犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと東京(8)/浅草

人力車を犬女ちゃんが引く。
いや人ではないので、
犬女力車になるのだろうか。


馬が引く場合は、
馬車となり『力』の文字は
入らないので、この場合は
犬女車なのかもしれないと
純心はまたどうでもいいことを
考えていた。


最初は車夫さんと同じように
二本足で車を引こうとしたが、
それではやはり思うように
スピードが出ないらしく
犬女ちゃんも不本意そうなので、
結局は犬女ちゃんの体と
車を紐で結びつけ、
四本足で車を引くことにする。


犬女ちゃんはしきりに
純心とお嬢様の服を
口で引っ張って
後ろの乗客席に
乗れ乗れと訴えかけて来る。


いくら犬女ちゃんでも
人間が二人も乗ったら、
人力車を動かせないだろうと
純心は侮っていたが、
犬女ちゃんはいとも容易く
涼しい顔をして
二人が乗った人力車を
引っ張ってみせた。


「まぁ、犬女さん、
すごいじゃないですか。
犬女さんがこんなに力持ちだとは
私知りませんでしたわ」


そこは以前から純心も
思ってはいたのだ。
人間の成人女性と
ほぼ変わらない犬女ちゃんに
なぜこんなに力があるのかと。


四つ足で走る
犬女ちゃんが引くと
それはもう
犬ソリとかに
近いように見える。


そういえば、童話の
『フランダースの犬』に
出てくる犬『パトラッシュ』も
荷車を引いて主人公を
助けるという忠犬であったが、
そちらの見た目に近い。


人力車的な見た目の
情緒要素はまったくゼロである。
昔ながらの伝統的な趣も
あったものではない。




それもあくまで
犬女ちゃんを犬サイドに
属すると考えた場合であり、
人間サイドとして考えた場合
女子高生と思われる娘に
四つん這いで車引かせている
超ど級の変態プレイにしか見えない。


しかも人間が引くより速い。
なかなかの速度で
走っているので、
車道を走っている
車のドライバーからすれば
都市伝説に出てきそうな
不気味なクリチャーかなにかの
類にしか見えないだろう。
ドライバーがびびって
急にハンドルを切って、
事故の原因にも
なりかねないかもしれない。


-


自動車を運転するドライバー、
道が渋滞しまっており、
さっきから一向に進む気配がない。


渋滞でずっと止まっていると
何だか眠気が襲って来る。


最近仕事で帰りが遅くて
すっかりお疲れモードだし、
こういうときは
事故を起こしやすいから
気を付けなくてはならない。


買っておいた缶コーヒーでも
飲んで眠気を覚まそうと、
缶を開け、コーヒー口にする。


何気なくふと横を見ると、
四つん這いになって
車を引きながら
女子高生が走って来る。


女子高生はそのまま
渋滞している車道の
狭い脇道を
物凄いスピードで
駆け抜けて行った。


ドライバーは
口に含んでいた
コーヒーを盛大に
フロントガラスに
向かって噴き出した。


「な、なんなんだ、今のは」


謎の奇妙な女子高生は
あっという間に、
渋滞している車道の脇を
通り抜けて行く。


しかも女子高生が
引いていた車の後ろには
金髪の天使が乗って
いたような気がする。


「ま、まぼろし?」


美少女が引く車に乗って
天国から天使が
お迎えに来たのではないか?
もしかして俺いつの間にか
死んでるんじゃないか?
そんな気にすらなって来る。


ドライバーは目をこすって、
再び今通ったものが
なんだったのか
確認しようとするが、
しかしとっくに
影も形もなくなっている。


「ああ、俺も
疲れているんだな、
もういい加減、
明日は休みを
取ったほうがよさそうだ」


たまたま浅草近辺で
起こっていた渋滞に
巻き込まれた人々の間では、
コーヒーを噴き出す
ドライバーが続出していた。


-


大都会のど真ん中、
その公道
しかも車道を
気持ち良さそうに
走り回る犬女ちゃんの
姿を見ていて
純心は爽快だった。


犬女ちゃんはいつも
自分が不可能だと
思ったことを
実現させてしまう。


人間の予想する
はるか斜め上を行く
野性の力で。




しかし結局、犬女ちゃんは
あまりに気持ち良くて
自由に走り回り過ぎたため、
車夫さんがいつも走る
コースを大きく外れ
狭い道に入ってしまい、
車道の車から
クラクションを鳴らされ、
怒られてしまうのだった。











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