犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとハロウィン(3)

ハロウィンイベントが行われる
地方都市の駅周辺から
繁華街にかけては、
すでに仮装した人々で
溢れ返っている状態だった。


さすが渋谷のハロウィン同様の
盛り上がりを目指している
というだけあって、
地方にしては中々の盛況ぶりである。


街全体の装飾が
ハロウィン一色で、
かぼちゃのランタンのオブジェが
いたるところに置かれ、
可愛いゴーストや魔女の
イラストなどもあり、
全体的にオレンジの黒の
二階調に染まっている。


いかにもおとぎの世界の
ハロウィンに来た感じで
男子高校生の純心でも
ちょっとワクワクしてしまう。


そこかしこで、
仮装パレードや
仮装パーティーなども
行われているようだ。


-


街を行く仮装した人々も、
アニメ、漫画、ゲームなどの
キャラクターに仮装する人、
単に可愛く着飾りたい人や
本来の趣旨に沿ったホラー系の人、
受け狙いネタ系など
見ていて飽きない。


今年大ヒット、大流行した
ケモノ系アニメが
やはり人気らしく、
ケモノ系キャラに扮した
仮装・コスプレが異様に多かった。


街行く人の
半数がケモノ仮装、
例年に比べても
明らかに趣が異なり、
犬女ちゃんがむしろ
同化してしまい
目立たないという
不測の事態が発生していた。


別に目立ちたかった
わけではないし、
出来れば目立ちたく
なっかったので
それはむしろ
ラッキーだったのだが。


犬女ちゃんもまるで
同族がいっぱいいるようで、
目を輝かせて尻尾を振って
嬉しそうにしている。


『匂いでわかりそうなもんだが』


匂いは確かに
人間以外の何者でもなかったが、
それでも犬女ちゃん的には
嬉しかったのであろう。


そりゃこんなにたくさん
耳と尻尾を生やした人間を
見たことがないだろうから
無理のないことかもしれない。


もしかしたら
人間に自分のことを
認めてもらったのかも、と思って
嬉しがっているのかもしれない。




それでもホラー系仮装や
ゾンビ系仮装の集団が
通りがかると、
やはり少し警戒していた。
お化け屋敷に
入ったときと同じである。


匂いは人間なのだが、
見た目が明きらかに
不審者なので、
吠えたらいいのか、
吠えてはいけないのか、
犬女ちゃんは
戸惑いを見せていた。




犬女ちゃんですら
目立たないという
今年のハロウィン仮装、
その中で一際異彩を放ち、
目立っていたのが
小夜子先生であった。


露出度的には、
それほど変わらない
もしくはより露出度が高い
女子も大勢いるのだが、
やはりガチ勢のマジモン
変態オーラは圧倒的に違う。


ともすると今にも脱ぎ出すのでは
ないかという迫力がある。
もうみながハラハラドキドキしながら、
視線は小夜子先生に釘付けである。


-


街中に溢れる
ハロウィンの雰囲気を
一行が楽しんでいると、
犬女ちゃんが店の前で
立ち止まり動かなくなる。


純心が近づくと
最近すっかり
聞き分けがよくなった
犬女ちゃんにしては珍しく、
口から涎を垂らして、
ハァハァと口で息をしている。


店のハロウィン限定パフェに
釣られて、もう他がまったく
見えないぐらいに見入っている。


どうせパンプキン味のパフェだろうし、
チョコレートパフェが好きな
犬女ちゃんが気に入るかは微妙だったが、
ちょうどいいのでその店で
少し休憩しようということになる。




純心の目の前で、女子達は
ハロウィン限定スイーツに
夢中になっている。
ただ小夜子先生だけは
そんな犬女ちゃんに
夢中になって見惚れていた。




去年までほぼぼっちで、
ハロウィンとは
無縁だった純心は思う。


仮装パレードや
仮装パーティーなどに
参加するわけでもない人、
目的を持たないで来た人は、
ただ仮装した大勢の人々と
街中を彷徨い、
ときどき気が向いたときに
『トリックオアトリート』
と言ってみたりするわけだが。


『これ絶対
ぼっちには無理なイベントだわ』


こういうのは大勢で
ワイワイ言いながら
雰囲気を楽しむための
ものであり、もし間違って
ひとりで来ようものなら、
俺何やってんだろう感が半端ない。
完全にリア充向けイベントなのだろう。


まさか自分がこんな
リア充向けイベントに
参加することになるだなんて
思いもよらなかった。


ここ半年の
自分を取り巻く環境の変化を
改めて実感する純心。


でもぼっち気味だった
以前の自分も
別に嫌いではないし、
リア充になりたいわけでもない、
そこは複雑な気分ではある。


このメンバーの中で、
同じような感情を持っている
人がいるとしたら
図書委員なのでは
なかろうかと思ったが、
図書委員は犬女ちゃんと一緒に
ハロウィン限定パフェを
一心不乱に食べている。


犬女ちゃんがもたらす影響、
周囲の環境の変化に
まだ気持ちが整理出来ず、
追いついていけない
純心ではあった。













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