犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと沖縄(1)

九州の大学を回った後、
純心と犬女ちゃんは
鹿児島から出港している
フェリーで沖縄に向かうことに。


ここまで新幹線を頼りに
日本全国を旅して来た
犬女ちゃんもさすがに
飛行機だけはまだ乗れない。


新幹線と違い
飛行機は国内線であっても
保険の関係で
本人確認される場合もあるため
人間に変装してもらって
搭乗するのが難しい。
人間の扱いを受けていない
犬女である犬女ちゃんには
まだハードルが高過ぎる。


いっそ割り切って
積荷として飛行機に
積んでもらうという方法も
あるにはあるが、
ここまでその方法を避けて
日本全国を陸路で
回って来たのだから
最後まで純心のそばで
パートナーとして旅して欲しい
という気持ちが純心にはあった。


鹿児島から沖縄まで
フェリーで約二十四時間あまり、
飛行機に比べれば長くはあるが
犬女ちゃんのことを思えば
これが最善であると考えていた純心。
意外に頑固なところは
母親譲りなのであろうか。


-


フェリーでの長旅に
純心はすっかり
船酔いしてしまっている。


人間より感覚が鋭い
犬女ちゃんは大丈夫なのかと
自分が気持ち悪いながら
心配した純心だったが、
犬女ちゃんは
ケロッとした顔をして
いつもと変わらない様子だ。


三半規管や平衡感覚も人間より
優れているということなのだろう。
純心も人のことを
心配している場合ではなかった。




フェリーの中では
通常の四つ足で
のびのび過ごすことが出来て
犬女ちゃんはご満悦。


ここでもやはり
秘密結社『大学関係者』が
頑張ってくれているお陰か。
関西から西では秘密結社が
結構頑張ってくれているから
犬女ちゃんにとっては
過ごしやすい環境だろう。


人間基準であれば四つ足は
ビーストモード扱いだから、
通常モードが四つ足と言うのも
なんだか変な話でもある。




風に当たれば船酔いも
少しは楽になるだろうかと
甲板に出て椅子に座る純心。
心配そうに純心を
見つめている犬女ちゃん。


そのそばをかなり高齢だと
思われる二人連れの
おばあちゃん達が通りかかる。
おばあちゃん達は
犬女ちゃんに気づくと
びっくりした顔で立ち止まった。


『ああ、驚かせてしまったな』


すまないという気持ちの純心。
普段見たことがない、
見慣れない犬女ちゃんを見れば、
おばあちゃん達がびっくり
してしまうのは無理もない。
おばあちゃん達にだって、
悪気があるわけではないのだ、
仕方ないことだ。
純心はそう思っていた。




だが少し様子が違う。
二人のおばあちゃん達は
ありがたがって犬女ちゃんを
拝みはじめている。


「まさか、
こんなところで生きたシーサー様
見れるとは思ってなかったさあ」


おばあちゃん達は
合掌しながらそんな
言葉を交わしていた。


『シーサー?』


『て、沖縄の狛犬?』


おばあちゃん達には
犬女ちゃんが
シーサーのように見えるらしい。


おばあちゃん達は
七十、八十代ぐらいに見えるから
高齢で目が悪いのかもしれない。


純心が話を聞いていみると、
二人は沖縄の人で
九州に遊びに来ていて
今帰るところだと言う。
年寄りにありがちな
飛行機が嫌だから
船に乗ったという
パターンらしい。


「ぬぅ、
犬女ちゃん言うんかい」


「でもあんた、
これはどう見ても
シーサー様に見えるさぁ」


シーサーは
狛犬みたいなもので
獅子というか
獣の顔をしているから
犬女ちゃんをどう見ても
生きたシーサーには
見えないはずなのだが、
ちょっと納得がいかない純心。


-


沖縄に着いてみて
おばあちゃん達が
言っていたことが
純心にもようやくわかった。


沖縄ではいたるところに
シーサーの像が置いてあって
グッズなども売っているわのだが、
シーサーの造詣も千差万別、
いろいろなタイプのものがある。


中には人間的な顔、
愛嬌のある顔をした
シーサー像も多数あって、
おそらくは人間寄りに
デフォルメされた
もしくは擬人化された
ものなのであろうが
犬女ちゃんぽく見えなくもない。


そんなことはないのだろうが、
もし犬女ちゃんが本当に
シーサーの末裔だったとしたら
なんとも痛快な話でもある。


誰が最初に犬女と
名付けたかは知らないが
別に獅子女でもよかった
のではないかとも思う。
ライオンはネコ科だが。


シーサー自体も
ネコ科の獅子という説と
イヌという説があるようで
さすが伝説の獣らしい
曖昧な設定ではある。




沖縄の光景と相まって
純心の目にもバイアスが
かかっているのだろうか、
なんだか犬女ちゃんが本当に
シーサーのように見えて来る。


-


さらに船を乗り継いで
ようやく目的の離島に
たどり着く純心と犬女ちゃん。


そこはまるで
のんびりと穏やかな
人々がイメージする
沖縄そのもののような島。


高い建物が一切なく
どこまでも広がる青い空。


赤い瓦屋根の民家が並び、
舗装されていない白砂の道、
その両脇には
ずっと石垣が続いていく。


石垣はゴツゴツとした
天然の大きな石が
積み上げられただけで
まったく人口的なもの感じさせない。


民家の屋根には
様々な表情をした
シーサー像が座っており、
家に災いをもたらす悪霊を追い払う
魔除けの役割を務めている。
日々のお務めご苦労さんと
言てあげたくなるほど
親近感が湧く表情のものが多い。


もう冬だというのに、
華やかなハイビスカスや
ブーゲンビリアが
まだ咲き誇っている。


純朴で美しく、
まるでのんびりとおだやかに
時間が流れているかのような、
どこか懐かしささえ感じさせる、
そんな島だ。


『日本にこんな場所があるのか』


日本全国を回って見たが
その島はどことも違っていた。
沖縄と呼ぶよりは、
琉球という言葉がよく似合う。


-


離島の雰囲気を
楽しみながら
目的地を目指して
歩いていると、
行く道の真ん中に
犬女ちゃんがいる。


『あれ?
なんで犬女ちゃんが
あんなところに』


いつの間に先に行って
しまったのだろうと
不思議に思い
純心が横を見ると
そこにはちゃんと
犬女ちゃんがいる。


犬女ちゃん以外の犬女。


純心は我が目を疑った。


その犬女は
髪や毛の色が茶色く、
全身も茶系であったため
沖縄バイアスもかかって
本物のシーサーのように見える。


『まさか沖縄には本当に
生きているシーサーが
いるとでも言うのか?』


しかしよく見ると、
その犬女は茶系の衣装を着ており、
その綺麗な身なりからしても
おそらくは誰か人間と
一緒に暮らしているであろう、
ということを純心はようやく理解する。


以前見た野良の犬女とは
その雰囲気が明らかに違っていた。


犬女ちゃんも
野良と遭遇したときのように
警戒して吠えたりもしていない。


間違いなく
このシーサーのような犬女と
誰かがここで
一緒に暮らしているのだ。


純心ははじめて自分以外に
犬女と一緒に暮らしている人間と出会う。











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