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身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

44.「あー・・・ははは、謝らないで下さい。私、気にしてないですから」

「そうだよ。お兄ちゃん。私、いつも外に干してる時とか、お兄ちゃんに下着見られてるから気にしないでね」

下着を見て、平謝りした僕に二人は慰めてくれた、だが、顔は二人とも真っ赤である。

「お兄さん、まだ顔真っ赤ですね。その・・・それだけ喜んでくれるなら、見られた私としては嬉しいなって・・・。だから、もう謝らないで下さい・・・。ねっ・・・?」

僕の顔も真っ赤か。ていうか、中々な問題発言をさらっと言ってのけたぞ、この子。

「そ、そうか、じゃあ気にしないでおこうな。あははは!」

「あははは!」

「あっはははは!」

3人で朗らかに笑った。

一頻り笑い終わった後、僕らはこの公園を歩き回る事にした。

「うわー、この道、結構生い茂ってるねー。」

雑木林の中、石畳で整備された道を歩いていた。

「そのお陰で影になってて大分涼しいな。ここ。」

「・・・こうして雑木林の中を歩いていると、昔、お兄さんとセミを捕まえに言った時の事を思い出します。」

自称従兄弟は思い出に浸る様に言った。

「私もお兄ちゃんとセミ捕まえに行ったなー。」

自称妹も思い出に浸っている様だった。

「一人でセミばかり捕まえる日々だったなー」

僕も思い出に浸った。

ガキの頃、近くに同い年の子が居なかったから一人でセミを取っていたのだ。

「私とお兄さんで虫カゴに隙間が無くなるぐらい捕まえたんですよ。そしたら、半分ぐらいセミが死んじゃって・・・それ以来取りすぎはダメ絶対と心に誓いました。」

自称従兄弟はてへへと微笑んだ。

「私の時は私がお兄ちゃんにセミ取り行こうよと駄々こねて、行って、私は一匹も取れなくて、結局お兄ちゃんに取って貰ってたなあ。・・・お兄ちゃんとどこかに行きたかっただけだからそれで良かったのだけど」

二人ともそれぞれ自分の思い出を語った。

「それぞれに思い出があるのに、まったく噛み合わないのは不思議なもんだな」

「そうだねえ」

「そうですねえ」

僕の呟きに二人は頷く。

「どっちかが本当の思い出で、どっちかが偽物の思い出って事かもしれませんね。・・・もしかしたら私達誰一人本当の思い出には持ち合わせてないかも。」

「・・・え・・・そんな・・・」

自称従兄弟がぽつりと漏らした一言に自称妹がは顔を青ざめた。

「私・・・、それは嫌だなあ。私の記憶が偽物なのも・・・千歳さんの記憶が違うのも・・・。」

自称妹は意外な事を言った。相手の方の記憶が偽物なら、大好きなお兄ちゃんと一緒になれる事に正当性が増して、自分にとって都合良いだろうに。

しかし彼女はそう思わなかった。

「そうですね、白黒つくのもそれはちょっと寂しいですね」

自称従兄弟も頷いた。

そうなのだ。もう僕らはお互いの事を知り得てしまった。僕らの関係を結び付くのに「妹」とか「従兄弟」とかの関係性は十分条件では無くなったのだ。

「・・・まあ、どちらかが偽物でも良いじゃないか。僕にとっては君達の記憶は無いのだけど、今、こうやって一緒に居るのだし。それで良いじゃないか。一緒に居る方が僕は楽しい。」

そう二人に言ってやった。

すると二人は目を見開き、そして顔を真っ赤に赤らめ、そして込み上げる様に笑みを浮かばせて

「そうですよね、そうですよね。それが良いですよね!」

「お兄ちゃんはずっと私のお兄ちゃんだから、ずっとずっと!」

「お兄さんもずっと私にとってお兄さんです!」

そう言って二人は僕に抱きついてきた。

「おい!こんな外で抱きつかないでくれ!」

「いいじゃないですか。私達の姿は誰にも見えませんし、それに辺りに誰も居ませんよ。」

確かにこの雑木林の中、僕ら以外だれも居ないのだが。

「お兄ちゃん・・・ずっと私のお兄ちゃんだからね!」

「私もです!ずっとお兄さんは私のお兄さんです!」

二人は僕に抱きつきながら潤んだ目で僕を見ている。

二人が来る前までは僕の生活は無味乾燥としたものだった。

友人も居るし両親も居るが、この二人程自分を必要としてくれる人は居なかったと思う。

だから二人が来て以来鬱陶しい半分、僕の生活に充足感を感じていたんだと思う。

自分の事をここまで必要としていてくれるこの二人に。

僕は二人を抱き締め返してやった。

「ああ、勿論だ。千尋ちゃんも千歳ちゃんも、僕の妹で従兄弟だ。仮に二人が妹でも従兄弟じゃなくても、ずっとずっと。」

我ながら臭いと思ったセリフを吐いてみた。

二人も僕に臭いセリフを吐いたのだ。吐き返しても良いだろう。

「お兄ちゃん・・・!」

「お兄さん・・・!」

二人は少し呆けた顔をして、また僕に先より強く強く抱き返した。

「有り難うお兄ちゃん!ずっと一緒!ずっとずっとだよ!」

「今のは嘘だと言っても、聞きませんからね!ずっと一緒です!お兄さん!」

僕の臭いセリフに二人は歓極まってるらしい。ただただ僕を抱き締めるばかりだ。

いや、しかし、自分にゾッコンの若い娘さんが出来るなんて、こんな都合の良いことがあってたまるのだろうか?たまらないだろう。しかし、この胸の中に感じる二人の体温は本物だ。都合良過ぎるとはいえ、せっかく手に出来た都合の良いものを都合が良いからと言って手放す程自虐的な誠実さを持ち合わさなくても良いだろう。

僕もただ、二人をただ、抱き締め返すばかりだった・・・。

『ガサッ!』

突然雑木林の奥から葉が擦れる音がした。

「ひぇっ!何っ!。」

自称妹はビクついて驚きの声を上げる。

「何でも無いですよ、ただの他の公園に来ている人ですよ。私達の事は見えないんだから気にしないでおきましょう」

自称従兄弟は少し苛ついた口調で言った。

ハグを邪魔されて苛ついてるのか?

「いや、そうなったら僕は空気を抱いている変質者だから。離れてな。」

「ちぇー・・・」

「う、うん・・・」

二人は名残惜しそうに僕から離れた。

その雑木林の奥から聞こえる葉が擦れる音はだんだんとこちらに近づいてくる。

「変ですね。普通の公園に来ている人はこの石畳の道を歩いて来るだろうに、何で草木が生い茂っている方を歩いてるのでしょう?」

自称従兄弟は少し不審げに言った。

「変だね。確かに。」

自称妹も頷く。

その間にも葉が擦れる音はこちらに近づいている。

「きっと普通の道を歩きたくない物好きな人なんだろう、ははは。」

僕は笑い飛ばしてやった。

雑木林の奥から葉擦れ音の主が現れた。

その主の風貌は、・・・身長が二メートルはある、ふくよかな体型の・・・全身石で出来た様な材質と凹凸のある服を着た、一つ目の人間・・・?人形・・・?の様な何かだった。

          

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