犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと沖縄(2)

その老人はまさしく
好々爺といった風体をしていた。


頭は禿げ上がっており
ツルツルピカピカで
白髭を胸の辺りまで
伸ばしている、
まるでどこかの
仙人のようである。


老人の禿げた頭に
かさぶた傷があるのが
少し気になる。


この老人に会うことこそが
今回の旅、最大の目的でもあり、
そしてシーサーのような
犬女と一緒に暮している
その人でもある。




「お主があや子さんの息子かい」


母の名前を口にするあたり
この老人と母は交流があるのだろう。
そう考えると母も
秘密結社『大学関係者』の
一員なのではないだろうか、
純心はそんなことを考える。




「ほう、この子が犬女ちゃんか」


老人は犬女ちゃんを
しばらくまじまじと見つめる。


「これはまた随分と
大事に育てられて来たようじゃな」


「犬女は
育てられた環境が
もろに影響するからな」


「育った環境次第で
ケダモノにもなるし、人間にもなる」


純心の脳裏には以前見た
野良犬女の姿が浮かぶ。
確かにあの野良が
今ここにいる二人の
犬女達と同族であるとは
とても思えない。


死んだおばあちゃんが
大事に育てていた
箱入り娘の犬女ちゃん、
今は純心が引き継いで
一緒に暮しているわけだが、
おばあちゃんと同じぐらいに
大事に出来ているか
どうかわからないけど、
今は純心なりに精一杯、
犬女ちゃんを大事に
しているつもりでもいる。


そしてそれは
人間にも同じことが言える。
人間も環境次第で
悪魔にも天使にもなれる。


『この爺さん、いいこと言うな』


純心がそう思った矢先。


「しかしこの犬女ちゃん、
実にいい乳しとるのぉ」


ちょっと爺さんを
尊敬しかかった
自分を反省する純心。


『エロ爺かよ!』
『なんとなくそんな気がしていたが』


-


「この子は名前を
『シーサーちゃん』と言うんじゃ」


『やばい、この人
死んだおばあちゃんと
ネーミングセンスが一緒だよ』


挨拶代わりにワンと
ひと鳴きしてみせる
シーサーちゃん。


犬女ちゃんもワンと
それに呼応した。


おそらくはお互いに
挨拶をしているのだろう。


シーサーちゃんは
犬女ちゃんに
負けず劣らずの美少女で、
鼻筋がすっと通っており
全体的にクールビューティー
という顔立ちの印象を受ける。




「茶色い髪の毛の
犬女もいるんですね」


シーサーちゃんは
全身が茶色く見えるので
遠目からだと本当に
シーサーかと見間違う。


「ああ、それ?
わしが染めたんじゃよ」


『染めたのかよ!』




純心がそんなツッコミを
入れている間も、
爺さんは犬女ちゃんの
おっぱいを触ろうとして
蹴飛ばされている。
もちろん年寄りが
転ばないように
それなりに手加減してだが。


「やれやれ、
お前のところの
犬女ちゃんはケチじゃのぉ」


「減るもんじゃあるまいし、
この老い先短い年寄りに
ちょっとぐらい
触らせてくれてもよかろうに」


「シーサーちゃんなんか
ワシがおっぱい触ると
照れてワシの頭を
カジカジしてくるもんね」


『それ、めっちゃ怒ってるからね!』
『頭の傷はそれなんかい!』


「そんなこと言って、
お主もこのデカパイ犬女ちゃんのおっぱい
ぷにぷにさせてもらったりするんじゃろ?」


『そんなことしねーよ!』


「せんのかい?」


爺さんは困惑した顔をして
がっかりしている。


『なんでお前が困惑してんだよ!
困惑するのはこっちだよ!』


シーサーちゃんもさぞ
エロ爺さんのセクハラには
普段から困っていることだろう、
純心は同情を禁じえない。


-


純心は思うのだ。


『あなた達のためにも、
あの方には絶対会っておくべきでしてよ』


生徒会長は確かそんなことを
言っていたような気がする。


果たしてこのエロ爺が
絶対会っておくべき相手なのだろうかと。


もしかして生徒会長、
全国行脚の最後で
ものすごいポンコツ振りを
発揮してしまったのではないだろうか、
一抹の不安を感じなくもない。




それでも自分以外に犬女と
一緒に暮している人に
はじめて会ったことだし、
犬女ちゃんもシーサーちゃんに会えて
嬉しそうにじゃれ合ったりしているし、
会えてよかったのかもしれない
純心はそう考え直そうとしていた。




そう思って改めて
爺さんのほうを見ると、
エロ爺さんの頭が
シーサーちゃんに
カジカジされていた。


『絶対会ったほうがいい人って
シーサーちゃんのほうだな、こりゃ』











「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く