身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

81.「暗闇の中の階段をもう一歩踏みしめる。」

『今、この世界は魔王の手によって、人間は危機的な状況にある。どうか、魔王を倒して、この世界を救って欲しい。頼む・・・!!』

また、あのおっさんの声が聞こえた。

魔王・・・?。この世界を救う・・・?また、現実味の無いセリフだ。映画かゲームにでも聞いた様なセリフだ。

まったく、荒唐無稽なセリフ。・・・しかし、このセリフに僕は、不思議な馴染みの良さを感じていた。

不自然なセリフなのに、不自然さが感じられないのだ。

この違和感を思案していると、少女が手をくいくいと引っ張った。

「・・・分った。行くよ、行こう」

僕は、また一歩階段を上る。

『・・・分りました。異世界人の僕に特別な力があるというのなら、まあ、やるだけはやりましょう。・・・元の世界に戻る為にも』

と、冴えなさそうな青年の声が聞こえた。

この声は・・・僕自身の声だ。

そう、認知した途端、周りの闇が一瞬で払われた。

その場は・・・西洋風の豪華な部屋の中で、そして、その中には西洋風の甲冑を着た男が数人。

大きな、これまた豪華そうな椅子・・・玉座と形容していい、に座っている王冠被りと金ピカの刺繍の入った赤いマントの着ている、いかにも『王様』と言った風の壮年の男が居て、

そして、その王に対峙しているのは、その場にそぐわない、作業服のツナギ・・・そう、うちの会社で制服であるツナギを着た男・・・僕が立っていた。

「なあ・・・あれって・・・僕か・・・?」

少女に聞くと、ふっと微笑み、こくりと頷く。

どうして、僕は、こんな所で、王様みたいな奴と話しているんだ?それに、この風景は何だ?僕らが目の前に居るのに、

誰も意に介してない。

『うむ、では、さっそく魔王討伐の旅に出て貰いたい。これはワシからの選別だ』

と言って王は部下らしき者達から、何やら物を持ってこさせて、『僕』に渡した。

『・・・これは・・・ええと・・・地図・・・?と、金貨・・・?の入った袋に、重そうな剣・・・?』

それらを渡されて困惑する『僕』

『では、行け、勇者よ。魔王を倒すまで、この城に戻る事は許さぬ。元の世界に戻るには魔王を倒さなくてはならんぞ。この世界の民の為にもそなたの為にも

魔王を倒してくるのじゃ』

『えっえっえっ・・・!!ちょっと・・・!!??』

王が何だか無責任の事を僕に言った途端、周りの甲冑を着た衛兵らしき男達が僕の両腕を掴んで、部屋の外に追い出す。

「おいおい・・・世界を救う勇者に対して、塩対応過ぎないかあ・・・」

と呆れて、思わずぼやいてしまった。

ふと、僕の手を握る少女の手の握力が高まっているのに気づく。

少女の顔を見ると、苦虫を擦りつぶすかの様な表情で王を睨みつけていた。

「・・・大丈夫か・・・?」

僕がそう少女に聞くと

「・・・■いじょ■■・・・」

と微笑んで答えた。

・・・心なしか、少女の声が、何となく日本語として聞き取れる様な・・・今までの様な英語とロシア語と中国語と他諸々が合わさった様な意味不明の言葉じゃなかった気がした。・・・気がしただけかもしれないが。

その違和感を気のせいだろうと片付け、そして、僕は『僕』が追い出された部屋の外へと出て行く。

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