犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとクリスマス(2)

老人ホームと養護施設の
合同クリスマスパーティー、
その準備を進める純心。
そして犬女ちゃんガールズの面々。


しかし思っていた以上にパーティーが
大がかりなものとなってしまい
準備もなかなか大変であった。


足が悪い老人も多いので、
会場は老人ホームを使用するとして、
養護施設の子供達を老人ホームまで
移動させなくてはならない。
そこは高校生の純心達には
どうしようもないところなので
予算の中から大型観光バスを借りることに。


「なに?大型免許?
持っているに決まっているであろう。
こんなこともあろうかと思って、
ちゃんと大型免許を取得していたのだ」


小夜子さよこ先生が
その大型バスの運転手を名乗り出る。


『どんなこと想定してたんだよ、あんた』


小夜子先生が言うとなんでも
エロいプレイ目的にしか聞こえない。


-


それでもまだ人手が足りない。
両施設思った以上に人が多く
総勢百人以上は優に超える。


「あーし、よかったら手伝うしー
おばあちゃんとか超好きだしー」


「あーしも、
ガテンなダーリンと手伝い行くしー
ダーリン会場設営とかの仕事してるしー」


図書委員から話を聞いた
白ギャル黒ギャルが
お手伝いの名乗りを上げてくれる。
やはり見かけによらず
めちゃいい娘さん達だ。


「たまには人のためになることを
してみろって言うなら、あたしだって
やぶさかじゃあないんだぜ」


スケ番お京は生徒会長とは違う
ベクトルでツンデレということで
いいのではないだろうか。


-


クリスマスにはまったく縁がなく
悲しいぐらいに何の予定もない
三馬鹿トリオも手伝いに立候補。


「我輩達、本当はクリスマスなぞの
西洋イベントには興味がないんですがな、
純殿がお困りとあればいたし方ありませんな」


『むしろ
クリスマスさんの方が
お前らに興味ないだろ』


熟女好きのメガネには
おばあちゃんもストライクゾーンに
なってしまうのだろうか。


「またいいPVにしてみせますぞ」


ドルオタはまた生徒会長に頼まれて
パーティーの様子を撮影して
また学校のプロモーションビデオを
つくるらしい。


「僕も妹達連れて
参加させてもらってもいいよね」


ロリコン疑惑のジャガイモがいれば
女児については心配いらないだろう。
そういえば、マイちゃん、ミイちゃん、
ユウちゃん、ユアちゃんは
元気なのだろうか。


-


熱血体育教師の剛田先生もやって来た。


「チャン!久しぶりだな」


「ハハハ、人手がいるんだって?
そういうときこ運動部にお任せあれだ!」


「荷物運ぶのとか、重い物運ぶのとか、
お年寄り運ぶのとか、運ぶ仕事は任せてOK!」


『なぜ、運ぶの限定?』


助っ人に来てくれる
体育会系運動部の中には
肩を壊した野球部のエースもいる。


「肩の治療で
いろんな人に世話になってるからな。
こういうボランティアにも
ちょうど興味があったんだ。
肩の負担にならない程度のことしか
手伝えないけどな」


さわやかな好青年でイケメン、
そしていい奴。もう最強。


-


交換留学生の三人組も来てくれた。


「カオル、オマエ、テツダウカ」


少しは日本語が上達していたが、
相変わらず犬女ちゃんの名前を
『カオル』だと間違っている。
妙に熱い顔で頷きながら
握手を求めくるので、
やる気まんまんではあるらしい。




「やはりこういうイベントには
我々のサポートが欠かせないと
言って過言ではないでしょう」


生徒会メンバーの一二年生達。
三年生は大学受験目前なので
さすがに欠席ということだ。


『もはやイベント扱いなのかよ』


「将来官僚を目指す我々としては、
日本の福祉の現場を見ておくのも
必要と言えましょう」


それは一理ある。
日本の高齢化問題と
少子化問題などにも
無関係とは言えない話だ。
将来官僚になった暁には
是非検討して欲しいところだ。




他にも犬女ちゃんに
探し物をしてもらった生徒、
何らかの形で助けてもらった生徒が
続々と名乗りを上げて来る。
あのいじめられっ子と
いじめっ子すらもやって来た。


もはやクリスマスに
何か大きなイベントがあるらしい
と学校中で噂になっている。
タチが悪いのが肝心である
本来の主旨が伝えらぬまま、
何か楽しそうという部分だけが
誇張して伝わって
広がっていたことだ。


すでに学校中が
第二の文化祭レベルで
盛り上ってしまっている。
さすがに受験を控えた
三年生はそれどころではなかったが。


屋台を出店するかという
わけのわからないことを
言い出す集団も出はじめる。


『もはやクリスマスなのか
何なのかわけわからねえなこれ』


「全国の大学関係者のみなさまも
あなた達のことが
余程気に入ったらしく、
パーティーの様子を見たいという
問合せが殺到しましたので、ネットで
動画をライブ配信することにしましてよ」


生徒会長も満足気に
ドヤ顔を浮かべている。


『他人のクリスマスパーティー見て
何が楽しいんだよ一体?
自分達でクリスマスパーティーやれよ!』




純心はこれもまた
犬女ちゃんの異能力、
ハーメルンの笛吹き男効果
のひとつではないかと思う。


『しかし、
犬女ちゃんはすごいな…』


同時に犬女ちゃんのことを
心底すごいとも思っていた。


二学期にこの学校にやって来て
わずかな数か月の期間で
これだけの人々との輪を
つくりあげた犬女ちゃん。


いつか日向ひなた先生が言っていた
「いいことをしていれば、
いつかそれが巡り廻って
自分にもいいことがやって来る」
その言葉をそのままやってのけている。


ここまでの道ノリを思うと
あまりにも感慨深く、純心は
また涙目になってしまいそうだった。


-


とは言え、一番大事なのは
お年寄りと子供達が
本当の意味で心ある交流が
出来るかとうかであり、
そのためにはどうしたらいいか
そこはみなで真剣に考えた。


お年寄りと子供がペアになって、
一日一緒にパーティで過ごしてもらう。
大事なのはその相性だろうから、
そこも両施設の担当者と打ち合わせして
カップリング、マッチングを綿密に行った。


「田中さんにはちょうど十歳ぐらいの
女の子のお孫さんがいますね」


「エリカちゃんも昔おじいちゃんと
一緒に暮らしてましたから
いいかもしれませんね」


こうした相性分析のような
頭脳労働的な部分では、
頭脳明晰な生徒会メンバーが本領を発揮する。
文化祭での雑用下っ端ぶりが嘘のよう。


『やはりこの人達は雑用より
こういう使い方しないとだめだろ』


-


しかも事前準備は
それだけではなかった。


「やっぱさー
盛り上げるためには、
余興が必要だよねー」


夏希はニヤニヤしながら
ドラムを叩く真似をする。


「『犬女ちゃんガールズ』
バンド再結成ですわね」


久しぶりのライブに
目を輝かせるお嬢様。


「あら、
別に解散した覚えは
ありませんでしてよ」


生徒会長に続き、
図書委員のとどめの一言。


「純心くん、
『忠犬ハチ公』の舞台も
再演するからよろしくね」


『お前ら本気で
文化祭もう一回やる気だろ!』


こうしてクリスマスパーティーは
あらぬ方向に向かって
異様な盛り上がりをみせていたが、
それすらもこの学校らしいと言えば
非常にこの学校らしくはあった。











コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品