犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと貧乏生活(2)

お金がない状況から
数日が経過。


純心と犬女ちゃんは
学校には行っていたが、
頼みの綱である
保健医の日向ひなた先生もまた
泊り込みで研修のため
学校にはしばらくいなかった。


育ち盛りである純心は、
ここ数日ほぼ絶食しているため
お腹がすいて仕方がない。
授業中にお腹が
鳴らないように祈るばかりだ。


クラスのみんなも
全国行脚でしばらく
純心を見ていなかったため
異変に気づくものは誰一人もいない。


しばらく見ないうちに
少し痩せたんじゃないかな
ぐらいに思っていたのかも。


明日からの土日は
ひたすら動かずに
家でじっとして
寝ているしかない
純心はそう覚悟を決めていた。


-


夏希の家に行けば
ご飯を食べさせては
もらえるだろうことは
純心もわかっていた。


しかし毎日ご飯を
食べさせてもらうわけにはいかない。


夏希の母のことだから
事情を知ればきっと
お昼のお弁当だって
つくって用意してくれるだろう。


そこまで人に甘えて
迷惑をかけるようなことは
純心としてはしたくなかった。


妙なところで意地を張ったり
頑固なところがある純心。
母親からの遺伝なのかもしれない。


-


土曜日。
幸いなのかどうかは
わからないが、
今週は土曜日が、
学校の休みの日だった。


『これで通学に
無駄な体力を使わずに済む』


純心はそう思っていたが、
早く誰かに
助けてもらったほうが
本人のためであっただろう。




少しでも
お金を節約するために
家中の電気を消して
ごろごろしている純心。


昼間はまだよかったのだが、
夜になると
寒くて寒くて仕方がない。
もう十二月だというのに
節約のため暖房を
つけることもせず
毛布をかぶって
じっと動かずに寝転がっている。




しかし田舎の夜は
よく冷え込む。


当然家の構造や
立地条件によるだろうが、
家の中にいても
どこから冷気が入って来るのか
不思議になるくらいに
冷え込んでいる。


毛布をかぶっていても
寒くて仕方ない純心が
寒さのあまり
がたがた震えていると
毛布の中に犬女ちゃんが
潜りこんで来た。


犬女ちゃんは
純心にぴったりくっつき
純心を暖めてくれようとしている。


『なんて暖かいんだろう』


犬女ちゃんがこんなにも
暖かいだなんて
純心には予想外のことだった。


犬は全身が毛で
おおわれているから暖かい、
これはわかる。


人間も体温があるので
くっついていれば暖かいのだが、
犬女ちゃんは
それ以上に暖かかった。
風邪を引いて熱でも
出しているんじゃないかと
純心が心配になるぐらいに。


犬女ちゃんは自分の体を
湯たんぽ代わりにして
純心のことを暖めてくれた。


-


次の日、
日曜の朝。


純心が目覚めると
犬女ちゃんが
どこから持って来たのか
袋に入ったビスケットを一枚
口に咥えて持って来た。


家の中のどこかに
落っこちていたのを
犬女ちゃんが探して
見つけて来たのだろう。


「でかした!」


お腹が空いて
仕方がなかった純心は歓喜する。


しかしお腹が空いているのは
犬女ちゃんもまったく同じはずで、
見つけて来たのは
犬女ちゃんなのだから
犬女ちゃんが食べるべきだ、
純心は思い直す。


袋を開けてビスケットを
取り出した純心は、
ビスケットをそのまま
犬女ちゃんの口元へと運ぶ。


「お食べ」


純心がそう言葉をかけると、
犬女ちゃんは手を出して
ビスケットを持つ
純心の手を押し返した。
ビスケットを純心に
押し付けようとしている。
純心に食べろと言っているのだ。


純心が犬女ちゃんに
ビスケットを差し出して、
犬女ちゃんが押し返す、
何度かそれが続いた。


「じゃぁ一緒に食べよう」


純心がそう言って
ビスケットを二つに割って、
片割れを口に咥えると、
犬女ちゃんもようやく
もう一方の片割れを
口に咥えてくれた。


犬女ちゃんは
嬉しそうな顔をして
その大きな瞳で
じっと純心を見つめている。
ビスケットを口に咥えたままで。




犬女ちゃんも
お腹はすいていたが、
それはどうでも
いいことだった。


それよりも純心と
一緒にいられること、
それが犬女ちゃんにとって
一番大事なことだった。


以前、純心に
会えなくなったとき
犬女ちゃんは食事も
喉を通らなくなり、
痩せ細ってしまったことがある。


犬女ちゃんの中では
食欲よりも何よりも
純心が一番大事であり、
だからどんなにお金がなくても
貧しくても、お腹が減っても、
純心と一緒にいられれば
犬女ちゃんはそれだけで幸せだった。


-


改めて
スケジュールを確認して、
実は純心達が
もう家に帰って来ている
ということに気づいた夏希。


何も音沙汰が
ないのはおかしいと、
慌てて純心の家に
行ってみることに。


何度呼び鈴を押しても
返事がないので、
夏希がおそるおそる
家の中に入って行くと、
真っ暗な家の中で、
純心と犬女ちゃんの
二人が倒れており
ぴくりとも動かない。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


これは何か事件が
起こったに違いないと
勘違いした夏希は
思わず大声で叫んでしまい、
近所でちょっとした
騒ぎになってしまうのだった。


-


夏希宅で
二人並んでご飯を
たらふくご馳走になる
純心と犬女ちゃん。


「お前ご飯粒ついてるぞ」


純心は犬女ちゃんの
ほっぺについているご飯粒を
指でとってあげて
そのまま口に放り込む。


犬女ちゃんも
純心のほっぺについたご飯粒を
舐めてとってあげる。


貧しいときも富めるときも
二人はいつでも一緒である。


「なんか妬けちゃうなー」


二人の熱々ぶりに
複雑な表情の夏希。


-


『やはり人は
一人では生きていけない』


『ときには誰かに助けられ、
ときには誰かを助け、
助け合って生きていくのか』


そんな当たり前のことを
改めて痛感する純心。


そしてそのことが、
ちょっとだけみんなが幸せになれた
クリスマスへとつながっていく。











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