異世界にいったったwwwww
七
ピーニクはしばらく、その双眸で目前の大柄な男を眺めていた。彼の心にあるひとつの感情……つまり、好奇心が生まれた。というのも、彼自身、長く商人をやり多くの人間に接してきたつもりであった。
しかし、である。しかし、この目前の金髪の縮れ毛の、鼻梁の高く、まるで気高い獅子のような印象を受ける彼は、屈託ない顔でピーニクの前にある。
「お客さん、何者だい?」
「……」
「盗賊? 違うか?」
「……」
「都市の使い?」
「……」
鋭く、目を細めて、
「あんた、戦争でもするのかい?」
核心を突いたと思った。いや、事実、そうであった。……が、当の彼はなにも答える素振りもせず、指に差し込んだままの鼻くそを追いかけるのに必死になり始めていた。
それから、その問いかけを思い出したように、
「ははあ。なるほど、いや、バカめ。交渉をしにくるのに、重大な顔でやってきたんだ、このとおり」」
いきなり、罵倒をした。ピーニクはしばし、眼を白黒させて絶句した。いやそれより、バカにしたような態度で、大真面目な顔をして屹立する美丈夫の男児が彼には皮肉という言葉しか浮かばないようになってしまっていた。
この男は既に彫像になったのか……あるいは白痴になったのか?
まるで先ほどの風格を収めたように、口をパックリとあけて、動きも緩慢になり、鼻くそをほじりはじめた。
(なんなんだ、この男は……)
まるで理解できなかった。というのも、商人の眼力にピーニクは自信があった。それには、彼の商売ネットワーク……つまり彼の商売のやり方は部下を街中にめぐらせて、いい客だと思えばこの商店に連れてこさせるようにしていた。その方法を空白にされた気がした。
(だが、こんな男は初めてだ)
ふーっう、と大きくため息をつきながら、大きく笑った。
「アッハハハハ。すいませんでした。こちらに非礼がありました。なるほど、面白い。なぜ火槍の存在を? それもこちらにあると?」
そういいながら席を立ち上がり、自分から近い古い商品棚の間を歩く。
「……これから、大きな動乱があるかもしれん。自衛のために欲しい。」
「おやっ?」と珍しそうな顔をしながら、ピーニクはゆっくり、棚を抜けて彼の前に歩み出た。
「それは珍しい。火槍のような玩具にそんなにこだわる人はいないですが?」
しばらく考えたように、顎に手を当てながら、さすり、うなずく。
「……一度、一度猟師が害獣を駆除するときに火槍を使うのを見たんだ。そして、その威力に驚いた。おそらく、アレは大陸で普及するだろう。それに、国家間の戦争に革新をもたらす気がする……。」
眼を瞠りながら、ピーニクは嘆息した。
「驚いた。まさか、私と同じような思想をもった人間がいるとは……いいでしょう。格安でお売りしましょう。」
そう言いながら、彼は一枚の大きな図面の束を持ち出した。
「あなたの見識を信頼しました。いえ、たった今、信用を創造しました。」
――火槍が歴史の表舞台にあがった要因の一つに、この商人と砦の領主の邂逅を見逃すことはできないだろう。というのも、彼らは早くから、戦争を前提とした世界観を持っていたということ……また、戦争の著しいまでの変革の予感であった。
というのも、それは統一王朝の崩壊、戦乱、そして太平の世の中。この逸楽のような太平の世の中であって、《盗賊》の跋扈が知識人を中心に危機感を強めていた。
当時の人々の意識からすれば当然といえば当然である。が、少なくともこの時期において、大戦乱を予見していたのは限られる。
……そして、その引き金を引いた男は、その頃、悠然として、縮れた毛を撫で付けている。
ピーニクは興奮冷めやらぬ口調でグリアに語る。
「奥のほうでいい酒があります。この図面を肴に一献どうでしょうか?」
すると、気さくにニィ、と口角が釣り上がり、
「いいですなァ、ぜひ、お願いしたい」
言うがはいか、グリアは商店の奥の扉を開き、招き入れるような仕草で、
「どうぞ、我がお客人」
と、恭しく頭を垂れた。
苦笑いするでもなく、グリアは鷹揚にうなずく。
しかし、である。しかし、この目前の金髪の縮れ毛の、鼻梁の高く、まるで気高い獅子のような印象を受ける彼は、屈託ない顔でピーニクの前にある。
「お客さん、何者だい?」
「……」
「盗賊? 違うか?」
「……」
「都市の使い?」
「……」
鋭く、目を細めて、
「あんた、戦争でもするのかい?」
核心を突いたと思った。いや、事実、そうであった。……が、当の彼はなにも答える素振りもせず、指に差し込んだままの鼻くそを追いかけるのに必死になり始めていた。
それから、その問いかけを思い出したように、
「ははあ。なるほど、いや、バカめ。交渉をしにくるのに、重大な顔でやってきたんだ、このとおり」」
いきなり、罵倒をした。ピーニクはしばし、眼を白黒させて絶句した。いやそれより、バカにしたような態度で、大真面目な顔をして屹立する美丈夫の男児が彼には皮肉という言葉しか浮かばないようになってしまっていた。
この男は既に彫像になったのか……あるいは白痴になったのか?
