少しおかしな聖女さまのVRMMO日常記

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3話 チュートリアル

3話 チュートリアル






 とりあえずチュートリアルを受けると言ってあの場を後にしたが、どこでチュートリアルを受ければいいかわからない私は、この都市の大通りを彷徨っていた。


 さすがは都市の大通りだ。出店が多く立ち並び、人が溢れかえっている。




「こんにちは、旅人さん。お困りのようですが、どうかしましたか?」


 困っている私の顔を見たからか、この都市の見回りをしているであろう兵士さんが、そう私に声をかけてきた。


「こんにちは。えっと、回復術師の訓練を受けられるところを探しているのですが…。なにぶん、ここの土地勘がないもので…」


「ああ、それならついてきてください。案内しますよ」


 随分と優しい兵士さんですね。私はお言葉に甘えて、兵士さんについていくことにした。


 ………
 …………
 ……………


 私は見回りの兵士さんにのお陰で、回復術師のチュートリアルを受けられる【教会】に無事つくことができた。


 どうやらこの見回りの兵士さん、伍長という階級につく、けっこう偉い人だった。人望が厚く、彼にすれ違った人々NPCは笑顔で挨拶をして、労いの言葉をかけていた。


「案内ありがとうございました」


 私は伍長さんにお礼の言葉を言った。


「いえいえ。当然のことをしたまでです。困っている人を見かけたら、それを助けるのが我々の仕事ですので」


 私の言葉に、彼はそう返してきた。さすがは人々からの人望が厚い人だ。


「では、私はこれにて。また何かあれば、この都市にある【駐屯地】にお越しを。きっと、力になれると思います」


 伍長さんはそう言ってから、この場を去っていった。


 さて、早速なかに入りましょうか。


 私は教会の扉を開けて、中に入った




 ―――教会内は、深い縦横のの構造になっていて、両側にある支柱の並びのせいか、内陣にある祭壇に自然と視線が引き寄せられる。


 教会の入り口からは内陣にある祭壇に向かって赤色の絨毯が伸びていて、両側の壁にはステンドグラスが配置されており、そこから差し込む光が、教会内部をより神秘的に際立たせている。


「ほわぁ…。綺麗、ですね…」


 思わず私は、そう口にしてしまう。


「ふふ、そうでしょう。ここは、神を祀る教会ですから。誰が見てもそう思われるようにしないといけないんですよ」


 私は声のした方に視線を向ける。いつのまにか祭壇のあたりに、女性が一人、立っていた。
 私が軽く目を見開いて、その女性を見つめていると、


「ふふ、驚かせてしまいましたか。–––こんにちは、旅人さん。ここに来たということは、回復術師の訓練チュートリアルを受けるということですね?」


「え、ええ。そうです。回復術師の訓練を受けに来ました」


 彼女の問いに、私はそう答える。すると、彼女はニッコリと笑みを浮かべて、


「ふふ、おめでとうございます。あなたが旅人の中で、一番はじめにこの教会を訪れました」


 と、告げてきた。そして彼女はいつのまにか手に持っていた紙袋を、私に押し付けてきた。


「どうぞ、初回限定のプレゼントです」
「あ、どうもありがとうございます」


 私はそれを手に取り、とりあえずインベントリにしまった。
 それを確認した彼女は、キョロキョロと辺りを見回してから


「あなたの他に人はいませんし、ここでやりましょうか」


 と言ってきた。


「わかりました」


 私はそう返事をする。


《チュートリアル:回復術師編が開始されました》


「–––まずは自己紹介からですね。私の名前はソニアと云います。見ての通り、ここで司祭をしています」


「–––私の名前は、《Aya》と云います。旅人と呼ばれるものです。よろしくおねがいします」


 ちなみにだが、自己紹介をした理由はNPCはプレイヤーの頭上あたりに表示されているネームタグを認識できないからである。


 彼女–––ソニアさんは満足そうに頷いてから、祭壇に置かれていた一冊の本を手に取り、私に渡してきた。


「さて、とりあえずまずは言語の勉強をしましょう。あなたが旅人は、こちらの言語を話したり聞くことはできるが、書くことは出来ないと聞いていますし」


 そう言われて、私はチラリとこの本の表紙を見た。


《××××××》


 まったく読めません。表紙には、タヌキとウサギが手を繋いでいる姿が描かれている。
 表紙の絵的に、子供が読むようなものなのでしょうが…。この世界の言葉の読み書きについては子供以下なんでしょう、私。


