異世界にいったったwwwww

あれ

大河

中原の情勢について語ろうと思う。
秋口から始まった戦争は初冬の時期にまでもつれ込んだ。通常、秋口といえば農村部にとっては作物の収穫時期である。にも関わらず敢えてこの時期の戦争にしたのは幾つか理由があるとされている。まず第一、農村部からの徴兵が難しくなる。第二、作物が仮に市場で流通が減った場合、都市国家での反発が強くなること。


それらを見越した上で、ガルノスは三年単位で戦争準備に明け暮れた。そして、今それが結実しようとしている。まず、常備軍並びに傭兵、さらに遠州での敗残兵の吸収により三万弱の常備軍が創設可能となった。


それらを動員し、次々と中原を牛耳るとし国家の属州を陥落させた。破竹の勢いに乗って今度は天空の玉座という、嘗てゴールド王朝で最も攻略の難しいとされた城の周辺を囲う砦郡を攻撃していた。
が、砦に着く前にまずこの地域一帯には、幾筋もひろがる河川とそれに架かる橋を渡り攻撃する必要があった。俄にガルノス軍の攻勢は鈍った。またパジャの直轄領ということもあり、最精鋭軍が守りを固めていた。さらに、北方の賢王ブリアン軍の強襲が重なり、ジリジリと敗北の色が濃くなっていた。


当事者のガルノス自身、アーロンという国主の内戦の方角へと向かい、現在主君不在で戦線を維持していた。そのガルノス軍はひとえに名将勇将揃いの騎士団でなければ到底不可能であった。だが、その内部は常に不和で濁り、膠着した戦線で殺伐とした空気をつくっていた。
つまり、現在中原の二極勢力は次のとおりである。


ガルノス軍
三〇〇〇〇、更にアーロンや播国の増援を見込んで四〇〇〇〇ほど――


連合軍
パジャ精鋭軍一五〇〇〇、常備軍三〇〇〇〇・北方軍四〇〇〇〇――これに加え、中原諸国の旧都市国家会議参加国の数国を含めると凡そ総勢一二〇〇〇〇となった。


しかし、現在確認されている資料によると初冬の第一週終了頃に戦線に大きな動きがあった。両者の大規模な激突は間近に迫っていた。



海と違い潮の流れを気にせず、また一定の流れに沿うだけでよいから案外操舵は簡単だと考えていた海賊の男たちは、しかし、全く慣れない作業に辟易としていた。


川幅十四キロにも及ぶ大河の遡上は今日で五日目になる。出発当初こそ不安であったが海よりは事故が少ないことに安堵するグリア。彼の胸中は常に危険と暴発の間を綱渡りしているような状況だった。


「まず、ヤーグ村という場所を拠点にする。商会にも置いてきた書類でそう書いてきた。隣接する村々も軒並み中立地帯という情報だ。そこから、火槍を含めた物資をガルノスの軍勢へと届ける。これでいいか?」
確認のために船員以下、河川船舶に乗り合わせた連中を集め甲板上で伝える。夕刻であり、粘着質な水を掻き混ぜる櫂の音以外は何も無い。男たちは静かな興奮と不安と冒険心でグリアの言葉を聴いた。


両岸には杉木や苔むした太い梢の樹木の群立が眺められた。シン、と青い空気は肌を針で刺すようで、夜の闇に次第に呑まれる樹木たち。明日の明朝、村に到着する。俄に信じ難い事だが、こうも易々と中原に至るとは考えられなかった。



深夜。
「大将、起きてください」
船員の一人が寝静まったハンモックの一つにひそひそと囁く。
「――どうした?」
眠い目を擦りながらグリアはゆっくりと体を起こす。
「検問船の灯りが見えました」
やはりきたか、という半ば確信を持ちながらグリアは急いで身支度を済ませ、甲板へと登った。



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