異世界にいったったwwwww

あれ

外伝13







  「この場所は本格的な冬になると氷柱で閉ざされるから、今のうちぐらいしか入れないんだよ」ローアは白い息を吐きマントの尖った襟の裡から呟いた。




  天は鉛色をして鈍く垂れ込んだ雲層が幾つも重なって、太陽を遮る。




  






  白洞窟の祠――






  俺は隣の少女が指差す方角に意識をやる。狂った笛が吹き鳴らされるように、耳元を掠めていく。うっすら積もった雪は昨日の夜に降ったらしい。動物性の革の靴を履き、半径4メートルの入口の穴は暗いゼリー状のように蟠った闇に無意識に魅せられた。




 俺たちは、ローアたちの家を出、1時間ほど山道を歩いてくることになった。俺の躰は健康体そのもので異変がない。それだけでも、あの宝具の妙な力を実感した。




  斜面の道を息を喘がせて登ったはずなのに、ローアは全く息を切らしていない。




 「なんでこんな所に俺を連れてきた?」




 「ん~? なんで? ごめん、兄さんにここに連れてくるように言われたから……」




 改めて彼女は考える仕草で少し俯いた。




 「そういやぁ、あの宝具ってどうやって使用するんだ?」




 「またその質問?」と言いたげに眉を顰め、ローアは小さく嘆息する。




 「だから、教えられないんだよ。秘術の部類でさ――」




 と、言葉が途切れローアの足が二三歩後退する。




 「ど、どうした?」俺は自分より一回りも小さい少女に問いかけた。




 「しっ、黙って……何かいるッ」


 急に俺の胸ぐらを掴んでローアは機敏に周囲へ警戒の意識を張り巡らし、眼球が左右上下に運動する。緑の輝きが残光でも残すように瞳が流れ、流星のようにみえた。






 ローアは茶色のマントの懐から鋭い反射を放つモノを取り出しながら「ねぇ、誰?」と叫ぶ。周囲の谷間に反響を与え、数メートル後ろに生えた枯れ木の枝上に載った残雪が落ちる。






 俺は喉の粘膜が乾いてくるのを感じた。イヤな気分が湧いてくる、口内が酸っぱい唾で満ちてくる。








 ……静寂しじまが薄暗いひるの空の下に拡がり、自然耳に神経が集中した。






 『……ッはぁ、ッ、はぁ』




 誰かの呼吸音が聞こえる。だが、それは不安と緊張を伴う呼吸だった。






 ローアは人差し指を弾くようにして短剣を一直線に前方の緩やかな崖の斜面に茂る陰に飛ばした。「ギャ」と短い悲鳴があがった。










 くるり、と厳しい岩肌を転がって小柄な四足の狼のような獣の腹に柄が刺さっていた。






 「獣? 誰か別の……人間の気配がした気が……」怪訝そうにローアは口の端を歪め困惑する。




 俺は前へ足を踏み出して肩を並べる。

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