異世界にいったったwwwww
出発にむけて ラスト → 出発にむけて4
……定期礼拝を告げる漆喰壁の鐘楼から金属質の音色が幾重も鳴る。住民はこの鐘を聴く度、太古の昔から時を刻んでいるようにも思われた。しかし、現在、家屋から立ち上る煤煙や、屋根を燃やす火炎の強烈な舌が酷く視界を否応なく塞ぎ、教会周辺は非日常性の印象を与えた。やがて、糠雨が降り出す。
中心市街から教会に連なる道の両脇に4メートルの石像が整然と数体並んでいた。この内或る一体女神を象った石像……この像の頬は白磁器の様で、窪んだ眼窩からからポタリ、と黒い涙を流している――
〈郵便基地〉
本来、この場所は商業エリアとして発達する予定はなかった。つい30年前、陸路の価格均衡を保持する為、或はバザールの役割を分担するためにこの地は瞬く間に発展した。
真希は細やかな空気の黒霧の裡を鼻と口を塞ぎ歩く。目前を中腰に屈んで進むグリアを追うように足音を揃えた。幾つも崩壊しかかった壁や建物の蔭に隠れながら2人は通用門を目指す。
煙に目を細めながら真希は、
「グリアさんはこれからどうするの?」真希は声を潜め、尋ねる。「――え?」壁外の喧噪によって聞き取りにくいらしい。
「これから、どうするの?」強い口調で言い直した。
ああ、と無言で肯いたグリアは小脇に抱えた小さな郵便基地の地図を真希に渡した。地図には赤い丸で乱雑な文字が躍っている。意味は分かりかねるが大体彼の行動を悟った。真希は尻ポケットからボールペンを取り出し、自分の進路となるルートを記した。それをグリアに手渡す。
グリアは不安そうに眉を顰める。
「――壮一とは落ち合わなくて平気なのか?」
彼はどうやら真希を心配して壮一やザルと合流することを促しているらしい。しかし、現状がよく分からない間は、急がねばならない。まさに時間との闘いとなる。
「外に出るまで、安全な処までは俺が付いていく。それでいいな? しかし、本当に――」
間を入れず、
「大丈夫です。あの殺しても死ななそうなお父さんとザルさんがいるんだから……それにあの子(少年)もいるけど、でもヘンな信頼感があるんです。」
茶化すように語尾が上がった。発言した自分でも明るく振る舞おうとするのが自覚された。念を押すように「本当に、大丈夫です……」付け加えた。
グリアは唯、同意するように無言になり、口端を開き「わかった」と呟く。
2
用水路と二俣交差路のような地下道に行くため、グリアは瓦礫に埋まった排水用格子を引きはがした。異臭はしたが、致し方ない。グリアは真希の表情に笑った。
「あの排水工事の経験が俺はここで生きたぞ!」
胸を張っている。まるで子供のようだった。
壁の外から飛んでくる砲弾が炸裂し、家屋、連なる商会、噴水のある広場、教会……全てを破壊してしまった。火炎、煤煙、人の悲鳴。それらの経過はまるで淡々とした映画フィルムのように断片的に破壊活動が進行している。
一度街の様子を振り返り、真希は意を決したように半ば朽ちかけた石階段を降りた。
構内は足音を幾つも反響させる。すぐ傍には下水が流れており、右手の湿った壁を手で沿わせながら屈んで進んでゆく。額や膝に水滴が落ちる。
幅の狭い路を踏みながら、あと数キロゆくのだろうかと真希は不安になった。長い時間光がないと気が持たない。唯一の灯りといえばペンライトが服のポケットに入っていた。それを先頭を行くグリアに譲った。小さな汚水の洞穴に鉄格子から漏れる斜光が時折差し込む。それに闇に慣れた目が痛くなり、目じりをくしゃくしゃに皺を溜める。
「真希、もうそろそろだぞ!」
左手を掴み、グリアは足早に小走りをした。
3
「……っ、眩しい」
眩惑されそうなほどの地上の薄い粉っぽい光がキツイ。手庇で遮りながら少しずつ階段をのぼった。周囲はなだらかな丘陵地帯や欅や樺の樹木が乱立しており、その葉が騒がしかった。
「ウム、ここに敵はいないな。」
剣を左右に彷徨わせながらグリアはやがて鞘に戻しす。
真希は自らの服に付着いした異臭がしないだろうか、と不安を抱えながら袖口やらなにやらを嗅ぐ。
「真希」
「……はっ、はい!?」
突然の声に飛び上がり、戸惑っているとグリアが彼女の両肩に再び分厚い掌を載せる。
「この壁を少し沿って進み、それから斜め左方向へ進め。バザールに辿り着く。だが、間違えるなよ。真希は強いが、しかし、個人の力には限りがある。今の真希はどうしても過信しているようにしか見えない。だから、その……また会おう。」
「はいっ!」
強い意思の瞳と瞳がぶつかり合う。
「――じゃあ」
