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身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

97.「千尋ちゃん!千歳ちゃん」

僕は首から血を吹きながら倒れた二人を抱えて、抱きしめる。

両手を2人の首に当てて、血を止める様に。

だが、血は止らない、勢いを落さず吹き、そして流れ続ける。

「おに・・・い・・・ちゃん・・・大丈夫、大丈夫だから、痛くないみたいだから、心配しないで・・・ねっ?」

千尋ちゃんは、血塗れの微笑みを僕に浮かべる。

「そ、そうですよ・・・・痛くないです。・・・平気です・・・」

千歳ちゃんも微笑んだ。

「・・・そんな訳無いだろう・・・・・こんなに、血を出したら・・・君達は死んでしまう・・・」

「平気だから!平気だから!!。何でも無いから。だから、お兄ちゃん、一緒に居て・・・」

「そうです・・・私はお兄さんの従兄弟です。だから、大丈夫。大丈夫なんです・・・、一緒に居て下さい、お兄さん」

血塗れになりながらも2人は、体を起こし、僕を抱きしめる。2人の血で僕の全身も血で覆われる。

「・・・・・・もう、茶番はお止めなさい。・・・・・・・貴女達、完全に思い出したでしょう?お兄様とは違う世界の住人である事を。」

後ろで声が聞こえた。声をする方に振り向くと、人の頭、生首が浮かんでいる・・・。その生首はソルフィちゃんだった。

「ソルフィちゃん!!だ、大丈夫だったのか・・・?」

「ええ、お兄様、ソルフィは魔族ですので、首を刎ねられたぐらいでは死にませんわ・・・。でも、当たり所が良かっただけで、正直死ぬかと思いましたけど・・・」

ふふっと微笑みかけながら、生首のソルフィちゃんは言った。

「・・・また、貴女ですね・・・・・・、もう関係無いじゃないですか。私と千尋さんとお兄さん、幸せなんですよ。放っておいてくださいよ!」

血を流しながら、千歳ちゃんは激昂する。

「・・・・・・そうだよ、私、お兄ちゃんと居れて・・・幸せなんだよ。お兄ちゃんだって、私・・・幸せにしてみせるもん、いい加減どこかへ行ってよ」

千尋ちゃんも激昂した。

「そうは行きませんわ。今の光景を見ましたね?お兄様は、あの悪辣な王に封印をされてしまったのです。貴女達は既に死んでしまっている。分るでしょう?」

「分らないよ!、私は、お兄ちゃんの妹、山先千尋!!ずっとずっと、今までも、これからもそうだよ!変な事、言わないでよ!!」

頭を抱えながら千尋ちゃんは叫んだ。

「なあ・・・千尋ちゃん、千歳ちゃん・・・!!」

僕が2人の名を呼ぶと、二人は僕の方へ振り向く。

「・・・・・・2人は、どうなんだ?思い出したのか・・・?・・・自分自身の事を・・・?」

僕は2人に聞いてみた。2人は、僕の言葉に困惑した様だった。そして、少しの間、言葉を悩み選んだ様に視線を伏せて、口を開く。

「・・・・・・わかりません。私は、お兄さんの従兄弟の山先千歳です・・・子供の頃からの記憶だってあるんです。確信をもって、そう言えるつもりだったんです。・・・でも、お兄さんを探している時から・・・今の、あの城の中の風景を見てから・・・その確信が確信じゃなくなりつつある・・・というか・・・私、お兄さんの従兄弟なんですかね?、可笑しいんです、。私、知らない場所で、子供時代を過ごして、そして、父が亡くなって、私が、私の家の騎士の称号を継いだ時の記憶とかが・・・頭の中に沸きつつある・・・んですよね。・・・きっと、何か映画か何かの見た映像の記憶が混同しているんじゃないかと思うんですが。・・・でも・・・・私は・・・」

頭を抱えて、そして、千歳ちゃんは、僕の胸を強く強く抱きしめた。

「怖いです・・・・・・私、良くわからなくなっています。何もかも確信が持てないです・・・。」

震える様に、僕の胸の中に顔を埋める千尋ちゃん。

「・・・・・・・お兄ちゃん、私は・・・・・・・私は、知らないよ、こんな事。何があっても、私はお兄ちゃんの妹だもの・・・・・・。何にも知らない・・・」

そう言って、千尋ちゃんも僕を抱きしめ、そして、ソルフィちゃんを睨みつけた。

「・・・もう帰ってよ、帰って下さいよ。もう、関係無いでしょ?貴女とは。私達は、本当の家族になったんだよ?この為に私は、お兄ちゃんと魔王を倒す旅に出たんだよ。幸せを壊さないでよ・・・ねえ・・・」

