異世界にいったったwwwww

あれ

20

 黒馬の砦より北に120マリに、小国家規模の領土がある。名を《穀物庫》という。
 都市と認定されず、それ故に様々な豪族や地主どもが私兵を投じて殺しあいをした。豊かな土地には多くの食料が生産される。
 三十年前、近くの中型都市国家《蘇》が太守として家臣を送り込んだ。見事にこの地を治めた。
 やがて《蘇》の属国の如く、食料を貢いだ。その対価に多くの兵隊を駐留させ、豪族、領主、盗賊を切り従える。 
二代目の《穀物庫》の地の領主、イヴァンは、几帳面そうな顔を執務室の机の上に落とす。
 羊紙の黄色が視界を塞ぐ。 
冷たい木質の冷気が頬を冷やす。 
執務室をノックする音がした。はいりたまえ、と促すと、官房長官のコルゼがハゲと白髪の頭で一礼して入る。 
「やつらの動向はどうだ? 私はなるべくことを荒立てたくない。ただでさえ盗賊の討伐で面倒なのだ。こちらはなんとかできそうだが、両方はさすがに無理だ。」 コルゼが鼻息を強く、 
「恐れながら、些か弱腰でございますな! 当然盗賊もそうですが、連中も盗賊同然でしょう。まして盗賊と結びつくくらいなら、討伐してはいかがか?」
 頬を机から引き剥がしたイヴァンは、目頭を揉んで否定の手を振る。 
「できるか? 兵力はなんとか出来ても、近隣の土地との問題でそれ程守備にもさけない。ん? また民からむしり取るのはいいが、先月大徴収したばかりだ。反乱は私の好むところではない。」
 もっとも、とコルゼは頷くが、まだなにか言いたげである。
 それをイヴァンが言うように催促する。
 重く、彼は口をひらく。 ――曰く、《蘇》に援軍を頼むこと。またこれを機会に小国都市国家になること。その為に黒馬の砦を攻略し、実績を付ける。ということ。 
「それは、私も考えた。」
 冷たくあしらうイヴァンにすかさず、口をはさむ。 
《蘇》にはもう交渉ができており、あとは決断だけであること、またイヴァンに許可なく外交をしたことへの謝罪。 
腹に空気を貯め、執務の机を指で叩く。目を揉んだ。 
「わかった。とにかく、戦火は広げず、各軍団長にも会議をひらき、連中に交渉をしつつ作戦をなんとかせよ。」
 ハッ、とまた一礼をし、コルゼは退室した。








なぜ、彼らがこのように血眼になるのか……それは、グリアたち黒馬の民の行動が問題であったとされている。
 彼らは、奴隷農奴などの開放を掲げ、領内を荒らし回る盗賊として領主などから疎まれていた。もっともそれを公にできないのは、明らかな法令違反をしていたこところをグリアたちが突いた、と解釈もできる。


要するに、目の上のタンコブ以上の煩わしさを感じていただろう。 

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