異世界にいったったwwwww
算段
「ねぇ、ちょっと……それ、本気?」
真希は咄嗟に口をついて出たのがこれだった。テーブルの丁度真向いに座るグリアは微妙な顔をしてスープを啜り、頷く。
「もちろんだ」
「――信じらんない」
呆れとも怒りともつかない、曖昧な表情をした真希は問い詰めるように再びモグラをみやる。しかし、当のモグラはうまそうに燻製肉を頬張りながら「どうやら、奴さん本気らしい」とそっけなく返した。グリアの一つの案は本当らしい。
「一応、それは父さんにも言わないと」
「そうだな。……そういえば、ザルは?」グリアが言う。
「さっき外に出て行ったけど……」真希は扉に目線をやり、そのまま燻製肉の端っこを咀嚼する。
「中原への輸送はあの男の武勇が欠かせない。実力は今回の旅でよくわかっただろ?」
「うん、いやっていう程思い知らされたけどね。」
「そいつはよかった」
軽口をたたいていると、階段から壮一が降りてきた。太ったビール腹に、日本からの輸送品であろう白いタオルを頭に巻いている。更に黒のTシャツを着ており、厚手の軍用ズボンとブーツに身を包んでいる。が、どうみてもそれは「ラーメン屋の店主」にしか見えない。
「真希、お前も衣類頼んだだろ? 確か寸胴に丸めて詰め込まれてたけどな」
真希は一瞬、カチンと頭にきた。デリカシーのない父が今日ほど恨むに値するものであるか、という気分でいっぱいである。他の男性陣は卓を囲み、主に燻製肉を喰っている、実に呑気といえば呑気な光景。
2
「で、その案はどれくらいの確率で成功するものなんだ?」
壮一は野戦スープを淡々とスプーンで掬って飲んでいる。そちらの方にモグラとグリアが注目しつつも、緊張感のある空気を維持することに努めた。
「……正直、難しい。比較的察知が難しいとされた輸送第一陣が殆ど沈められた、という報告を受けた。先ほど、裏商会の店主からウールドが聞いたらしい。それで、ウールドの奴は今、ここいらの船乗りに声をかけてなんとか船員と船を確保したいらしいんだが、難しいのが現状だ」
「だったら、作戦以前の問題じゃないか? ウールド系の奴らは殆ど第一陣で沈められた。手足を捥がれてまともに輸送なんぞできっこないぞ」
壮一は核心をついらしい。グリアはただ、一言も言わず腕を組んでしまった。
「……そう、そうだ。あくまでこんなものは机上の空論に過ぎない。だから――どうしたらいいか分からん」
そういいながら部屋の西側の樅の板を並べてつくられた壁をみる、そこには中原を中心にした地図がある。グリアにはこの地図と大きくかけ離れた彼自身の実地調査による地図がある……しかし、グリアの踏破したことのない場所、例えば河川などをまじまじと見つめた。
「そんなに面白いもんかい?」モグラが鼻をすすり、肩を竦める。
「ああ」
半ば呆然と返事をしながら口を開けている。
(キーフ軍港……河川、強襲船舶の被害。つまり――つまり、そう、つまり)
グリアは椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がると、両腕を地図のある壁にバン、と大きく叩きつけ瞳を大きくした。光によってスカイブルーに輝くグリアの瞳は深い彫の顔を明るくした。
「大将、何かいい案でも?」絶好のタイミングでモグラが訊ねる。
グリアは徐に振り返る。
「ある――つまり、河川から攻めればいける」
壮一は手を停め、グリアの提案に異議を示す。「そんなの、誰でも思いつく。が、いまは戦時下だ。そうそう簡単に切り抜けられるようにはどうしても思えない」グリアはすかさず「……そう、〝普通〟はな。が、普通の戦時下ではない。なぜならば、ウールドの精鋭の輸送部隊がキーフを正面から攻めた。だから、潰された。しかし、逆に考えれば連中はそれだけ沿岸部の軍港に屯する。しかもその兵力の集中は今だけのチャンスだ。だれもまともな戦力を河川に配置はしない」
