異世界にいったったwwwww
話し
煙草の煙が先端から立ち上る。もう一口、と煙を呑んだ。
「んだ、おめぇは……急にどうしたってんだ」
モグラはその鼻をヒクヒクとすすり、その小さな鼻の鼻腔からスゥーと白い流れを吐き出す。嘗て、騎士に憧れた男とは思えぬ位に擦り切れた雰囲気をまとっている。
珍妙にも、というべきだろう。彼の前に、ガーナッシュ商会の船員で青年がモグラに教えを乞うている。、
「グリアさんの傍で働くにはどうすればいいんですか?」
溌剌とした息遣いに、モグラは渋い顔になる。恐らく、彼が知りたいのはグリアのその武勇伝と、あわよくばモグラを介在させて働こうという魂胆なのだ。
(お見通しさ)
と、口には出さない。彼、モグラも故郷を出て、砦で戦争をしたのだ。騎士、というゆよりも、敗走者である。だが、昔の理想は――確かに崩れた。だが、それと同時に新しい時代の風雲児を間近でみている。自ずと、新たな理想と偶像が自己の中で構築されるのをモグラは感じていた。
一方、青年は檣から垂らされたロープを器用に手繰り寄せ、甲板の一部分に巻きつけた。それに合わせて、船体に牡蠣がつかないように時々海面へ棒で船べりを叩く。
船員は、再び出稿に備え《銀の匙》号の調整に入っていた。港町はどこも海猫がうるさい。鴎もたまに甲板で宿る。
もうすぐ日が沈む。
「しかし、いいのか? お前は商会の船員だろ? 名前は?」
嬉しそうに彼、青年は仕事の手を止め、応えた。
「自分、えっとラーブっていいます。実はガーナッシュの生まれでなくて、もっと西のほうの生まれでして……。」
「ほう、そうか。で、またグリアのところで何しようってんだい?」
「自分もあの人の手足になって働いてみたいんです。いえ、ここの待遇、ガーナッシュ商会も最高に居心地がいいです。そりゃあ、初めて船員になったときはすぐにやめてやりたくなりました。みんな乱暴だし、怒鳴るし、と。ええ、ですが今は本当に居心地がいい。」
「じゃあ、結構じゃねぇか。」
モグラは小さな眼をぱちくりとやり、青年の言葉を不思議がる。
「でも、船員でもいいけど、生きてみたんです。大陸でワクワクしたいんです。」
「いいか? ひとつ言っておく、俺たちは戦争もした。いいか? 繰り返すぞ、戦争だ。いや、違う。一方的な虐殺から逃げてきたって言い方が正確だ。そんな出来事体験してぇんなら別だ。」
つい頭に血がのぼる。それと同時に、嘗て理想に燃えていた自分を見ているようで苦しかった。モグラは短くなった煙草を海面へ吐き捨てた。
「……おい、小僧。お前、何の役にたちたいんだ?」
モグラは静かになったラーブへ問いかける。彼はただ、「船の事しか……教わってこなかったもんで、戦争のお手伝いは」と言葉を濁した。
それが、どういう真意で口をついたのかモグラには判断つきかねた。それに、自分はそもそもグリア一派の人事採用ではない、とため息をつく。
「話しは一応通してやる。が、だ。もしどちらに転んでも義理は果たせよ。ガーナッシュにも、船にも。」
青年は神妙な面持ちで頷いた。
「んだ、おめぇは……急にどうしたってんだ」
モグラはその鼻をヒクヒクとすすり、その小さな鼻の鼻腔からスゥーと白い流れを吐き出す。嘗て、騎士に憧れた男とは思えぬ位に擦り切れた雰囲気をまとっている。
珍妙にも、というべきだろう。彼の前に、ガーナッシュ商会の船員で青年がモグラに教えを乞うている。、
「グリアさんの傍で働くにはどうすればいいんですか?」
溌剌とした息遣いに、モグラは渋い顔になる。恐らく、彼が知りたいのはグリアのその武勇伝と、あわよくばモグラを介在させて働こうという魂胆なのだ。
(お見通しさ)
と、口には出さない。彼、モグラも故郷を出て、砦で戦争をしたのだ。騎士、というゆよりも、敗走者である。だが、昔の理想は――確かに崩れた。だが、それと同時に新しい時代の風雲児を間近でみている。自ずと、新たな理想と偶像が自己の中で構築されるのをモグラは感じていた。
一方、青年は檣から垂らされたロープを器用に手繰り寄せ、甲板の一部分に巻きつけた。それに合わせて、船体に牡蠣がつかないように時々海面へ棒で船べりを叩く。
船員は、再び出稿に備え《銀の匙》号の調整に入っていた。港町はどこも海猫がうるさい。鴎もたまに甲板で宿る。
もうすぐ日が沈む。
「しかし、いいのか? お前は商会の船員だろ? 名前は?」
嬉しそうに彼、青年は仕事の手を止め、応えた。
「自分、えっとラーブっていいます。実はガーナッシュの生まれでなくて、もっと西のほうの生まれでして……。」
「ほう、そうか。で、またグリアのところで何しようってんだい?」
「自分もあの人の手足になって働いてみたいんです。いえ、ここの待遇、ガーナッシュ商会も最高に居心地がいいです。そりゃあ、初めて船員になったときはすぐにやめてやりたくなりました。みんな乱暴だし、怒鳴るし、と。ええ、ですが今は本当に居心地がいい。」
「じゃあ、結構じゃねぇか。」
モグラは小さな眼をぱちくりとやり、青年の言葉を不思議がる。
「でも、船員でもいいけど、生きてみたんです。大陸でワクワクしたいんです。」
「いいか? ひとつ言っておく、俺たちは戦争もした。いいか? 繰り返すぞ、戦争だ。いや、違う。一方的な虐殺から逃げてきたって言い方が正確だ。そんな出来事体験してぇんなら別だ。」
つい頭に血がのぼる。それと同時に、嘗て理想に燃えていた自分を見ているようで苦しかった。モグラは短くなった煙草を海面へ吐き捨てた。
「……おい、小僧。お前、何の役にたちたいんだ?」
モグラは静かになったラーブへ問いかける。彼はただ、「船の事しか……教わってこなかったもんで、戦争のお手伝いは」と言葉を濁した。
それが、どういう真意で口をついたのかモグラには判断つきかねた。それに、自分はそもそもグリア一派の人事採用ではない、とため息をつく。
「話しは一応通してやる。が、だ。もしどちらに転んでも義理は果たせよ。ガーナッシュにも、船にも。」
青年は神妙な面持ちで頷いた。
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