少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

ガブガブ

8話 チュートリアル-5

8話 チュートリアル-5




「人間というカテゴリー内だけの話、ということは、【魔物】などの人間から外れる生物は、【回復魔法】を使える、ということですか?」


「まあ、【中型魔物】、【大型魔物】と、一部の知能が極端に発達している魔物に限るんだけどね。【中型魔物】と【大型魔物】は生まれつき【魔力操作】が使えるんだ。無意識のうちにね。その理由は–––そうだね。どうしてだと思う?」




【中型魔物】、【大型魔物】が無意識のうちに【魔力操作】を使える理由、ですか。




「あ。ちなみにですが【中型魔物】、【大型魔物】の大きさってどれくらいですか?」


「【中型魔物】は小さいもので3メートルほど。大きいもので10メートルくらい。【大型魔物】は小さいもので15メートルくらい。大きいもので数100メートルを超えるね」




……なるほど。普通なら、そんな大きさを持つ生き物は自重で動くこともままならないでしょう。
ということは……、




「自重に–––重力に逆らう為、ですか?」


「正解。それらの【魔物】は自重をものにせず動き回るために進化を重ねて、無意識のうちに【魔力操作】による【身体強化】を行使することが出来るようになったんだ」


「…なるほど。そういう【魔物】は全て、【回復魔法】を行使できるんですか?」




だとしたらめっちゃ脅威じゃないですかね?




「いや、【回復魔法】を行使できるのは、さらにその中でも知能が優れているやつだけさ。【身体強化】と【回復魔法】を行使するためには、同じ【魔力操作】が必要だ。だがやり方が根本的に違う。【身体強化】は【魔力】を身体の中に留めることによって名前の通り、身体のあらゆるところを強化する」




ソニアさんは突然、どこからか短剣を取り出して、彼女自身の腕を切りつけた。
突然の自傷行為に、私は愕然としてしまう。


血がダラダラと流れている。そのはずなのに、ソニアさんはまるで気にもとめず、


「Aya、きみは【魔力操作】による【魔力視】が使えるかい?」


と聞いてきた。
【魔力視】……、目のあたりに【魔力】を集めれば使えますかね?


私は【魔力操作】で、目のあたりに、【魔力】を集中させた。




「うひゃっ?!」




突然、目の前が真っ白に染まった。




「ふむ、使えるみたいだね。【魔力視】で視認できる【魔力】および【魔素】を、体内にある魔力のみ、と限定できるかい?」


「……やってみます。…やり方は?」


「そうだね。基本的に体内にある【魔力】は白以外の色をしている。–––まあ、【魔素使い】と呼ばれる例外もあるんだけどね–––白色の【魔力】を視認しない、と念じればいいだけだよ。まあ、【教皇】が云うにはそれが難しいらしいんだけど……」




ふむふむ、白色の【魔力】を視認しない、と念じるんですね。


白色の魔力を視認しない、白色の魔力を視認しない、白色の魔力を視認しない、白色の魔力を視認しない、白色の魔力を視認しない……。


……あれ、なんか見えてきましたね。これは……。




「なんかソニアさんがブルーマンになってますよ!」


「誰が【青き奇人ブルーマン】だ!…ワタシの【魔力】の色が青色だからそう見えているだけだ」




ソニアさんはそう言ったあと、「ん…?」と呟いて、また顔を愕然とさせた。




「…え、できたの?きみ」


「…?ええ。できましたよ?」




それがどうしたんでしょうか?
そう私が疑問に思っていると、ソニアさんは「まあいいや。」と呟いて




「–––いま、ワタシは【身体強化】を使って、全身の運動能力を向上化させている」




私も、彼女と同様に【身体強化】を使ってみることにしました。
私は【魔力操作】で、全身に【魔力】を行き渡させる。




「ふぁっ?!」




【魔力】が一瞬にして大量に消費されたときのような感覚が、私を襲った。


ぐらりと、私の身体から力が抜けて、倒れそうになり–––




「……【魔力譲渡トランスファー】。…【身体強化】を使ったね?Aya」




そう言われた私は、ふいっと、目をそらした。


…仕方ないじゃないですか。目の前に餌を出された獣が我慢できるとでも思いですか?




「…もう。【身体強化】は、身体に行き渡させる【魔力】の量をしっかりと指定しないと、さっきの君みたいに大変なことになるから気をつけてね?」


「……はい」




しょぼんとしている私を見かねたのか、彼女ははぁ、とため息を吐いて




「一応言っておくけど、【身体強化】の本来の使い方は身体の一部分だけを強化するのに使うんだ。ワタシみたいに全身を強化できるのは【魔力】の量が極端に多くないとできないからね?」




と私に告げた。


…そういうことなら今は諦めますか……。




「–––話を戻すよ。Aya、【魔力視】越しみると、先ほどつけた私の腕の傷はどうなって見えるかい?」




私は言われた通りに、【魔力視】を発動した状態で、ソニアさんの腕の傷を注視した。


傷口は他の場所と比べて、【魔力】の濃度が薄くなっていた。
他の場所–––通常の状態の【魔力】の濃度を10とするならば、傷口の部分の【魔力】の濃度は、5くらいまで薄くなっていた。




