異世界にいったったwwwww
41
「何事だ!」
と、遠征軍の指揮を執っていた現場の武将も思わず目を剥いて驚愕した。
そして、その武将が、兵隊たちの登る壁をみた。
すると、ポロポロと崩れるように、強靭な兵隊たちが、壁から崩れ落ちていた。 又、第二擊目がきた。
今度は、バラバラであるが、それでも尚効果は高い。
(やられたッ!)
戦の主導権は、黒馬の側が先んじた。手の震えが、おさまらない。まるで、全ての物の輪郭の軸がブレるようだった。
とにかく、こちらにまず、流れを持ってきた。
槍を温存するため、暫くの間、長槍で個別に兵隊を落とし、梯子が来れば、押し返す。
グリアはふと、男達の顔をみた。 皆、不安な様子だったのが嘘のように、生き生きと輝いている。きっとこれは黒馬の民の血なのだろうか。
ともかく、戦は始まったばかりである。
同刻、東の門
エイフラムがはじめにみたのは、索敵の騎馬であった。 それから後、今度は、火槍の唸る音がした。
ついに戦火を交えたのだと、改めて実感した。だが、どうでもいいことだ、とエイフラムは色のない双眸をチラつかせる。 周りの味方は、それを頼もしいと思ったのか、軽口を叩きあっていた。
しかし、皆とっくに気がついていた。エイフラムがおかしいことに。だが、今誰か人物が異常でも、この異常な戦争という環境ではむしろ人は、それを歪に適応してしまうのだ。
「……いいか、こちらにも来るぞ、構えろ。」
低く、しかし抉るような声だった。エイフラム独特の人を嘲笑するモノではなかった。
ベムが厚い化粧の白い肌から、毒々しい笑みを浮かべる。 石切のテーブルに肘をついて、ゆっくり、日光を浴びた葡萄酒の杯を揺らす。
「――ほう。こちらに、あの馬鹿どもがくる……か。まあいい。では、連中が通るヤザン渓谷で迎え撃とうか。そうだ、黒馬に向かわせた別働隊は、しっかり“待機”させているのだろうな?」
脇に控えた文官が、
「はっ、待機しております。棟梁、渓谷にはいかほどの兵力を……」
ああ、と短く応じる。
「それなら五千だ。」
「ご、五千ですか! たったそれだけの兵力は危ういのでは……」
「ははは、貴様、いい度胸だ。よい、教えよう。ささ、入れ。」
一度、文官に凄んだかと思うと、ひら、と目線を扉に移して、手を叩く。 入ってきたのは、目麗しい女性だった。革製のブーツを履き、ドレスローブを着込んだ、切れ長の目尻の女。
「どうも、お初目にかかります。」
軽い挨拶のあと、ベムの隣の席に、まるで親しい仲であるかのように、優雅に腰を下ろす。
「紹介しようか、彼女は、風の魔術師だ。」
文官は、えっ、と声がそれきりでなくなった。
それもその筈である。元々魔術師とは、都市国家にのみ与えられた権利だからだ。それが、国家まがいの、盗賊連中がなぜ……。
眺めても答えはでない。
「棟梁! これは、そのどういうことでしょうか」
「ハッハハ! なに、貴様、ワシがいたずらに国取りをしていたのだと思うたな? 馬鹿なヤツよ。」
風の魔術師も、口角をすこし釣り上げただけで、なにも言わない。
「証拠が、その魔術師であるその……」 口ごもる文官。 「ええ、よろしいでしょう。ですから、その渓谷の戦でご覧にいれましょう。」
ベムは胸を大きく反り返して、
「いいか、これ以上深入りしては、貴様、命がないと思え。貴様は有能だ、それゆえ、好奇心が強い。それは身を滅ぼすぞ。」
ひっ、と肝を冷やした文官は急いで退出した。
さて、と短く嘆息したベム。
「それにしても、まさか、あなたがこんな立派な大将になるなんてね。」
風の魔術師がテーブルの縁を指先でなぞる。
「フム、それもそうだ。ワシは、何がしたいのか、実のところ、分からなくなっておる……」
不気味で、危ういベムという男の仮面が、すこし剥がれた気がした。
「フフ、あなたらしくもない。盗賊の頭が貧弱な……」
「まあ、そう言うな。ワシも人間だ。」
「ではこれからどうするの?」
「大陸が、おそらく……いや、やめよう。今日はそのようにつまらぬことで呼んだ訳でない。」
「へぇ、ではどういう訳でしょうか?」
「……お前、魔族の眷属となったろう。」
「――ッ!」
風の魔術師は、驚愕を顔に貼り付けた。
「やはりそうか。これはいよいよ、人間界だけでなく魔族の世界にも激震か。」 ベムは言葉を弱く、椅子を引いて、杯を空にした。
と、遠征軍の指揮を執っていた現場の武将も思わず目を剥いて驚愕した。
そして、その武将が、兵隊たちの登る壁をみた。
すると、ポロポロと崩れるように、強靭な兵隊たちが、壁から崩れ落ちていた。 又、第二擊目がきた。
今度は、バラバラであるが、それでも尚効果は高い。
(やられたッ!)
