犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと異世界転生バトル

図書委員は、
『犬女ちゃんの話を
いつか書いて欲しい』
と純心に言われて、
創作意欲がかき立てられたのか、
筆の勢いを止めることなく、
毎晩夜遅くまで書き続けていた。


『いつか』の部分が
大分忘れらているが、
犬女ちゃんという
好素材を書かないでは
いられなかったのだろう。


WEBの小説投稿サイトなどに
意気揚々とアップしてみたが、
アクセス数があまりなく
評価すらもしてもらえない、
そんな状況がしばらく続いた。


まず読んでもらわなければ
どうにもならない、
いろいろと試してみたが
やはりそれほど
アクセス数は伸びなかった。




そのうち図書委員は
もうどうしたらいいのか
わからなくなってしまった。


文化祭でみんなに
舞台の脚本を褒めれて
少し調子に乗って
しまっていたんだろうか。


純心は文才があると
言ってくれていたが、
純心に渡したのは
ラブレターであり、
小説を読んでもらった
わけではない。
そもそも文章の良し悪しが
どれぐらいわかるのか
という問題もある。


図書委員は、
すっかり心折れかけて
迷走してしまっている。


迷走しまくった挙句、
この際だから、
投稿サイトで流行っている
異世界転移バトルモノを
書いてみたらどうだろうか
というカオスな結論に
到達してしまう。


-


犬女ちゃんと一緒に暮らす
高校二年生の純心は、
突然犬女ちゃんと共に、
異世界に転移させられてしまう。


モンスターに襲われた
純心をかばって
瀕死の重症を負って
しまった犬女ちゃんは、
純心の使い魔となって復活し、
宿敵達との戦いを
繰り広げることになる。


-


という感じで
書いて行く図書委員。
犬女ちゃんと純心の
バディモノというのは
実際に即していて、
案外いけるんじゃないかな、
これいいんじゃないかな、
と自分で書いて
自分で興奮している。


夜中に書いたラブレター並みに
黒歴史の素を次々と
生み出していく図書委員。


-


「それがあなた達の力でして?
そんな程度では
このあたしは倒せませんでしてよ」


生徒会長の
使い魔・ヘルハウンド、
その火炎攻撃の前に、
純心と犬女ちゃんは
手も足も出なかった。


異世界に転移させられたのは、
純心達だけではなかった。
純心が通っていた学園の全員が、
何者かの謀略によって
強制的に異世界に
転移させられていたのだ。


たまたま学校にいなかった
純心と犬女ちゃん以外、
学園の全生徒が
何者かに洗脳されて
純心達を追う刺客となって現れる。


学園ではお互いに
助け合って来た仲間も
今は敵同士、こうして
戦わなければならない。


-


やっぱり、
学校の元仲間が敵になるとか
超燃える展開よね。
学校の人達参考にしておけば、
敵キャラの個性付けには困らないし。


-


ヘルハウンドの火炎攻撃に、
傷つき倒れる犬女ちゃん。


純心は犬女ちゃんに駆け寄る。


「大丈夫か?まだやれるか?」


心配そうな純心に
犬女ちゃんは力強い目をして応える。


「ワン!」


犬女ちゃんの鳴き声を聞いて、
純心も覚悟を決める。


「俺と犬女ちゃんの絆を
甘く見てもらっては困るな!」


「よしっ!
あれをやるぞっ!
犬女ちゃん!」


「ワン!」


純心は全身全霊、
すべての心力を解放し、
その絆パワーを
犬女ちゃんに注ぎ込む。


体が次第に金色に
光輝きはじめる犬女ちゃん。


「シャイニング犬女ちゃん!」


純心と犬女ちゃんの
魂がひとつとなって、空を駆け、
ヘルハウンドの体を貫く。


断末魔とともに、
ヘルハウンドは爆発四散。


しかしマスターである生徒会長も
その魂を道連れにされてしまう。


純心に抱かれ、その腕の中で、
最後の別れを交わす生徒会長。


「気をつけて…
まだ最後には小夜子先生が…」


生徒会長は
何かを伝えようとしたまま、
その命を散らしてしまう。


純心と犬女ちゃんは、
血の涙を流し、
黒幕への復讐を誓うのだった。


-


そんなプロットを
考えてみる図書委員。


『やっぱり、
黒幕は理事長になるかなぁ』


いやもっと全面的に、
いろいろ考え直したほうがいい。


-


純心はWEB投稿サイトで
図書委員だと思われる
アカウントを見つけ出し、
秘かにチェックしていた。


本人に見ていることを言うと、
また恥ずかしがったり、
気分を悪くしたり
するんじゃないかと
思っていたからだ。


サイト内での評価は
あまりよくないようであったが
純心は図書委員が書く作品は
日常の描写がよく出来ていて、
好きだった。


図書委員の新作に気づいて
純心は早速読んでみることに。


『犬女ちゃんの話って、
そういうのじゃあない』


『中二の愛ちゃんが書いた
作品みたいになってるぞ』


『あと、実名使うな』


ネットをしているときでも
ツッコミをしなくてはならない
純心だった。




サイトでも少し
アクセス数があがったが、
それほど劇的な変化はなく、
また凹む図書委員だった。











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