天空巫女と英雄譚

ノベルバユーザー356021

5話

「…………ちょっと!?何を言ってるんですか!!!教師をするのは先輩で、私はお目付け役と言う話でしたよね!なのになんで私がやる事になってるんですかー」


「ネルトラ=シャルルさん、って話は本当ですかっ!?」


 一人の女子生徒がネルトラの話を遮って、すごい勢いで、ネルトラに質問をしてきた。
 よく見れば生徒達は全員、机から身を乗り出し目を輝かせている。ネルトラは生徒達の勢いに負け、一人の女子生徒の質問に答え始めた。


「はい…。私の名前はネルトラ=シャルルです。この度は、ここの担任クライストス=レイザーのお目付け役として派遣されました。一年間よろしくお願いしま―」


「「「う……うおぉぉぉおおおおおーーーーーー!!!!!!」」」


「なっ…………なんですか!?」


 ネルトラが急いで心を落ち着かせ、取り繕った口調で、挨拶をし始めたが、突然の生徒達の大騒ぎにネルトラは目を瞬かせて驚く。


「ネルトラ=シャルルって言ったら、あのネルトラ=シャルルだろ!?」


「やべーじゃん!!!」


「しかも、超強いって話を聞いてたから、どんなゴリラ軍人だと思えば女秘書、見たいな超綺麗な人だしよぉーー」


「「最高じゃん!!!」」


 男子生徒が興奮の余り騒いでいると、


「ネルトラさんの事を変な目でみないでください!!」


「そうですわ、男子の皆さんは黙っててくださいまし!」


 女子生徒達は男子生徒を窘めるようにして、ネルトラを守るように立ち上がった。
 ネルトラ=シャルルは、女性軍人のカリスマ的人物である。まだ、男尊女卑の考えがある軍上層部で、数々の結果と、圧倒的実力でスピード出世をした、ネルトラ=シャルルは学生達の間じゃ、英雄にも近い人物だった。
 男子生徒と女子生徒はお互いを睨み合い、ネルトラはそんな生徒達を、どうすればいいのかわからなくて、あたふたしている。


「…………」


「…………」


 今にも、一発触発状態で睨み合っていて、何かの切っ掛けで、乱闘騒ぎになりそうだったが、


 パンッ


 手を叩く音が聞こえた。
 別に音は大きくも無いし、荒々しく叩いた様な音でも無かった、ただ強制的に視線を奪われる、そんな音だった。
 やった本人は、落ち着いた生徒たちを見回して顎をしゃくった。席に戻れということだろう。


「…………はーい、皆さんが静かになるまで3分もかかりましたー。……ったくよ、軍の英雄的人物がいて興奮するのはわかるぞ?だけど、その英雄的人物が授業をしてくれるんだ……。それを聞かない手はねぇーだろ?」


 クライストスの話を聞いた生徒達は、余りの自分達の愚かな行動に、顔を赤くして羞恥した。


「よし!それじゃあ、ネルトラ=シャルル大先生、よろしくお願いしますね?」


 ネルトラは苦虫を噛み潰したような、表情をしながら壇上に上がった。
 ネルトラは最初授業をする気は無かったが、生徒達があそこまで興奮して、今も羞恥で顔を下に向かせながらも、ちらっ、ちらっ、とこっちを見ている生徒達相手に授業をしません、と言えるほど非情ではなかった。
 だから、この借りは後ろで、ニヤニヤしている唐変木に返させる事を考えていた。


「この一時間は、私ネルトラ=シャルルが授業を受け持たせて貰います。」


 生徒達は、ゴクッと生唾を飲み緊張して、ネルトラの言葉を聞いている。


「まず最初に、常用魔法と特有魔法の違いについて説明していきたいと思います」


 ネルトラは生徒を見回して、生徒達の表情を確認しつつ、授業を始めた。


「常用魔法とは皆さんが一年生の時に習った魔法です。決まった呪文を唱えて、決まった魔力を流せば誰でも発動する事が出来ます。魔力量に優劣があったとしても、発動すれば威力は全て一緒です。次は特有魔法を説明したいと思いますが…………」


 そこで初めてネルトラは言葉を濁していた。


「…………特有魔法とは、言わば[才能]の魔法です。人には特有魔質という物があります。特有魔質とは、言わば[才能]です。特有魔質の違いで覚えられる魔法も違えば、性能も違ってきます。特有魔法は合計9個、覚えられることができますが……、特有魔法を覚える事は、簡単ではありません。莫大な実戦経験、人間としての成長、数々の試練を経て、ようやく、一つの魔法覚える事ができるのです。」


 ネルトラは教科書をめくり、一人の女の顔を探し出した。


「特有魔法は一つ目より二つ目、二つ目より三つ目と言った感じで、能力が上がっていきます。特有魔法は、才能の格を測るのにも役にたつので、軍人などの試験条件として使われています。また、特有魔法を一つ覚えるにつき、帝国から階級章と賞状が貰えます。…………しかし、皆さん特有魔法に振り回されないでください。いついかなる時も、自分の身を守るのは特有魔法でも無く、常用魔法でも無く、自分自身だと言うことを頭の片隅に置いといて下さい。…………これで授業を終わりにします。ありがとうございました」


 ネルトラは特有魔法があまり好きでは無かった。[才能]が直に出るからだ。
 別にネルトラは、[才能]ぐらいなら、気にしないが皆がみんな、気にしないわけでは無い。特に才能や、能力などで上下関係を作る子供は最たるものだった。
 確かに[才能]は偉大だ、だけど[才能]だけでは強く成れるほど、簡単なものでは無い。
 それなのに、特有魔質発表の度に、[才能]が弱いものは諦め、[才能]が強いものはあぐらかいていた。ネルトラはそれを見る度に、酷く憂鬱な気分になるのだった。


 ふと、後ろを見てみると、そこには自分に授業をさせ、ニヤニヤしている先輩がいた。
[才能]が弱いものは諦めるものだと、諦めていた自分に、手を伸ばしてくれた人。
 最後まで[才能]を諦めなかった、尊敬して憧れる先輩がいた。











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