異世界にいったったwwwww

あれ

外伝2

 中央背脈に、蕭々(しょうしょう)と雨が降る。 無数の馬脚がぬかるんだ大地に穴をあけ、荷台の車輪がわだちをつくった。宵の明星が、微かに揺らめく。 商業連合自由都市バザールは、数マリさきまで迫っている。 遠景に海原がひっそりと、腹をだしはじめた。歯型のような港の岸が、地平線に沿っている。 馬のたてがみが、渦をまいて、風にもてあそばれた。 「ヨーッ、しっ。みんな、止まれ。」
 ザルの吠える声が、遠くの人々にまで届いたようである。が、しかし、近くの者たちは、意表を突かれ、馬は驚き、列をすこし乱した。 先頭に、グリアがいる。 
「ほぅ……美しい。」
 不意に、感嘆の息をもらした。
 ――バザールである。 宮殿のようなもの、商人の露店、質屋、両替商、まるで碁盤のように規則正しく、区画に分けられ、天空を突き刺すような建物が聳える。 
「……ここから、再起をしよう。」 
つぶやくように、グリアは後ろのモグラに語る。 
モグラは、小さい鼻をヒクヒク、とやる。
 (ああ、子供たちにもみせてやりたかった。)
 グリアは馬を降りて、中間地点に位置していた真希と壮一のもとまで、はしった。 旅の疲れをみせていた、真希は蒼い顔をしている。壮一は、思索にふけっている様子だった。 
「……君たちには悪いが、一つお願いしていいか」 
真希は瞬きした。
 「どういうことなんですか」 
グリアは頭をさげる。 
「お願いだッ、俺と一緒に、ナターシャや、他の連中の遺骨を拾えるだけ、拾いたい。墓を……墓をつくってやりたいんだ……今は難しい! だが……。」 
グリアは、珍しく、語尾が涙ぐんでいた。
 「そいつは、待ってくれ。この俺様が肝要だ。」
 ザルが、腕まくりをして、馬で進み出る。
 「お前がまたいつ裏切るか」とたしなめるように、モグラが反論した。
 「……わかりました。私と、父と、ザルさんで、向かいます。」
 「しかし」取り乱して、グリアは言葉を放つ。 真希は、それを睨み付けて、制する。 
あきらめたグリアは、もう一度深く頭をさげた。 (グリアさんにはグリアさんの、エイフラムにはエイフラムの戦いが……やるべきことがある。私も……きっと、今生きている瞬間も……)
 わずかだが、真希は、背筋がのびる。 ――出発はこれから2か月後になってからだった。

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