身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

48.あのゴーレムがキレイさっぱり消えた後、二人と協議して、またあのゴーレムに襲ってくるかもしれないので、帰ろう、という事になった。

「残念ですー。折角のお兄さんとの遠足だったのに」

「そう言うな。何でも安全第一だ。それに、ふつーにピクニックをするより、エキサイティングな体験が出来ただろう?」

「えー、普通にお兄さんとピクニックしたかったです!」

「はっはっはっ!そうか?僕は久々に体を動かして・・・、おー・・・いてて。」

あのゴーレムと一緒に暴れた時のすり傷が今頃になって痛んできた。

「大丈夫?お兄ちゃん。」

自称妹は心配そうに僕の顔を覗き込む。

「ああ、大丈夫大丈夫。それよりこの帰りだけどさ」

何か飯食ってから帰らないかい?何か腹減ってきてさ」

体も動かしたし、良い加減に腹も減って来たのだ。

「うーん、私も何かお腹空いてきちゃいました。」

「私も小腹空いたかな。久々に走ったし。」

満場一致で何か食べに行く事に決まった。

「じゃあ、ここに来る途中の駅で下車して、そこのイオンに入ろうか?フードコートで何か食べよう。」

僕がそう提案すると、

「うん!(はい!)」

と元気良く返事が帰った。

あの公園の駅から数駅離れてイオンに着いた。

「おお!イオン!我ら庶民の約束された楽園のイオンよ!」

「何ですか?それ?」

「くすくす・・・。んもう、お兄ちゃん、イオンに来る度、そればっかり。」

「えっ?君の知る兄貴もイオン信者だったのか?」

「うん、イオンに来た時は、いつもそればっかり言うんだよ。」

痛い兄貴だなあ。

僕らは早速フードコートに行って飯にありつく事にした。

「今日は客が少なくて空いてて良いなあ、さあ、好きなの選んだら良いさ」

「えっと、じゃあ、私、お子様セットで・・・!」

「お子様セットって・・・千尋ちゃん、高校生になってまで、そんなんで良いのか?」

「良いんだよー。私、少食だから。ちょうど良い量だよ。それに色々入ってるから色んな物食べれるしね。」

にひひと微笑んで自称妹は言った。

「じゃあ、私はチョコチップアイスクリーム盛り蕎麦お願いします!」

と、自称従兄弟が胸を張り上げて注文した。

「何そのゲテ物は・・・?」

「今流行ってるアイスクリーム盛り蕎麦ですよ。知らないんです?」

「知るわけないし、そんなもの流行ってる訳無いじゃないか。」

「流行ってますよ、周りを見渡してみて下さい。」

自称従兄弟にそう言われて周りを見渡してみると、周囲の客はアイスクリームが載った盛り蕎麦を食べている。

「ほらね」

自称従兄弟はふんすと得意げに鼻を鳴らした。

今の若者はあんなゲテ物を食べるのが流行りなのか。流行を理解できなくなったのは老化した証かな?まだ若いままで居たいんだが。「まあ、とにかく食べたいのは分かったから、頼んで来よう」

僕はカウンターに注文しに行った。

流石に3食も注文すると驚かれ、周囲の客も怪訝な顔をしていたが、飯が盛られた食器トレーを、席の二人の元に置くと、そういった雰囲気は消えた。

二人が食事を口にした事で、その調理物そのものが認識されない存在になったのだろう。

「旨い旨い!」

自称従兄弟はバクバクとゲテ物を貪っていく。

「美味しい美味しい」

自称妹もちまちまお子様ランチを食べていた。

「よー食べれるなあ、そんなアイスクリーム蕎麦なんて」

「アイスクリームの甘さと蕎麦のチュルチュル感がたまんないんですよ!」

自称従兄弟は興奮して食べてる。

「そんなに旨いのか?」

「はい!」

「なら、一口貰って良いか?」

自称従兄弟があまりに旨そうに食べるものだから、少し興味が湧いてきた。

「えっ?良いですよ。どうぞ!」

自称従兄弟はにやついた顔で蕎麦を摘まんだ箸を差し出して来た。

これはあれか、間接キスでもさせようというのか?

僕は差し出された蕎麦をそのまま口に近づけて食べた。

「・・・不味い・・・。最近の学生さんは本当に好き好んでこんなの食べてるの?」

「ふあ!ふあああ!お兄さん!き、キス!間接キス!!」

自称従兄弟の顔は烈火の様に赤く染まった。

「君が口つけた蕎麦を差し出したんだろう?」

「ええ、そうなんですけど・・・。いやあ、私、その、お嫁に行けなくなりました」

お嫁に行けないなんて、大げさな。

「だから責任取って下さいね!」

と自称従兄弟はがっしり僕の腕を掴んだ。

「はいはい、考えとくよ」

「はい、前向きな回答を期待してます!」

ニッコニコな笑みの自称従兄弟。相当押しが強いタイプである。・・・僕のどの辺に惚れてるのか?。

そう考えていると横からちょいちょいと指でつつかれた。

振り向いてみると、自称妹が顔を膨らませながら、お子様ランチのエビフライを箸で摘まんで、こちらに差し出してる。

「私のも食べて?お兄ちゃん。」

口元はにっこり笑ってるのに目は笑ってなかった。

「あ、ああ、有り難うな。千尋ちゃん」

僕は、有り難く、エビフライを頂戴した。

「うわあ・・・っ!わああ・・・!」

自称妹は驚いた様に目を白黒させて顔を赤く染め上げている。

いや、君が食べろと言ったんだから食べたんだよ?。

「もう一口いかがですか?」

自称従兄弟は僕の目の前に追加のアイスクリーム盛り蕎麦を差し出す。

「ああーっ!私も!私のも!食べて、お兄ちゃん!」

そう言って自称妹もお子様ランチからカレーライスを掬って、僕の口元に運ぼうとする。

「ほらほら、遠慮しない下さい、お兄さん」

「食べて!私のも食べて!」

僕の口元で二人の唾液が混じった箸が交差する。

「ちょっと勘弁してくれ、ここで騒いだら他のお客に不審に思われるだろ」

そう言って、辺りを見渡してみると、周りの客は・・・

「あれっ・・・!誰も居ない!」

あれだけ人で賑わっていた、このフードコートは、お客所か、店員まで、僕ら以外、人っ子一人存在していなかった。

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