普段はぽやんとしている雰囲気の千尋ちゃんが、千尋ちゃんの声とは思えないぐらい、ドスが聞いた声で、ソルフィちゃんを威嚇した。

「・・・・・もう、分りきっているのでしょう?チヒロさん。自分の身についての事を。魔王を倒して、この国に凱旋し、国を挙げての祝勝パーティを行なわれた夜、貴女達2人は、王の手の者達によって寝込みに殺されました。そして、また寝ているお兄様に眠りが醒めない様にする封印をかけたのですわ。貴女達2人の魂を溶媒にして。ここはお兄様の夢の世界。お兄様が私達の世界での勇者である事を気づかぬよう、夢の世界の舞台はお兄様の世界が元になっています。そして、貴女達2人はお兄様の妹と従兄弟になりました。それは、貴女達2人の無意識な願望が妹と従兄弟にさせたのでしょうね。貴女達2人はお兄様と暮らせて幸せなのでしょうね。その幸せさがお兄様を夢へと縛り付けます。貴女達は、お兄様が目を覚まさない為の封印そのものなのですわ」

ソルフィちゃんは目を光らせて言った。、

「違う!」

千尋ちゃんが叫ぶと、千尋ちゃんの手には弓と矢が虚空から現れる、それらをソルフィちゃんに向けようとするのを僕はとっさに止める。

「駄目だ!!千尋ちゃん!」

「どうして・・・、あいつが居たら、私達、離れ離れになっちゃうんだよ・・・?それでも良いの・・・?お兄ちゃん・・・?」」

千尋ちゃんの血塗れの顔からは眼がうるうると湿っていた。

「お兄様・・・、お兄様が目を覚まさなかったら、ソルフィは寂しいですよ。・・・こちらへ来てください、どうか、ソルフィと元の世界は帰還しましょう。」

首だけになっているソルフィちゃんは懇願する様に言う。

「ソルフィちゃん・・・・・・寂しいならさ、ソルフィちゃんが寂しくなった時だけ、僕の世界に来れば良いじゃないか?それなら誰ともお別れせず、万事解決じゃないか」

そうなのである。無理して元の世界に戻る事も無いのでは?そりゃあ、あの王様は腹立つけど、そういう選択も出来るじゃないか。

「駄目です・・・。それでは、いつか、お兄様は死者の2人に魅入られ、永久に封印されてしまいます。まだ、お兄様の封印は完全じゃありません。だからソルフィが干渉する余地がありました。・・・・・・お2人が奥手な様で、本当にこれが幸いです・・・」

「奥手・・・2人共、奥手かあ・・・?寧ろ積極的な気がするけど。」

「積極的・・・?」

「そうだ、一緒に寝ようとか、お風呂入ろうとか、キスしようとか・・・」

セックスしようと迫られた事は言わないで置いた。

「・・・お、お兄さん、そこまではっきり言わなくても・・・」

千歳ちゃんは、血塗られた顔を真っ赤にして照れる。真っ赤っ赤だ。千尋ちゃんも同様に、「こんな時に何言い出してるのさ?」って感じの顔で僕を見ていた。顔は真っ赤にして。

「・・・積極的な事は、お2人がお兄様を封印する概念そのものである事とお2人の元々の願望でしょう。お兄様を完全に封印する方法は、死者の魂である、お2人が、お兄様の体内に冥界の伊吹を吹き込む事ですわ」

こほん、と咳をして、ソルフィちゃんは答えた。

「・・・冥界の伊吹・・・?」

僕が聞き返すと、ソルフィちゃんは、また咳をし、答える。

「・・・・・・そうですわ。有り体に言うと・・・キス及び、性行為等の、お2人の息や体液をお兄様の体内に入れる行為ですわ」

「「「えっ・・・!?」」」

ソルフィちゃんの答えに、僕ら3人は、素っ頓狂な声を上げてしまった。

「身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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