸っている暇もなく、【魔力】を大気中に出す練習は、再開された。
「とりあえず、Aya。きみ、【魔力】ほとんど残ってないでしょ。ほれ、【魔力譲渡】」
ソニアさんが私に触れると、残り120しかなかったMPが、一瞬にして全回復した。
「あ、ちなみにですが私にもその、【魔力譲渡】ってやつ、使えますか?」
「んー、これは【回復魔法】の亜種みたいなものでね。【回復魔法】が使えるようになったら…、というか【魔力】を大気中に出せるようになったら使えるようになるよ」
「……!頑張ります!」
私はそう意気込んで、練習に取り組むことにした。
そんな私を、ソニアさんは優しげな表情で見つめていた。そしてソニアさんはどこからかノートを取り出して、なにかを書いていた。
–––さて、【魔力】を大気中に出すには、固め留める力を意識するんでしたよね…。
私は手慣れたように、MP100を手のあたりにまで移動させた。
そうですね…。なら、魔力を氷みたいにして、空気中に出してみますか…。
私は氷の塊を頭の中でイメージしながら、そっと空気中に【魔力】を出した。
《スキル【氷魔法】を獲得しました》
【氷魔法】…【魔力】が氷属性を帯びて、攻撃魔法として顕現したもの。
〈Lv1〉…【氷の球】〈消費MP100〉氷の球で対象を攻撃。ただし真っ直ぐにしか飛ばない。(【追尾】は【魔力操作】にて可能。)※この()は【魔力操作】を取得しているものにのみ表れます。
…なんか違うの覚えてしまいましたね。失敗ですか。
よし、気を取り直してもう一度…。
今度は、土の塊に……。いや、ダメですね。【魔力】が土の属性を帯びて出てくるとしか考えられません。
うーん…、そうだ。球体を思い浮かべるのはどうでしょう?その中に【魔力】を閉じ込める感じで。
私はそのイメージで、魔力を空気中に出してみた。
《スキル【空間魔法】を獲得しました》
《スキル【空間魔法】【魔力操作】からマジック・アーツ【魔力抽出】が派生しました》
《【魔力操作】のレベルが上昇しました》
【空間魔法】…汎用性の広い魔法。補助にも攻撃にも優れている。
〈Lv1〉…【魔力固定(特殊)】〈消費MP100〉純粋な魔力を閉じ込める空間を作り出す。形は薄い膜で作られる球体。外側からの魔素などの進入を拒む。使用者の任意で【魔力】を外に出せる。
〈Lv1〉…【空間固定】〈消費MP100〉空間を固定する。
これは……、成功で、いいのでしょうか?
私は【魔力視】を使って、この球体を確認した。
外側の薄い膜だけは、空色–––おそらく空間属性の色–––を帯びていたが、その中にある【魔力】は桜色を帯びていた。
そういえば私、自分の【魔力】の色を確認するのを忘れてますね…。
そう思い、私は【魔力視】で自分の【魔力】の色を確認した。
それはまるであの、《世界樹:春の姿》から舞い降りていた、サクラの花びらのような色をしていた。
つまり、この球体の中にある【魔力】の色と一致する。
「ソニアさん、みて下さい!できましたっ!」
私はそう言いながら、ソニアさんの方を向いた。
私がソニアさんの方を向いた時、ソニアさんは何故か–––泣いていた。
「………え?」
私は思わずそう呟いてしまう。
「ど、どうしたんですかっ?!そ、ソニアさん」
私がそう言って心配する素振りを見せると、ソニアさんは、「大丈夫。」と涙をぬぐい、
「ふふ、君の【魔力】が綺麗だったから、少し感動してしまっただけさ」
妖しい笑みでもない、慈しむような笑みでもない、ただ、自然と浮かべられるような笑みを彼女は浮かべてみせた。
「–––おめでとう。見事に正解に辿り着いたね。【空間魔法】は、イメージが難しいと思ったけど、まあ、大丈夫だったみたいだね」
「ということは、【回復魔法】が使えるようになる、というわけですね?」
「うん、そういうこと。【回復魔法】は…すでに獲得しているみたいだね。使えるようになっているはずだ」
《【魔力抽出】【魔力操作】【回復魔法】の獲得が確認されました。これにより、【回復魔法】を使用可能になります》
《エクストラチュートリアル:最終目標:【回復魔法】を使ってみよう!が開始されました》
…エクストラチュートリアルってなんでしょう。
普通のチュートリアルの終わり方ではない、ということですよね…?
