異世界にいったったwwwww

あれ

33

一方その頃、壮一も、腕時計型の通信機を使い、口を近づけて何かを話していた。 「〜と〜を、補給の中に追加してくれ」
 通信先は国の異世界対策本部であり、補給物資を供給を管理する部門に連絡をつけていた。しかし、発足から時間も短いため、問題も多い。 
更に困ったことに、異世界に転送できる物資の大きさに限界があり、あまり大きすぎるものは要求しても通らない。
「「わかりました。これは重量、大きさともに大丈夫です。では、早急に送ります。生活用物資と別の物資を用意いたします。」」
 通信機から女性オペレーターの声が漏れた。 壮一は「どうも」と簡潔にいい、電源をおとした。 二三咳払いして、乾パンを口に放り込んだ。




 「しかし、誰かと食べるのは、美味しいね。でも、このレーションさ、アメリカ軍のヤツだよね。これ、安いのだし。だからマズイんだ。ほんと、国はケチだなー。」 
ぐずぐず文句を言う真希だったが、表情はどこか晴れがましかった。 
 それを尻目に、隣に腰掛けた少女が笑う。 
「そうだ。あなたの名前、まだ聞いてないんだ。私は皆川真希っていうんだけど。」
 「えっ、あ、わたしですか! わたしはナターシャです。」 
ナターシャ、と独り言のように、真希は繰り返す。
 そして、 
「よろしくね。ナターシャちゃん、とかでいいのかな?」改めて言葉にすることで、恥ずかしさが湧いてくる。そして、しばらく俯いた。そして、ふと、瞳を隣の少女に逸らす。
 甘栗色の艶やかなウェーブがかかった髪の毛に、長い睫毛と人一倍大きな瞳。 窶れ、土に汚れた頬と、気色の悪い肌以外は、愛らしいと形容してもよい容姿である。 
だが、貧しい生活と重労働の影響で疲れきったような、まるで十歳前後とは思えないのだ。だが、それがかえって、どこか儚く脆い印象を与えた。
「ねぇ、あのさ、その背負っている赤ちゃんってさ、妹かな?」
 会話の糸口を見つけたように口をひらく。
 「そうです。あの、でも、いつもは第一区に住んでいるガルバさんのお宅に夜預けるんですよ。」
 真希は不意を突かれたように思わず声を出す。
 「え? なんで? 一緒に住んでないの。」
 困ったように苦笑いしたナターシャは、 
「そ……うですね。あの、わたしは授乳できないので、丁度年頃も近くてわたしの妹アーノの面倒見てもらっているんです。」
 二人が腰掛けていた大きな岩は湿っている。ズボンのお尻の辺りがグジュグジュと水気で滲む。 
そのことにも気づかず、いいようもない寂しさが、真希を襲った。 なにか気分を悪くしたのかと、訝しがるナターシャの両手を注視する。そして、真希はその骨の浮き出た貧しい両手を自らの手で包む。 
「……あの、さ。もし嫌じゃなかったらさ、私今日の夜、ナターシャの家に行ってもいい?」
 息が止まるような大げさな表現でナターシャは驚愕した。それは嬉しさによるものであることが、明るい笑顔に裏打ちされた。
 「ぜっ、ぜひ。でも……わたしの家はなにもなくて、そのお見苦しいだけだと……ああ、でも」
 「いいよ、全然気にしないよ。わたし、また新しい補給物資くるはずだから、それ持っていくよ。ね?」
 目尻に涙を浮かべたナターシャが何度も頷く。
 それに満足した真希は、ふと、彼女の手に握られているチョコレートの空の包み紙を認めた。 
「それ、捨てるから」
 と、その手から取ろうとすると、素早く避けられた。
 「あ……あの、ごめんなさい。よろしければ、この包み紙を、迷惑でなければ下さいませんか?」 
申し訳なさそうに言うナターシャに、思わず真希が見返す。
「えっ、でもそれゴミだよ? いいの、そんなの? また、別のほら、中身のあるお菓子持ってくるし、ダメ?」
 何度説明しても、ナターシャは頑として首を縦に振らず、許しを請うように同じ言葉を繰り返した。 
 諦めて「わかったよ」と肩をすくめる真希だった。
 「でも、なんでそんなの欲しいの?」
 疑問が喉を突いて出てしまった。 それに対し、恥ずかしそうな素振りをした彼女だったが、意を決したように、真希の耳元に囁いた。
 (これが、マキさんが出会って最初にくれたものだから……えっと、それだけですが……。) と伝えた。 
「~~~~っ、ありがとーーー!」
 雄叫びをあげるように、ナターシャを強く、強く、抱きしめた。
 二人の目の前に広がる広大な畑たちに植わった作物の葉が右に左に風によって向きを変えた。 
途切れとぎれの雲が青空に張り付いていた。 
陽気のいい、昼のことだった。 




畑仕事が終わったのは、それから夕方と夜の間であった。
 真希慣れないなりに、手伝ったものの、ほとんどが、邪魔をする形となった。 二人は、北門から砦に入った。 暗くなると、自然と肌寒くなる。農具を分けて運んでいると「あの、真希さん。第一区までいいですか?」とナターシャが訊く。 二人は、砦の内部に設けられた居住管理のテントまで向かう。
 簡単な天幕の、木製でできた骨組みの管理部は数人の男役人があるだけだった。 ナターシャはよくここを訪れるため、ほとんど顔パスで第一区を通れた。問題は、真希であり、彼女は、全く上層部以外には顔が知られておらず、数刻をトラブルで浪費したが、それも済むと、通してくれた。

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