戦の主導権は、黒馬の側が先んじた。手の震えが、おさまらない。まるで、全ての物の輪郭の軸がブレるようだった。
とにかく、こちらにまず、流れを持ってきた。
槍を温存するため、暫くの間、長槍で個別に兵隊を落とし、梯子が来れば、押し返す。
グリアはふと、男達の顔をみた。 皆、不安な様子だったのが嘘のように、生き生きと輝いている。きっとこれは黒馬の民の血なのだろうか。
ともかく、戦は始まったばかりである。
同刻、東の門
エイフラムがはじめにみたのは、索敵の騎馬であった。 それから後、今度は、火槍の唸る音がした。
ついに戦火を交えたのだと、改めて実感した。だが、どうでもいいことだ、とエイフラムは色のない双眸をチラつかせる。 周りの味方は、それを頼もしいと思ったのか、軽口を叩きあっていた。
しかし、皆とっくに気がついていた。エイフラムがおかしいことに。だが、今誰か人物が異常でも、この異常な戦争という環境ではむしろ人は、それを歪に適応してしまうのだ。
「……いいか、こちらにも来るぞ、構えろ。」
低く、しかし抉るような声だった。エイフラム独特の人を嘲笑するモノではなかった。
ベムが厚い化粧の白い肌から、毒々しい笑みを浮かべる。 石切のテーブルに肘をついて、ゆっくり、日光を浴びた葡萄酒の杯を揺らす。
「――ほう。こちらに、あの馬鹿どもがくる……か。まあいい。では、連中が通るヤザン渓谷で迎え撃とうか。そうだ、黒馬に向かわせた別働隊は、しっかり“待機”させているのだろうな?」
脇に控えた文官が、
「はっ、待機しております。棟梁、渓谷にはいかほどの兵力を……」
ああ、と短く応じる。
「それなら五千だ。」
「ご、五千ですか! たったそれだけの兵力は危ういのでは……」
「ははは、貴様、いい度胸だ。よい、教えよう。ささ、入れ。」
一度、文官に凄んだかと思うと、ひら、と目線を扉に移して、手を叩く。 入ってきたのは、目麗しい女性だった。革製のブーツを履き、ドレスローブを着込んだ、切れ長の目尻の女。
「どうも、お初目にかかります。」
軽い挨拶のあと、ベムの隣の席に、まるで親しい仲であるかのように、優雅に腰を下ろす。
「紹介しようか、彼女は、風の魔術師だ。」
文官は、えっ、と声がそれきりでなくなった。
それもその筈である。元々魔術師とは、都市国家にのみ与えられた権利だからだ。それが、国家まがいの、盗賊連中がなぜ……。
眺めても答えはでない。
「棟梁! これは、そのどういうことでしょうか」
「ハッハハ! なに、貴様、ワシがいたずらに国取りをしていたのだと思うたな? 馬鹿なヤツよ。」
風の魔術師も、口角をすこし釣り上げただけで、なにも言わない。
「証拠が、その魔術師であるその……」 口ごもる文官。 「ええ、よろしいでしょう。ですから、その渓谷の戦でご覧にいれましょう。」
ベムは胸を大きく反り返して、
「いいか、これ以上深入りしては、貴様、命がないと思え。貴様は有能だ、それゆえ、好奇心が強い。それは身を滅ぼすぞ。」
ひっ、と肝を冷やした文官は急いで退出した。
さて、と短く嘆息したベム。
「それにしても、まさか、あなたがこんな立派な大将になるなんてね。」
風の魔術師がテーブルの縁を指先でなぞる。
「フム、それもそうだ。ワシは、何がしたいのか、実のところ、分からなくなっておる……」
不気味で、危ういベムという男の仮面が、すこし剥がれた気がした。
「フフ、あなたらしくもない。盗賊の頭が貧弱な……」
「まあ、そう言うな。ワシも人間だ。」
「ではこれからどうするの?」
「大陸が、おそらく……いや、やめよう。今日はそのようにつまらぬことで呼んだ訳でない。」
「へぇ、ではどういう訳でしょうか?」
「……お前、魔族の眷属となったろう。」
「――ッ!」
風の魔術師は、驚愕を顔に貼り付けた。
「やはりそうか。これはいよいよ、人間界だけでなく魔族の世界にも激震か。」 ベムは言葉を弱く、椅子を引いて、杯を空にした。
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