真希は咄嗟に口をついて出たのがこれだった。テーブルの丁度真向いに座るグリアは微妙な顔をしてスープを啜り、頷く。
「もちろんだ」
「――信じらんない」
呆れとも怒りともつかない、曖昧な表情をした真希は問い詰めるように再びモグラをみやる。しかし、当のモグラはうまそうに燻製肉を頬張りながら「どうやら、奴さん本気らしい」とそっけなく返した。グリアの一つの案は本当らしい。
「一応、それは父さんにも言わないと」
「そうだな。……そういえば、ザルは?」グリアが言う。
「さっき外に出て行ったけど……」真希は扉に目線をやり、そのまま燻製肉の端っこを咀嚼する。
「中原への輸送はあの男の武勇が欠かせない。実力は今回の旅でよくわかっただろ?」
「うん、いやっていう程思い知らされたけどね。」
「そいつはよかった」
軽口をたたいていると、階段から壮一が降りてきた。太ったビール腹に、日本からの輸送品であろう白いタオルを頭に巻いている。更に黒のTシャツを着ており、厚手の軍用ズボンとブーツに身を包んでいる。が、どうみてもそれは「ラーメン屋の店主」にしか見えない。
「真希、お前も衣類頼んだだろ? 確か寸胴に丸めて詰め込まれてたけどな」
真希は一瞬、カチンと頭にきた。デリカシーのない父が今日ほど恨むに値するものであるか、という気分でいっぱいである。他の男性陣は卓を囲み、主に燻製肉を喰っている、実に呑気といえば呑気な光景。
2
「で、その案はどれくらいの確率で成功するものなんだ?」
壮一は野戦スープを淡々とスプーンで掬って飲んでいる。そちらの方にモグラとグリアが注目しつつも、緊張感のある空気を維持することに努めた。
「……正直、難しい。比較的察知が難しいとされた輸送第一陣が殆ど沈められた、という報告を受けた。先ほど、裏商会の店主からウールドが聞いたらしい。それで、ウールドの奴は今、ここいらの船乗りに声をかけてなんとか船員と船を確保したいらしいんだが、難しいのが現状だ」
「だったら、作戦以前の問題じゃないか? ウールド系の奴らは殆ど第一陣で沈められた。手足を捥がれてまともに輸送なんぞできっこないぞ」
壮一は核心をついらしい。グリアはただ、一言も言わず腕を組んでしまった。
「……そう、そうだ。あくまでこんなものは机上の空論に過ぎない。だから――どうしたらいいか分からん」
そういいながら部屋の西側の樅の板を並べてつくられた壁をみる、そこには中原を中心にした地図がある。グリアにはこの地図と大きくかけ離れた彼自身の実地調査による地図がある……しかし、グリアの踏破したことのない場所、例えば河川などをまじまじと見つめた。
「そんなに面白いもんかい?」モグラが鼻をすすり、肩を竦める。
「ああ」
半ば呆然と返事をしながら口を開けている。
(キーフ軍港……河川、強襲船舶の被害。つまり――つまり、そう、つまり)
グリアは椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がると、両腕を地図のある壁にバン、と大きく叩きつけ瞳を大きくした。光によってスカイブルーに輝くグリアの瞳は深い彫の顔を明るくした。
「大将、何かいい案でも?」絶好のタイミングでモグラが訊ねる。
グリアは徐に振り返る。
「ある――つまり、河川から攻めればいける」
壮一は手を停め、グリアの提案に異議を示す。「そんなの、誰でも思いつく。が、いまは戦時下だ。そうそう簡単に切り抜けられるようにはどうしても思えない」グリアはすかさず「……そう、〝普通〟はな。が、普通の戦時下ではない。なぜならば、ウールドの精鋭の輸送部隊がキーフを正面から攻めた。だから、潰された。しかし、逆に考えれば連中はそれだけ沿岸部の軍港に屯する。しかもその兵力の集中は今だけのチャンスだ。だれもまともな戦力を河川に配置はしない」
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