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犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとクリスマス(1)

もうじきクリスマス。
世間では一か月以上も前から
街にイルミネーションが飾られ、
まるでカウントダウンでもするかのように
その日が来るのを待ちわびている。


クリスマスの
ちょうど一か月前、
いつもの女子メンバーに
純心は尋ねていた。


「そういや、
みんなクリスマスはどうすんだ?
イブとかさ」


女子はみな口を揃えたように
イブの夜は家で家族と一緒に過ごす
という答えばかり。


学校でもトップクラスの
美少女ばかりが集まっている
というのにまったく
色気のある話は聞かれない。


まぁそこは純心に
気のある女子ばかりだから
純心が何もしなければ
当然そうなるのかもしれないが。


「そっか、じゃあ昼間は
うちでパーティーでもするか」


そんな話の流れになっていたが、
その後に行った老人ホームで
介護士さんが話していた
クリスマスのことが
純心はずっと気になっていた。


伊達に死んだおばあちゃんが
大好きだったわけではない。
老人ホームのおばあちゃん達に
死んだおばあちゃんのことを重ねてしまう。
犬女ちゃんも何も言わないが
もしかしたらそうなのかもしれない。


小さい頃、母に連れられ
おばあちゃんの家を飛び出してから、
おばあちゃんと一緒に
クリスマスを過ごしたことはない。
改めて無念と言えば無念、
心残りでもある。


何故一度も会いに行かなかった
のだろうかとも考えるが、
おそらく自分も母も父親の
暴力がトラウマになっていて
あの家に近づくことが
出来なかったのではないかと
冷静に分析などもしてみる。


とにかく純心の心には
老人ホームのおはあちゃんと
おじいちゃん達のことが
ずっと引っかかっていた。


-


クリスマスが近くなったある日、
女子メンバーが家に揃っていたので
その話をしようとする純心。


「あのさ、
クリスマスパーティーのこと
なんだけどさ…」


純心が言いかかったとき
上からかぶせて来るお嬢様。


「それなんですけど、
ごめんなんさい…
私予定が出来てしまいまして…」


まさかの嬢様が
誰かとデートでもするのだろうか、
ちょっとどきどきする純心。


「お父様が
慈善事業の一環として
運営されておられる
養護施設の子供達と一緒に
クリスマスパーティーを
することになりまして」


純心はまた浅はかな自分を
責めなくてはいけないハメになる。


お嬢様の話では、何かしらの事情で
親と一緒に暮らすことが出来ない
子供達が養護施設にはたくさんおり、
クリスマスも親と家族と
一緒に過ごすことが出来ずに
寂しい思いをしているという。


お嬢様自ら
サンタクロースのコスプレをして
プレゼントを届け、
そのまま子供達と一緒に
クリスマスパーティーをするのだそうだ。


お嬢様が白い髭を着けて
サンタになるのも可愛いだろうが
しかし美しいお嬢様が
中年オヤジに変装するのはいただけない。
やはりポジション的には
聖母マリア様のほうがいい、
そんなどうでもいい雑念を抱きながら
お嬢様の話を聞いていた純心。


それにしてもあのお父様も
さすがお嬢様のお父様だけのことはある。
まるでノブレス・オブリージュ、
高貴な人間には
社会的に果たすべき義務がある
ということだろうか。
ただ娘を超溺愛するだけの
大金持ち親父というわけではなさそうだ。


「それは子供達にも
喜んでもらえるんじゃないですか」


図書委員もどちらかというと
そういう社会貢献に
興味がありそうな口ではある。


「ただ、毎年
子供達だけでパーティーをしても
やはりどこか寂しそうにしている
という話を聞きまして、それで今回は私も
参加してみることにしたのですわ」


「クリスマスって
家族イベントって感じするもんねー」


『ふーん』


『なるほどな、
子供達だけでも
それはそれでダメなのか、
クリスマスってのは
案外難しいもんだな』


純心はそう思いながら聞いていたが、
そこで終わってしまうあたりが
さすがに超鈍感な純心である。


すると犬女ちゃんが
純心に向かって鳴き出した。
人間の言葉がわからないはずなのに。
偶然なのか何かを察したのか。


「そう言えば、さっき純心も
何か言いかけてなかったー?」


夏希に言われて
自分の話を思い出した純心。
老人ホームのおじいちゃん、
おばあちゃんの話をみんなにする。
お年寄りだけのクリスマスは
どこか味気ないという話を。




「それって、
一緒にやればいいんじゃないかなー」


夏希はいつも単純明快だ。
だがそれがいい。


「それは素敵ですわね、
きっと子供達も喜びますわ」


お嬢様も大賛成。


「どうせなら
みんなに喜んでもらえる
ようものにしいたいですね」


いち早くすでにプランを
考えはじめている図書委員。




お年寄りと子供達の
クリスマスパーティーを
合同で一緒にやって交流を図る。
確かに素晴らしいように聞こえるが
果たしてそれが両者の望む
クリスマスになり得るのだろうか。
ともすると親切の押し売りに
なりかねはしないかと純心は悩む。
世の中には余計なお世話
というものがある。


犬女ちゃんは、
状況をよくわかっているのか
どうかも定かではないが、
すっかり乗り気のようだ。


犬女ちゃんはいつもそう。
相手の事情も、
周りの事情も考えずに
まずいきなり親切を押し付ける。
あれこれ考えない。
目の前に困っている人がいたら
体が勝手に動く。
それで結果的に人を
ちょっとだけ幸せにしたりする。
純心はそんな犬女ちゃんが
誇らしいし、少し眩しかった。




それに、
そんな大掛かりな話となると
かなりの手間とか費用が
掛かって来てしまうだろう。
確かに大お金持ちのご令嬢が
ここに二人いるわけだが、
それを頼りにしては
いけないような気が
純心はしている。


「そこは心配しなくても大丈夫でしてよ」


「あなた達の全国行脚の反響が
予想以上に大きかったので、
ちょうどおじい様が
あなた達に何かお礼をしなくては
とおっしゃていたのでしてよ」


「これに関しては
全面的に支援してもらえると
思ってよろしくてよ」


まさかあの全国行脚が
こうして形で役に立つことに
なろうとは思ってもいなかった純心。
やはりすべてのことは無駄ではなかった。


「それにこうした
社会奉仕活動を行っている
学校として世のみなさまに
アピールも出来ましてよ」


生徒会長はいつも
学校のアピールに余念がない。
お前は本当に学生か。


結局、お嬢様家の財閥と
生徒会長の家の財閥が
協賛とスポンサーという
大きなイベントみたいな話になって
合同クリスマスパーティーが
開催されることに決まる。


-


打ち合わせも兼ね
職場体験でお世話になった
老人ホームを訪れる
純心と犬女ちゃん。


純心が打ち合わせ中、
犬女ちゃんはおばあちゃんの
話し相手になってあげている。


「まぁ、
犬女ちゃんのお友達が
遊びに来てくれるの?楽しみねぇ」


そんな何気ない
おばあちゃんの一言。
感動する要素もまったく何もない
普通の日常会話。


だがおばあちゃんの
その一言を聞いて、
なぜだかわからないが
純心の目からは
涙がこぼれ落ちるのだった。











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