異世界にいったったwwwww

あれ

十二

 合議堂を二人で背にしたあと、ピーニクとグリアは僅かな言葉を交わしながら今後の展開について思案していた。


 ピーニク・ガーナッシュの家、つまりガーナッシュ公国は本来国家である。が、面白いことに、通常王家や皇帝、貴族などの持ち物でなく一介の商売人が国家を所有しているということである、無論、小規模であり、かつこのバザールは名目上でも実質的にでも国家を所有することはあった。




 (……とはいえ、どうしたものか)




 ハッキリと口には出さないがピーニクは嫡子であり、正統後継者である。故に悩む必要はない。が、彼の父はピーニクが国家の元首たる才覚や資格を持っているかということに関して懐疑的であった。それゆえ、あえて商売人を長く続けさせた。それも、ガーナッシュの看板を掲げ……。


 ピーニク自体は早く国政に参与したくて、ウズウズとしていた。が、小国といえども政党政治などが運営されており、交渉力は鍛えられても政治力とは同義でないことを感覚として彼は理解できていなかった。


 それゆえ、彼の側近ですら、一商売人として終わらせたいとする人すらある有様であった。




 そのことは一切口にも顔にも出さないが、隣を歩く大柄の男はおそらく全てを察しているだろう。




 皮肉にも、人格と才能は直結しない。




 「ピーニク。あの、いつかの酒はうまかった。あれをまた飲みたい。」




 街の中程で立ち止まって、グリアは喉をさすりながらジェスチャーした。眉をハの字に困らせ、のんだくれ特有の顔をした。






 不意にピーニクは思案した顔を持ち上げ、


 「ああ、すまん。もう一度いいか?」




 「酒だ。酒が欲しい。」


 間抜けらしい顔が眸に飛び込んだ。




 「アハハ。君らしい。いいぞ。」


 ピーニクは不健康な髪をグシャ、とかき回し、から笑いした。我ながら間抜けだと思った。


 しばらく気まずい空気を感じながら、しかし両者はそれぞれの立場がある。そのために、相手に遠慮し、先ほどから様子を伺う程度であった。






 どれほど、しただろうか?




 ようやく、入没しかけた太陽を見渡せる港まできた。遥か東の果てにはオビュエ山の山脈が屏風のように存在している。海鳥が今日は特に多い。入江には多くの船が停泊している。倉庫群を抜けながら大型船舶の類は、マストが外され、美しい木造船の船体が影絵のように聳えた。




 思わず、うっとりとした声で、


 「いいなぁ。船は。俺も欲しい」


 金色の髪が潮風になびく。本音かどうかわからない。




 「船ですか……ああ、そうだ。なんなら、ウチの一番大きな貨物船をおみせしましょうか?」




 何気なく、気晴らしがてら誘った。




 すると、一二もなく、




 「ああ、いこう。いこう、どこだ?」


 静かな興奮を息に潜めながら、グリアは眼を光らせた。




 (純粋な人だ。)




 ピーニクは案内をするため、上着のポケットをまさぐった。








 

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