異世界にいったったwwwww

あれ

十五

 大陸各地で跋扈する盗賊集団はその形態や規模を変えようとした。


 近年の研究によると、盗賊集団の大規模化を失敗した場合、宗教勢力が介入し、融和することにより強大な勢力となったことが明らかになっている。


 豊富な資金力と、都市国家への宗教的圧力は、それまでの純粋な暴力集団でもなく、また国としてでもなく、厄介な存在へと成長しようとしていた。


 もっとも、彼ら、つまり盗賊は当分の安心を担保に暴力で宗教勢力を脅したという事例も多い。




 「……それで、今度はどこに戦争を?」茶化すように訊ねる。


 イヤな顔をしながら、半ばヤケの自白をするように相手になるべく本心を悟られないように含みのある目で「北方の賢王様を用いて、いよいよパジャ様が中原を制覇するという専らの噂だ。いや、あの賢王はまったく、剣であるには優秀だ」と大臣のように偉そうな口調でいう。


 彼らは先ほどまで開かれていた会議の守衛をしていた兵士たちである。彼らは職務の時は彫像のようにあるが、一度その任を離れれば、放埒な口を自由にさせる主義の連中であった。




 時代が変化をする……そんな時は、為政者より庶民の方が敏感に本能で時代の変革を捉えることが上手である場合もある。彼らの会話はその一例である。


 当時の状況は、旧態依然の制度、行政、全てにおいて不信があり、その危うく保たれた均衡が否応なく崩壊する時期であった。


 「――ガルノス様は、どうだ?」


 「ガルノス様は内政や国取りに忙しいという噂だ。しかし、王道を歩む人という雰囲気があるが――」




 二人はしばらく、人気の散った会議場の扉付近で噂話に興じていた。だが、つい数年前では考えられない光景である。しかし、昨今の様子を鑑みるに、それほど守衛の兵士の質も低下している。戦争で打払い、そのツケがこんな些細なところにも目に付くようになっていた。




 この会議で決定したことは、以下の四条項である。


 一つ、都市国家は緊密に連絡を取り合うこと。


 一つ、現在の政治状態を維持できるように最善を尽くすこと。


 一つ、もし反旗を翻す者あらば全力にて制圧すること。


 一つ、暴力集団の一刻も早い排除。


 上記を完遂し、初めて、この条項は次のモノに更新する。


 という内容である。








 諸侯はこの条文が、明らかに反乱を誘っていることを暗に読み取った。




 (しかし、一体なにを考えている……パジャという男は)


 ガルノスはひとり、王都の客室の一角の執務机で紙を丸めた。蝋燭の光が淡く灯る。


 (さて引き連れた兵力は五〇〇。無事逃げれるか)


 ガルノスは陰鬱な顔をしながら、ふと、脇に控える伝令将校をみた。


 「親衛隊長を呼べ」


 すると、将校はサッ、と頭を下げそのまま退出する。


 その背中を見送りながら、ガルノスはひとり、歴史の加速装置としての己の役割を呪った。


 この……あくまで己一個人の欲望野望はこれまで築いた苦労を気泡に返すモノかもしれないのだから。それでも、一介の漢、武人として、この時代に生まれたからには決着をつけねば……。


 闇の深まる中、彼は決意を固めた。


 後、歴史書にて簡潔にこの時の状況を記された。


 ――ボールドウ・ガルノス反旗を翻す。





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