異世界にいったったwwwww

あれ

外伝18





 「けど、どうしたんだ突然」


 先程の熱弁に改めてカイトは疑問を呈する。


 倒木のベンチの表皮を毟りながらローアは「えっ?」と小声で反応した。それから、カイトの問いかけを飲み込むようにしてからいう。


「ぼく達も、最初は異邦人だった。元々はずーっと南方の生まれなんだ。だけど、国が戦争で……それで、宗教指導者を連続して処刑される事もあったんだ。ぼく達の両親もそれで殺されて、難を逃れたのは子供だったぼく達だけ。それで、ずっと北を目指して幾つも国境を抜けた。勿論、宝具を抱えてね。それで、宿屋にいた人たちの噂話を聞きつけてこの村に来た。……この村でも長年小競り合いがあって、《宝具》所持の司祭が亡くなったんだって――。あんまり、世間では宝具持ちの司祭はいないからね。それに、世間ではどれほど重要なアイテムかって事も伏せられているから、単なる司祭を求めているようにしか見えないらしい。でも、実際は違う。ぼく達兄妹が到着した時、この村には《宝具》を奪われて司祭がいない。つまり、周囲のどこかが《宝具》を持った状態でいるって訳。万が一、宝具を使用できる人間がいればそれこそ終わりだからね。そんな中、都合のいいことにぼく達が転がり込んできた……ってワケ」




 「なるほど。それで……」
 彼女ローアの言いたい部分は大体理解できた。
 つまり、どこでも新参者は苦労する。ムラ社会や共同体に突然現れた異分子は特に迫害を受ける。それがどういう内容なのかは今更説明するまでもないだろう。だから、人間は自然と社会に対し妥協と同調を学ぶ。あのとき、カーリスの覗かせた「私も〝役割〟がある――」と云った真意を知った。
 「それでも、俺がここに長く滞在することはローア達にとって不都合とか色々あるだろ? そう簡単には説得できないだろ?」
 「……う、うん。まぁ。そう。だけど、全く無理ってワケじゃないし」
 カイトは仮装のマスクのレンズ越しにローアの瞳を見つめる。
 「申し出は有難いけど、けど無理だ。お前達にまで迷惑かけてまでここに残る事がいいことだとは思えない。――多分、俺の心の中はその《宝具》で全部見られただろうから今更言い繕える訳もねーけど。だけど、俺なりにやり方を考えてみるさ。それに旅人なんだ。この村に戻る事だってあるかもしれないだろ?」
 諭すようにカイトはいう。喋りながら自分の心象の変化に戸惑った。だが、それ以上に呆気に取られているローアの方が徐々にカイトの意見を深く受け止めていた。
「うん。そうだね。分かった。ぼく、変なこと言っちゃったみたいだね――」
 寂しそうな雰囲気を口元に残しながら微笑する。
「いや。俺自身がどうしたいか何となく道標ができた気がする。サンキュー」
 カイトはわざと気だるげに肩をすくめてみせる。
 ローアも苦笑いしながら、肩をすくめる。
 『おーい、ローア、どこだ? おーい』
 カーリスの叫ぶ声が聞えた。恐らく出番が近いのだろう。
 「あ、時間そろそろ近い。じゃあ、カイトまた後で」
 「おう。じゃあな」
 去っていく少女の後ろ姿へ軽く手を振る。人の影に紛れ消えた後、カイトは続々と中央広場に集う仮装した人垣に視線を戻していく。
 華やかな雰囲気が山間部の村には似つかわしくないように思われたが、しかし、不思議と民族楽器の演奏が始まってからは寒々しい山と闇に調和した厳かな祭りの雰囲気が漂い出す。



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