《要望にお応えします。【回復術師】の一般的なチュートリアルは、【錬金術】を獲得して終わります。
しかし、エクストラチュートリアルは、名前通り、【回復魔法】が使用可能になって終了します。
【回復術士】のエクストラチュートリアルの始め方は、【第1都市見回り兵:階級:伍長】に扮装した【カリス大佐】の信用を得て、【教会】に案内を頼むと、【大賢者ソフィー】が司祭をしている【教会】に案内されます。そして、普通のチュートリアルを受けます。しかしなんらかの要因で【大賢者ソフィー】に気に入られると、【回復魔法】に必要な技術を得ることができる、エクストラチュートリアルが始まります。
そしてさらに、ほとんどあり得ないことですが、【大賢者ソフィー】に気に入られると、【師弟関係】を結ぶことができます。もし結んだ場合、エクストラチュートリアル終了後、《レジェンダリジョブクエスト》が開始されます》
ログを確認すると、《エクストラチュートリアルが開始されました》という言がかかれているのを発見した。
…なるほど。私が知らず知らずのうちにその条件を満たしていたようですね。
というかあの伍長さん、大佐さんだったんですか……。
それにしても、《レジェンダリジョブクエスト》ですか。訳すると《伝説の職業の探求》、いえここは《伝説の職業クエスト》と読むんでしょうね。
私はソニアさんと【師弟関係】になっているはずなので、そのクエストを受けることなるわけですが。
まあ、あとのお楽しみにしましょうか。
「–––【回復魔法】の初期魔法は【回復】、そして【下位状態異常回復】。この二つだよ」
そう言うとソニアさんは、【毒付与】と呟いた。
【回復】…消費MP100。対象のHPを50回復させる。
【下位状態異常回復】…消費MP200。軽い状態異常(例:毒(軽))を一つ回復させる。
「–––いま、ワタシは【毒(軽)】を負っている。つまり、どんどんダメージを負っていっている状態だな」
「ということは、【キュア】を使ったあとに、【ヒール】を使え、ということですね?」
「そう。では早速やってみてくれ」
私は【魔力抽出】を使い、空気中に【魔力】を出した。そしてその【魔力】の塊をソニアさんの方へ向けて、
「【キュア】」
そう唱えた。
しかし何故か、【キュア】は発動されず、【魔力】の塊は私の手元に残っていた。
「うん。【回復魔法】を使うときは、対象をしっかり設定しないとダメだよ」
「わかりました」
私は言われた通りに、今度は対象をしっかりとソニアさんと定めて、【キュア】を発動させた。
「【キュア:対象:ソニアさん】」
すると手元にあった【魔力】の塊が消失し、ソニアさんが淡い桜色に発光した。
「うん、成功だ。【回復】も、同じ要領でやれば成功するはずだ」
「わかりました」
私は【キュア】と同様にして、【ヒール】を発動させる。
「【ヒール:対象:ソニアさん】」
先ほどと同様、手元にあった【魔力】の塊が消失し、ソニアさんが淡く発光した。
「うん、上出来だ。おめでとう、これでチュートリアルは終了だ」
私はそのソニアさんの一言に、ホッと息をついた。
《エクストラチュートリアルをクリアしました。条件を満たしたため、《レジェンダリジョブクエスト》【大賢者への道】を開始します》
……【大賢者の弟子】という時点で薄々気づいてはいましたが、やっぱりそうなるんですね…。
「さて、基本は全て君に教えた。–––師匠として、君に一つ試練をやろう。【大賢者】になるための修行はそれをクリアしてからだ」
ソニアさんはそう言って、ノートのページのようなものを渡してきた。
私がそれを手に取った瞬間、それは目映い桜色に発光した。反射的に目を瞑ってしまう。
目を開けてそれを確認すると、それは私の名前と、【通行証】と書かれたカードのようなものに変化していた。
「【通行証】……?」
「そう。それがあればどんな国でも無条件で入ることができる。とりあえずだ。Aya、【聖女】になってきたまえ」
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