７８．「雨はざあざあ降る。」

その雨を見ながら、僕は思案していた。
この不思議な世界の事、千尋ちゃんと千歳ちゃんの事、そして・・・あの少女の事。
あの少女の目的は、一体、何だ？・・・それは、僕らを襲いはしたが、千尋ちゃんと千歳ちゃんだけで、僕には敵意は無く、
寧ろ、どこか、好意的な面もある様で、僕にキスをしようともしていた・・・何故・・・？
何故、あの少女は僕にだけ好意的なんだ？
思えば、僕は、千尋ちゃんと千歳ちゃんも僕に好意的だ。何故だ・・・？。
いつから、こんなにモテる様になった？僕は。
この3人の共通点は・・・3人とも現実の世界には存在してない事だ。
・・・・・・・3人の存在していない少女は、僕を取り合っているのか・・・？
それならば、現実でない存在してない少女達に取り合われる僕は、『現実的』なんだろうか？
・・・・・・・わからない・・・・・・・。
雨は、まだ、ざあざあ降り注いでいる。
その降り注いでいる雨も、雨に打たれている西洋風の住宅の数々も、この家も、椅子も机も壷も、千尋ちゃんと千歳ちゃんが寝ている
あのベッドも、全て、『非現実』なもので、現実的なものは、僕しか、ここには存在していないじゃないか・・・。
・・・・・・何かおかしなものに取り込まれているのかもしれないな。僕は。
それは、危険なものだろうか？わからない。
少なくとも、今のところは、可愛い妹分が二人増えたのと、おかしな少女に追い掛け回されているだけだ。
・・・何となくだが、この非現実的なおかしなものに生命の危険に晒される気配は無い感じがする。
少なくとも、この非現実には、殺意が感じないからだ。
この非現実な不思議は、何か自然現象とか超常現象ではなく、僕を狙って仕組まれている様な人為の様なものの様な感がある。
僕だけ狙う様に、僕の周囲だけ非現実が起こるなんて、おかしすぎる。
じゃあ、何故だ？どうして、僕を狙って非現実な事ばかり起きるんだ？
･・・・・・・・・・・・・・・・わからない。
わからないが、それも、また、あの少女に話してみればわかる事だろう。
あの、千尋ちゃんと千歳ちゃん同様に、僕にキスをしようとしてきた、あの少女に。
そう思うと、この普段の日常の世界とは違う、西洋風の異世界が怖くなくなってきた。
どうせ、この世界も、あの少女が仕組んだ世界なのだろう。
千尋ちゃんの寝息がこちらにも聞こえてきた。・・・・寝付くのが速すぎる・・・・。
恐らく、このベッドもあの少女が用意した罠なのかもしれない。
だったら、来るなら来い・・・と僕は体を力ませた。
そう力ませていると、こんこんと家のドアがノックされた。
僕は、仰天して、そのノックされた方を見る。
また、再度、ノックがされる。
・・・・誰だ・・・・？この城下町に、僕ら以外の誰かが居たのか？無人だったはずだ。
・・・・・・・いや、無人では無い。この世界に僕ら以外に居たのだ。そう、あの少女が・・・・。
鍵を掛けていなかった、ドアノブがゆっくりと周り、そして、ドアが開かれる。
開かれたのドアには・・・あの黒いローブに纏った、少女が居て・・・そして、僕と目が合った。