「…傷口の場所だけ、他のところと比べて【魔力】の濃度が薄くなっていますね」




私がそうソニアさんに告げると、ソニアさんは満足そうに頷いて、【身体強化】を解除した。私も、【魔力視】を解除した。
そして私に




「なんで薄くなっているか、わかるかい?」




と問いかけてきた。


まあ、答えは一つしかありませんよね。


問いかけに対し私は




「傷口から血が出ているから、ですよね?」




そう答えた。




「正解だよ。【魔力】は血を利用して全身に流れる。出血しているところがあれば、そこから【魔力】が大量に噴き出す。まあでも、人間たちは別に【中型・大型魔物】のように【身体強化】を常に使っているわけじゃないから問題ないんだけどね」




…なるほど。つまり常に【身体強化】を行なっている【中型・大型魔物】にとっては致命的なもの、というわけですね。


しかしそうなると当然、回復手段はあるんでしょうね。……あれ、でも知能の低い【中型・大型魔物】は【回復魔法】が使えないんでしたよね…?


「……知能の低い【魔物】にも、回復手段はあるんですよね?」


私がそうソニアさんに聞くと、


「当然。それが今から見せる【自己修復】というものだ」


と言って、再び【魔力視】を発動させて、と指示を出してきた。


私は言われた通りにまた、【魔力視】を発動させる。


「じゃ、傷口をしっかりとみててよ?」


「わかりました」


じっと、傷口を見つめる。


…だんだんと青色の【魔力】が、その傷口に集まっていっているのがわかった。


「いくよ?【自己修復リペア】」


彼女がそう言った次の瞬間、青色の【魔力】は消え失せ、代わりに傷口がまるではじめからなかったかのように、修復されていた。


「……………!凄い、凄い凄い凄い凄い凄い!これが、【自己修復リペア】…!ソニアさん!やってみてもいいですか?」


私は目をキラキラと輝かせながら、ソニアさんを見つめた。


「…うーん、別にいいけど……。ワタシみたいに【痛覚無効】を所持してないと、自傷するのは意外と痛いよ?」


「それなら別に大丈夫ですよ?じゃ、ソニアさん!ナイフ、貸してください!」


その私の言葉に、ソニアさんは一瞬目を見開いたが、「そうだったね」と呟き、私にナイフを寄越してくれた。


私はナイフを右手に持ち、左手の手首を切りつけた。


《スキル【短剣術】のレベルが上昇しました》


一瞬ピリッとしたまるで火傷を負ったときのような痛みが走ったが、めちゃくちゃ痛い、というほどではなかったので普通に我慢することができた。


ドバドバと、左手の手首から大量の血が溢れ出す。


あまりの鉄臭さに、私は顔をしかめてしまう。
ソニアさんの方に顔を向けると、ソニアさんも私と同様に、顔をしかめているのがわかった。


すると突然、私の視界の右上に、緑色の棒のようなものと、なにかを示す数値が表れた。


数値は1秒経つごとに、5、減少している。
そしてその数値の下には、【状態:出血(重)】と表示されていた。


おそらく、というか確実にこれはHPを示すものでしょうね。


これらの情報と、先ほどのソニアさんのしたことを照合させると…。


つまり、【自己修復】とは、【状態:出血】を治療し、HPを回復する。という効果を持つみたいですね。


さて、答えあわせをしましょうか。


私は【魔力操作】で、【魔力】を左手の手首に集中させる。加減がわからないので、とりあえず100MPほどを左手の手首に集中させることにした。


「【自己修復リペア】」


《スキル【魔力操作】からマジック・アーツ【自己修復リペア】が派生しました》


《スキル【魔力操作】のレベルが上昇しました》




自己修復リペア】…消費MPに応じて自分の状態異常及び部位欠損、そしてHPを回復させる。
〈消費MP100〉
軽い状態異常(例:毒(軽))を一つ治療し、HPを50回復させる。状態異常がない場合はHPを100回復させる。


………(消費MP200〜400。HPの回復量が違うだけなので省きます)
…………
……………


〈消費MP500〉
並の状態異常(例:毒(並))を一つ治療し、HPを250回復させる。状態異常がない場合はHPを500回復させる。


………(消費MP600〜2400。HPの回復量が違うだけなので省きます)
…………
……………


〈消費MP2500〉
重い状態異常(例:毒(重))を一つ治療し、HPを1250回復させる。状態異常がない場合はHPを2500回復させる。


………(現在の《Aya》には使用不可なので省きます)
…………
……………




MP100だと、この傷には意味がないみたいですね…。
今度は私は、MP2500を傷口に集中させた。


「【自己修復リペア】」


すると傷口が淡く発光したあと、傷口はまるで何事もなかったかのように、傷跡を残すことなく修復された。


右上に表示されているHPを示す数値は500まで回復し、その下に表示されていた【出血(重)】は傷口がなくなったことによって、消えてなくなった。



















「少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く