身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

50.「千歳ちゃん!!」

僕が制止する声より先に千歳ちゃんはゴーレムの群れの中に飛び込む。

千歳ちゃんがのぼり旗を大降りに横薙ぎすると、ゴーレムが三体、スパりと切れて倒れる。

さらに、横薙ぎ、横薙ぎ、縦払い、突き刺しと、ブンブンのぼり旗を振り回し、20体ぐらいのゴーレムがあっという間に斬り倒された。

「凄い!熱したナイフでバターの塊を切り込む様にゴーレムが斬れます!」

斬り込んでいる千歳ちゃんは、自分の力に興奮している様な声色だ。

斬り込んで、数分ぐらいしか経ってないのに、もう既に30体は倒してる。

「す、凄い・・・!」

自称従兄弟の活躍ぶりに、自称妹も感嘆の声を上げた。

ただ、ゴーレムの数は自称従兄弟が斬り捨てるゴーレムの数は微々たる数の様な有り様だ。

それでも、自称従兄弟は、バッサバッサとゴーレムを斬り捨てていく。

だが、ゴーレムは目の前だけに居る訳じゃないのだ。

「わっ・・・!来るな!」

自称妹は迫るゴーレムに向かって、オモチャ売り場にあるオモチャを投げつける。

非力な自称妹にオモチャを投げつけられても石の肉体を持ったゴーレムは意にも介さず歩みを進めてくる。

「あっちへ行け!」

僕はゴーレムにタックルをかました。

手前のゴーレムはスッ転んだ。

僕は無茶苦茶に立ってるゴーレムに体当たりをする。

2~3体の歩行を妨害するだけで、

大勢のゴーレムを押し留める訳が無い。

このゴーレムは相変わらず敵意がなく。僕には何か攻撃しようとせず、僕の存在を無視して、真っ直ぐゆっくり確実に、自称妹の元へ向かおうとする。

「ひっ!ひっっっっ!!来ないで!」

自称妹は、相変わらずそこら辺のオモチャを投げつける。ゴーレムには相変わらず通用していない。

「千尋ちゃん!逃げろ!」

「こっのーーー!」

『ズバリ!』と自称妹に近づきつつあるゴーレムを、自称従兄弟が一刀両断した。

「このこのこのこのー!!」

自称従兄弟が周りのゴーレムを斬り裂いてゆく。

「大丈夫ですか!?、私に任せて下さい!全部斬っちゃいます!」

そう言って自称従兄弟は、さらにゴーレムを斬っていった。

それでも僕らを包囲するゴーレムの数は減らない。

自称従兄弟は僕と自称妹に右からゴーレムが迫れば、右に向かいゴーレムを斬り、左からゴーレムが迫れば左に向かいゴーレムを斬り、前から来れば前へ、後ろから来れば後ろへと、僕らを守る為に右往左往に斬っていった。

自称従兄弟は頼もしかった。頼もしかったが。

「ゼェゼェ・・・まだ・・・まだまだ・・・!」

自称従兄弟の息はすっかり上がっていた。

それもそのはずだ。僕らの周りをぐるぐる回ってのぼり旗を振り回していたのだ、それは疲れるに決まっている。

「千歳ちゃん!後ろ!」

「ハッ!?」

疲れていた自称従兄弟の後ろに迫っていたゴーレムが自称従兄弟に殴りかかった。

「ゴハッ!」

腹を殴られて、その場で膝を落とす自称従兄弟。

「千歳ちゃん!!」

僕は千歳ちゃんに駆け寄ろうとしたが、僕が自称妹に向かうゴーレムを足止めしなければ、自称妹にゴーレムが殺到するだろう。

「来ないで下さい!」

自身の腹を殴ったゴーレムを斬って、自称従兄弟は叫ぶ。

「私なら大丈夫ですから・・・大丈・・・」

僕らの会話を横槍して、ゴーレムが自称従兄弟の顔面を殴った。

「ガッ!」

自称従兄弟は倒れて、ゴーレムはその上に覆い被さろうとする。

「千歳さん!」

自称妹が悲鳴の様に自称従兄弟の名を呼び、そして、その辺りのオモチャをゴーレムに投げつけるも、ゴーレムには効かない。

「ええい!くそっ!どけよ!」

僕は、自称妹に近づくゴーレムを、やっとの事で、何体か押し返し、自称従兄弟を助けに向かった。

しかし、自称従兄弟はゴーレムに囲まれつつあり、ゴーレムの壁を僕は掻き分けられないでいた。

「このっ!このっ!このっ!このっ!」

自称従兄弟はゴーレムに下敷きにされながらも、のぼり旗を振り回し、抵抗する。

ゴーレムが何体か裂ける。

だが、

「あっ!ああああああ!!」

自称従兄弟の苦痛に満ちた叫び声が聞こえた。

ゴーレムの隙間から様子を見ると、数体のゴーレムに下敷きにされた自称従兄弟が、のぼりを持った手を別のゴーレムに押さえつけられ、さらに別のゴーレムが左足を両手で万力の様に締め付けていた。

「あっぐあ!足が!左足が・・・!砕ける!」

苦痛に満ちた悲鳴をただただ上げる自称従兄弟。

「やめろっ!やめろおおおお!」

僕はかなり情けない声を上げていた。

誰かの為にこんな声を上げるのは初めてだ。

「やめて!千歳さんを離して!」

後ろから自称従兄弟の声も聞こえる。

ようやく自称従兄弟の元へやって来て、自称従兄弟からゴーレムを引き剥がそうとするが一向に引き剥がせない。

「もう良いんです!お兄さん!千尋さんと逃げて下さい!」

自称従兄弟が異を決した様に言った。

「なっ!?。そんなんじゃ、君は!?」

「良いんです!この一週間、お兄さんと暮らせて楽しかった。お兄さんはお兄さんじゃないけど、それでも・・・、それに、私、元々お兄さんと千尋さんが二人きりの時にお邪魔した身ですから、だから良いんです!。逃げて下さい。」

僕を見ている自称従兄弟は目は決意に満ち、凛々しく、口元はさわやかに微笑み、表情に恐怖は混じっていなかった。

ただの高校生のはずだが、その様子はまるで決死の戦いの前の戦士の様に感じた。

「そんなじゃ、ダメ!そんなじゃ!!」

未だに自称妹はゴーレムに必死で物を投げている。

非力な彼女なりの精一杯の抵抗だろう。

しかし、そんな自称従兄弟にもゴーレムは少しずつ近づいて来る。

「どうして!?私にも千歳さんみたいに、何か力があれば・・・!」

「良いんです、早くお兄さんと一緒に逃げて下さい。・・・うあっ!」

ゴーレムが自称従兄弟の頭を両手で掴んだ。

「ああっ!ぁがっ!」

自称従兄弟の足を絞める様に自称従兄弟の頭を絞め潰そうとする。

「やめてええええ!」

「千歳ちゃん!・・・くそっ!」

もう駄目か?駄目なのか!?

何か良い妙案を考えようもまったく思い付かない。

「どうして!何で私には何も無いの!」

自称妹は特に効果も無いが、その辺りの物を投げつけつつ、絶望の声を呻いた。

「私にも、何かあれば・・・私にも・・・」

自分には無い能力の無さを呪う自称妹。しかし、悲しいかな。自称従兄弟の様な都合の良い能力なんて、そうそう発現なんてしない。自称妹が、さらなる物をゴーレムにぶつけようとオモチャの銃を手にした。

その突如、青い光が眩く、辺りを覆った。

「身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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