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犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとお年玉

「よかったら
年始も来てあげて、
みんな喜ぶから」


老人ホームの女性スタッフさんに
そう言われていた純心。


お正月でも家に帰らずに
ホームでお正月を迎える
おじいちゃんおばあちゃんが
相当数いるという話だった。


もともと死んだおばあちゃん
大好きっ子だった純心、
お年寄りは嫌いじゃない。
出来るだけのことはしてあげたい、
そんな気持ちもある。


あのエロいおじいちゃん達だって
なぜか見ていると
ほっこりさせられてしまう
愛嬌に溢れている。


正月三が日のうちに
一度行っておこうかと思い立つ。


-


「まぁ、犬女ちゃん、
あけましておめでとう」


「おう、あんちゃん、
あけましておめでとうさん」


ホームの老人達は
純心と犬女ちゃんがやって来ると
次々と新年の挨拶をと、
笑顔で声をかけて来てくれる。


その笑顔を見ると
来てよかったと純心は思うのだが、
ここでひとつ困ったことが起きてしまう。




お年寄り達がみなお年玉をくれるのだ。
しかも純心と犬女ちゃん二人に。


純心はもちろん断るのだが、
「子供が遠慮するんじゃありません」と言われ、
結局は受け取ってしまうことになる。


しかもかなりの人数から渡されるので
どんどん総額が増えて行くばかり。


あの生徒会長のお爺様、
つまり学校の理事長がやっている
有料老人ホームだけあって
裕福な層が多いのであろうか、
一人あたりもそこそこの額だ。


ここで
「お年玉もらえて超ラッキー!」
と思える性格なら
純心もまだよかったのだが、
そんなお気楽で能天気な
性格ではない純心は
また思い悩むことになる。


『これってなんか
お年玉もらいに来た人みたいになってね?』


これではなんだかお年玉目当てで
寂しいお年寄り達のところに
新年の挨拶に来た
ちゃっかり高校生みたいだ。


もちろん、
まったくそんな気はなかったし
お年玉をもらうというのも
まったく予想外のこと。
自分がそんなに
子供っぽく見られているとも
思ってはいなかった。


お正月の雰囲気が残る
三が日のほうがいいだろうと判断したが
それが間違いだったのかもしれない。


親切というのはやはり難しい。
相手のためを思ってやったことでも
相手からすればありがた迷惑だ
ということも十分にあり得る。


-


もう一つ悩みどころが
犬女ちゃんにもらったお年玉だ。


犬女ちゃんは、基本
人間のお金の価値をわかっていない。
人間にとって大事な物であり、
いたずらしてはいけない物としては
ちゃんと認識されてはいるが、
人間の貨幣経済については
何もわかっていないと言って間違いない。


となるとまた
犬女ちゃんがもらったお年玉も
純心が預かることになるのだが、
まるで犬女ちゃんがもらったお金を
猫糞ネコババしているみたいで
なんだか妙に気持ちが悪い。
犬女のお金を猫糞ネコババとか
字面的にもなんだかよくわからない。
犬と猫のババの問題なのかと
思ってしまう。


犬女ちゃんが
病気やケガをしたときのために
貯金しておいてあげるというのは
ありだとは思うのだけど、
犬女ちゃんは預金口座をつくれない。


口座名が『イヌオンナチャン』では
銀行窓口のお姉さんも
怪訝な顔をするのはまず間違いない。
そもそも国籍も住民票もないのだから
本人を証明出来るようなものもない。


そう考えると、
犬女ちゃんという存在は
一体何なのだろうと不思議に思える。




以前、
犬女ちゃんの自立について
考えたことがあったが、
自立とは、自分の力でお金を稼いで、
自分一人の力だけでも生きて行けることを
言うのだろうと純心は思っている。


犬女ちゃんが
職業犬のようになって、
お金を稼ぐことが
出来るようになったとして、
お金を管理する能力がないのだが
それは果たして自立していると
言えるのだろうか。
やはり餌が現物支給される
しかないのだろうかと
いつものごとく
いろいろと考えはじめる純心。
疑問は深まるばかりである。


-


結局、純心は
おじいちゃんおばあちゃん達から
もらったお年玉を返してもらうように
ホームの女性スタッフさんに
頼むことにする。


誰一人悪い人はいない、
いい人だけしかいない、
優しい世界のはずなのに
何故かみなが
ちょっと気まずくなってしまう。
そんなこともあるのが
人間のコミュニケーションの
やっかいなところでもある。




人間同士のコミュニケーションも
犬女ちゃんのように
もっと単純明快にならないものかと
ここ最近、純心はずっと思っている。




少し気まずさを覚え、
『老人ホームに
行きづらくなってしまった』
と純心は思っていたが、
犬女ちゃんはその後も
純心を無理矢理引っ張って
老人ホームに連れて行くのだった。


やはりそこはさすがの犬女ちゃん。













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