犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと貧乏生活(1)

それは不思議な出来事だった。


まるでこの世界から
純心と犬女ちゃんだけが
忘れられてしまったような。


そんな体験が
純心と犬女ちゃんに
降りかかる。


本来であれば、
犬女ちゃんのお風呂当番のために
毎日女子が日替わりで訪れているので
決してそんなことは起こりえないのだが、
ここ最近は全国行脚で
家を留守にしていることが
多かったこともあり、
夏希、お嬢様、愛ちゃんは
まだ二人が全国行脚に行っていて、
家を留守にしていると思っていた。


純心達に無茶ぶりをした
当の本人である生徒会長も
完全にスケジュールを間違えており、
翌週帰って来るものと勘違い。


運の悪いことに
純心と同じクラスであるはずの
図書委員はインフルエンザで
一週間学校に出席禁止になっていた。


なぜかその週に限って、
クラスが違う夏希、お嬢様とは
学校でまったく顔を合わすこともなく。


そうした偶然が積み重なり
純心達は約一週間、
いつもの女子メンバーに
まったく会わなかった。


-


そういうときに限って
なぜかお金が一銭もなくなった。


いつもであれば母が
数か月から半年分をまとめて
純心達の生活費用銀行口座に
振り込んでおき、
純心がそこから引き出して
生活費として使うのだが、
なぜか銀行口座に
そのお金が振り込まれていない。


おそらく母が振込みを
忘れたのかもしれない。


純心もここ最近の
日本全国行脚で、
すっかり口座残高のことを
忘れていた。


生徒会長から渡されていた
プレミアムカードで、
旅費、宿泊費、食費を
すべて払っていたから
金銭感覚がなくなり、
口座残金をすかっり
間違えていたのだった。




母に早急に生活費を
振り込んでもらわねば
すぐにでも電気・ガス・水道が
止められる可能性がある、
高校生の純心はそう思って慌てる。


実際はそんな短期間で
ライフラインを
止められるような
ことはないのだが。




それよりも何よりも
家に食べるものが
ほとんどなかった。


このままいくと最悪
数週間絶食しなければならなくなる。
そこまで行くと生存の可能性すら
あやぶまれる。




『ち、なんだよあのババァ』


焦っているせいか
純心も多少機嫌が悪い。
このレベルで
お金がないというのは
何とも人を不安にさせて、
メンタルを追い詰める。
心のどこかに常に
もやもやしたものを
抱えているような、
ザワついているような感覚だ。




純心は母に何度も
国際電話をかけるが
一向につながらない。


『まさか、何かあったのか?』


連絡が取れないとなると
今度は事件や事故といった
安否の心配もしなくてはならない。


『あぁ、クソッ!』


本当は短気な純心、
上手くいかないことが重なり
頭に血が上って
苛立ちを隠し切れない。


そんな苛立っている
純心を見た犬女ちゃん。
掌を純心の目の前に差し出す。


「……。」


純心は犬女ちゃんの肉球を
しばらくぷにぷにさせてもらい
ようやく我を取り戻して落ち着く。


「…はぁっ」


落ち着いたところで、
直近一か月の間に
母から来ていたメールを
すべて見返してみる。


『未開の地に
新種の犬女を探しに行くから
しばらく連絡が取れません』


普段から夫婦揃って
世界中を飛び回っている純心母。
未開というのがどれぐらい
未開なのかはわからないが、
少なくとも携帯電話の電波が
届かないぐらいには未開らしい。




「どうするかなぁ…」


純心は床に座り込み、
がっくりうな垂れ
悲嘆に暮れている。


そんな純心の肩を
ポンポンと叩いて
励ましてあげる犬女ちゃん。




しばらくは純心と犬女ちゃんの
貧乏生活は続くことになりそうだ。











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