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犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと高校球児(2)

野球部のエースは
肩を故障していた。


犬女ちゃんは
それに気づいて
エースのことを
心配して見ていたのだ。


人間には気づかない
レベルではあるが、
犬女ちゃんの目から見ると、
明らかに体の動きが
おかしかった。


以前、部活体験で見た
エースの投球フォームと違い、
痛みをこらえて投げているのが
犬女ちゃんにだけはわかった。
それが野性ならではの目、
本能または第六感
ということなのだろう。


とんでもなく恥ずかしい
勘違いをしていた純心は
顔から火が
出そうな思いであった。


-


「お願いです先生、
このことは誰にも
言わないでください」


エースは必死で
日向先生に懇願する。


「あなたこのままだと、
二度と野球が出来なくなるかも
しれないわよ」


日向先生の口調は厳しい。


純心は、
そんな野球漫画みたいなことが
実際にあるものなのかと驚いた。


実際に純心が
思っている以上に、
才能がありながら
ケガや故障で
競技を辞めて行く選手は
はるかに多い。


トップアスリートになるための
必要最低限の条件は、
ケガに強い体をつくること
であると言っていいぐらいだ。




「次の試合も、
どうしても投げたいんです」


「この大会、最後まで
投げ抜きたいんです」


エースは必死で
日向先生に食い下がる。
普段のさわやかで、
甘いルックスからは
想像もつかないような
必死の形相だ。
ただならぬ
執念すら感じる。


-


正直純心には
エースの気持ちが
よくわからなかった。


野球が大好きであるならば、
一生とは言わないまでも
少しでも長く
野球が出来たほうが
いいに決まっている。


ここでゲガを無理して
試合に出たら、この先
続いて行くであろう
長い野球人生を
棒に振ってしまう
ことになるのだ。


今治療に専念すれば、
この先いくらでも
チャンスはあるだろう。


高校野球はダメに
なるのかもしれないが、
大学野球や社会人野球、
それこそ草野球だって、
野球が好きならば
いくらでも野球を続けて
行くことは出来るだろう。


なぜ今この瞬間に
そうした未来のすべてを
賭けなくてはならないのか、
純心には理解出来なかった。




純心からすると、
こうした体育会系の
独特の価値観、
それに基づく
思考ルーチンというのが
まったくよくわからない。


体育会系を苦手としている
最大の理由でもある。


-


「あなたには
まだ来年の夏があるじゃない。
野球は夏が本番なのでしょう?」


日向先生もなんとか
説得しようと試みる。


「来年の夏では、
ここまで来られるか
わからないんです」


「強豪校は
夏に合わせて来ますし、
うちのアドバンテージは
この秋しかないんです」


それでもエースは
引き下がらない。




純心には
エースの気持ちは
わからないが、
もし犬女ちゃんが
この内容を
理解していたとしたら、
おそらく彼の気持ちが
わかるだろう。


犬女ちゃんは
今この一瞬を
精一杯生きているだけで、
先のことなど
考えてはいない。


それは刹那的で
あるのかもしれないが、
そうして一瞬一瞬を
一生懸命生きて来た先に
未来や将来があるのだ。


もちろん犬女ちゃんと
人間である彼を
一緒に考えることは出来ないし、
彼と純心のどちらが
正しいとも言えない。


彼が今どうしたいかと
言うことになるのだろう。


-


日向先生は彼を
病院に連れて行き、
診察をしてもらった上で、
次の試合で彼が
投げられる方法を探った。


一応野球部監督、
両親や学校側にも報告し、
話し合いが行われた。


そこで、
最後は彼の意思で
決めるということになり、
野球部エースは
痛み止めを打って、
次の試合に投げた。


その試合を
犬女ちゃんと一緒に
応援に行った純心は、
満身創痍でマウンドに立つ
彼の姿に心打たれたが、
なぜそこまでするのか、
それはやはりわからなかった。


結局、その試合は
負けてしまったため、
エースは来年の夏に向けて
しばらく治療に専念して、
再起を図ることになる。


来年の夏までに、
彼が完治して
また投げられるようになる
保証はどこにもない。


本当にこれで
よかったのかと
純心は思う。




そして、
他人の価値観を認め、
人と理解し合うことが
この先自分に
出来るのだろうかと
純心は思う。


犬女ちゃんは
エースが無事に
再びマウンドに帰って来る日を、
復活する日が来ることを
祈っているのだった。













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