 まあ、《言語理解促進》なんてスキルがあるくらいですし、薄々感じてはいたんですが…。


「…ですね。あ、ソニアさん。私、《言語理解促進》というスキル持ってます」


「おお、それは僥倖ですね。では、早速はじめましょうか」


 それから私は、ソニアさんとともに言語の習得に励むのだった。






《スキル:【全種族共通語】を獲得しました》


 ゲーム内で日が沈み、月が昇りはじめている頃、ようやくスキル獲得を知らせるウィスパーボイスが聞こえた。


「読めます…!ソニアさん!読めるようになりました!」


 私は嬉しさのあまり、ソニアさんに抱きついてしまった。


「かわい–––おめでとうございます、Ayaさん!では、次のステップに進みましょうか」


 ハッと我に返って、ソニアさんから離れる。


「あ、えと、はい!」


 ちなみにだがこの本の内容は、【カチカチ山】だった。
 いつ見ても、おばあさんを殺してお爺さんに食べさせたタヌキを許せません。


 –––まあ、今はどうでもいいですね。


「あ、この本って頂いても問題ないでしょうか?」
「いいですよ。好きなようにご利用ください」


 許可をいただいたので、私はインベントリに【カチカチ山】をしまう。


「–––さて、Ayaさん。先程渡した紙袋を開けてみてください」


 私はインベントリから紙袋を取り出して、言われた通りに開いた。
 中には、ベールとローブ、それにグローブとシューズ、さらに木でできた一本の杖が入っていた。


「装備が出てきましたね?では、それを装備してください」


「わかりました」


 私はステータスを開いて、《装備》の項目をタップして、今入手したベール、ローブ、グローブ、シューズ、そして杖を装備した。




 【純白のベール】…穢れを知らない純白のベール。何色にでも染まることができる、いわば初期状態。
 教会に一番はじめに訪れたものが入手することのできる装備。
 付与:【浄化】【INT+3】
 品質:特殊


 【純白のローブ】…穢れを知らない純白のローブ。何色にでも染まることができる、いわば初期状態。
 教会に一番はじめに訪れたものが入手することのできる装備。
 付与:【浄化】【HP+500】
 品質:特殊


 【純白のグローブ】…穢れを知らない純白のグローブ。何色にでも染まることができる、いわば初期状態。
 教会に一番はじめに訪れたものが入手することのできる装備。
 付与:【浄化】【DEX+3】
 品質:特殊


 【純白のシューズ】…穢れを知らない純白のシューズ。何色にでも染まることができる、いわば初期状態。
 教会に一番はじめに訪れたものが入手することのできる装備。
 付与:【浄化】【AGI+3】
 品質:特殊


 【世界樹の杖:白桜】…称号【春の精霊】を持つものが、【教会】もしくは 【魔法協会】に行くと、貰うことのできる初期装備。
 付与:【不壊】【MP+500】【INT+1】
 品質:普通


 【浄化】…装備に付与されている場合、その付与されている装備が汚れなくなる。


 【不壊】…装備に付与されている場合、その付与されている装備が決して壊れなくなる。




 初期装備…、初めてもらう装備にしてはぶっ壊れた性能をしてますね…。
 そう私が内心冷や汗をかいていると、


「ふふ、どうです?結構いい性能をしているでしょう?」


 ソニアさんがそう笑いかけてきた。


「え、ええ。見た目も可愛いですし、性能もいいですし。えっと、ありがとうございます」


 装備の見た目はそれぞれ名前の通り、真っ白いウィッグ、真っ白いローブ、真っ白いグローブ、真っ白いシューズで、割とシンプルなものである。
 しかし、私にとっては可愛いものに思えた。


 私は、【雪】が好きだ。だから【白色】が好きだ。
 だから、それらを着れば、まるで雪の精霊みたいになれるんじゃないかと。そう思うと、とても可愛く思える。


「–––次にやることは、【回復魔術】の基本中の基本。【魔力操作】です」


 ソニアさんのその言葉に、私はハッと我に返り、しっかりと気を引き締めて「はい!」と返事をした。

















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