まるで先ほどの風格を収めたように、口をパックリとあけて、動きも緩慢になり、鼻くそをほじりはじめた。
(なんなんだ、この男は……)
まるで理解できなかった。というのも、商人の眼力にピーニクは自信があった。それには、彼の商売ネットワーク……つまり彼の商売のやり方は部下を街中にめぐらせて、いい客だと思えばこの商店に連れてこさせるようにしていた。その方法を空白にされた気がした。
(だが、こんな男は初めてだ)
ふーっう、と大きくため息をつきながら、大きく笑った。
「アッハハハハ。すいませんでした。こちらに非礼がありました。なるほど、面白い。なぜ火槍の存在を? それもこちらにあると?」
そういいながら席を立ち上がり、自分から近い古い商品棚の間を歩く。
「……これから、大きな動乱があるかもしれん。自衛のために欲しい。」
「おやっ?」と珍しそうな顔をしながら、ピーニクはゆっくり、棚を抜けて彼の前に歩み出た。
「それは珍しい。火槍のような玩具にそんなにこだわる人はいないですが?」
しばらく考えたように、顎に手を当てながら、さすり、うなずく。
「……一度、一度猟師が害獣を駆除するときに火槍を使うのを見たんだ。そして、その威力に驚いた。おそらく、アレは大陸で普及するだろう。それに、国家間の戦争に革新をもたらす気がする……。」
眼を瞠りながら、ピーニクは嘆息した。
「驚いた。まさか、私と同じような思想をもった人間がいるとは……いいでしょう。格安でお売りしましょう。」
そう言いながら、彼は一枚の大きな図面の束を持ち出した。
「あなたの見識を信頼しました。いえ、たった今、信用を創造しました。」
――火槍が歴史の表舞台にあがった要因の一つに、この商人と砦の領主の邂逅を見逃すことはできないだろう。というのも、彼らは早くから、戦争を前提とした世界観を持っていたということ……また、戦争の著しいまでの変革の予感であった。
というのも、それは統一王朝の崩壊、戦乱、そして太平の世の中。この逸楽のような太平の世の中であって、《盗賊》の跋扈が知識人を中心に危機感を強めていた。
当時の人々の意識からすれば当然といえば当然である。が、少なくともこの時期において、大戦乱を予見していたのは限られる。
……そして、その引き金を引いた男は、その頃、悠然として、縮れた毛を撫で付けている。
ピーニクは興奮冷めやらぬ口調でグリアに語る。
「奥のほうでいい酒があります。この図面を肴に一献どうでしょうか?」
すると、気さくにニィ、と口角が釣り上がり、
「いいですなァ、ぜひ、お願いしたい」
言うがはいか、グリアは商店の奥の扉を開き、招き入れるような仕草で、
「どうぞ、我がお客人」
と、恭しく頭を垂れた。
苦笑いするでもなく、グリアは鷹揚にうなずく。
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