そういうと、グリアは真希とは反対の進路へと夢中で走り出した。真希は数秒その背中を見詰めたが、やがて自分の進む方向へと筋肉痛の肢を動かした。
中心市街から教会に連なる道の両脇に4メートルの石像が整然と数体並んでいた。この内或る一体女神を象った石像……この像の頬は白磁器の様で、窪んだ眼窩からからポタリ、と黒い涙を流している――
〈郵便基地〉
本来、この場所は商業エリアとして発達する予定はなかった。つい30年前、陸路の価格均衡を保持する為、或はバザールの役割を分担するためにこの地は瞬く間に発展した。
真希は細やかな空気の黒霧の裡を鼻と口を塞ぎ歩く。目前を中腰に屈んで進むグリアを追うように足音を揃えた。幾つも崩壊しかかった壁や建物の蔭に隠れながら2人は通用門を目指す。
煙に目を細めながら真希は、
「グリアさんはこれからどうするの?」真希は声を潜め、尋ねる。「――え?」壁外の喧噪によって聞き取りにくいらしい。
「これから、どうするの?」強い口調で言い直した。
ああ、と無言で肯いたグリアは小脇に抱えた小さな郵便基地の地図を真希に渡した。地図には赤い丸で乱雑な文字が躍っている。意味は分かりかねるが大体彼の行動を悟った。真希は尻ポケットからボールペンを取り出し、自分の進路となるルートを記した。それをグリアに手渡す。
グリアは不安そうに眉を顰める。
「――壮一とは落ち合わなくて平気なのか?」
彼はどうやら真希を心配して壮一やザルと合流することを促しているらしい。しかし、現状がよく分からない間は、急がねばならない。まさに時間との闘いとなる。
「外に出るまで、安全な処までは俺が付いていく。それでいいな? しかし、本当に――」
間を入れず、
「大丈夫です。あの殺しても死ななそうなお父さんとザルさんがいるんだから……それにあの子(少年)もいるけど、でもヘンな信頼感があるんです。」
茶化すように語尾が上がった。発言した自分でも明るく振る舞おうとするのが自覚された。念を押すように「本当に、大丈夫です……」付け加えた。
グリアは唯、同意するように無言になり、口端を開き「わかった」と呟く。
2
用水路と二俣交差路のような地下道に行くため、グリアは瓦礫に埋まった排水用格子を引きはがした。異臭はしたが、致し方ない。グリアは真希の表情に笑った。
「あの排水工事の経験が俺はここで生きたぞ!」
胸を張っている。まるで子供のようだった。
壁の外から飛んでくる砲弾が炸裂し、家屋、連なる商会、噴水のある広場、教会……全てを破壊してしまった。火炎、煤煙、人の悲鳴。それらの経過はまるで淡々とした映画フィルムのように断片的に破壊活動が進行している。
一度街の様子を振り返り、真希は意を決したように半ば朽ちかけた石階段を降りた。
構内は足音を幾つも反響させる。すぐ傍には下水が流れており、右手の湿った壁を手で沿わせながら屈んで進んでゆく。額や膝に水滴が落ちる。
幅の狭い路を踏みながら、あと数キロゆくのだろうかと真希は不安になった。長い時間光がないと気が持たない。唯一の灯りといえばペンライトが服のポケットに入っていた。それを先頭を行くグリアに譲った。小さな汚水の洞穴に鉄格子から漏れる斜光が時折差し込む。それに闇に慣れた目が痛くなり、目じりをくしゃくしゃに皺を溜める。
「真希、もうそろそろだぞ!」
左手を掴み、グリアは足早に小走りをした。
3
「……っ、眩しい」
眩惑されそうなほどの地上の薄い粉っぽい光がキツイ。手庇で遮りながら少しずつ階段をのぼった。周囲はなだらかな丘陵地帯や欅や樺の樹木が乱立しており、その葉が騒がしかった。
「ウム、ここに敵はいないな。」
剣を左右に彷徨わせながらグリアはやがて鞘に戻しす。
真希は自らの服に付着いした異臭がしないだろうか、と不安を抱えながら袖口やらなにやらを嗅ぐ。
「真希」
「……はっ、はい!?」
突然の声に飛び上がり、戸惑っているとグリアが彼女の両肩に再び分厚い掌を載せる。
「この壁を少し沿って進み、それから斜め左方向へ進め。バザールに辿り着く。だが、間違えるなよ。真希は強いが、しかし、個人の力には限りがある。今の真希はどうしても過信しているようにしか見えない。だから、その……また会おう。」
「はいっ!」
強い意思の瞳と瞳がぶつかり合う。
「――じゃあ」
そういうと、グリアは真希とは反対の進路へと夢中で走り出した。真希は数秒その背中を見詰めたが、やがて自分の進む方向へと筋肉痛の肢を動かした。
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