犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと打ち上げコンパ(2)

「あー、もう!
このままではラチがあかん!
お前らなんとかしろ!」


小夜子先生は
なかなか思うように行かずに
イラっていた。
これだけの人数がいては、
小夜子先生が犬女ちゃんの
肉球をぷにぷに出来る確率は
相当低いのだが、
わかっていないのだろうか。


とりあえず、このままでは誰も
本来の目的を達成出来ないので、
みな必死になって何度も
王様ゲームを繰り返した。


それはもはや犬女ちゃんの番号を
当てるゲームへと変わっていた。


-


何度も行われた挙句、
ようやく犬女ちゃんの
番号を当てる王様が現れた。


「二十三番が、
四十番の肉球ぷにぷに!」


犬女ちゃんが二十三番で、
図書委員が四十番だった。


これが逆であれば、
よかったのだが、
犬女ちゃんが
図書委員の肉球をぷにぷに
しなくてはならないという
なんだかよくわからないこと
になってしまっている。


肉球を持っている者が、
肉球を持っていない者の
肉球をぷにぷにする、
なんと哲学的な話だろうか、
と文学少女の図書委員は
必要以上に深読みしていたが、
実際そこに哲学は
あまり関係ないだろう。




しかし、犬女ちゃんの
昨日から続いている
カッコいいモードは
まだ発動中だった。


立ち上がった図書委員に、
いきなり壁ドンをして迫った。


突然のことに顔を赤らめて
うつむいて照れている
図書委員の顎に手を当て、
グイっと上を向かせる犬女ちゃん。


その姿は
女子を口説き落そうと強引に迫る
少女漫画のイケメンのようで、
女子はきゃあきゃあ言っている。


「犬女ちゃん、
超イケメンみたいなんですけどー」


「やだぁー
あたしもあんな風にされたいー」


小夜子先生は内心憤っていた。


『馬鹿者め!
今さら犬女さまの魅力に気づくとは!』




今の図書委員には、
ショートカットの犬女ちゃんが、
光輝くさわやかな
イケメンに見えていた。


もちろんラブロマンス系作品も
図書委員愛読書の範疇であるため、
すでにすっかりラブロマンスの
ヒロインになりきっていた。


実際にはイケメンでも
なんでもなく犬女ちゃんなのだが。


純心を想いながらも、
イケメンに強引に迫られて、
心揺れ動くヒロインという設定を
その場で自分で妄想して
酔いしれている図書委員。




犬女ちゃんは、その肉球で
図書委員の唇を撫でた。


純心は嫌な予感がした。


そのまま
図書委員の唇を吸う犬女ちゃん。


「きゃあぁぁぁぁぁ!」


女子は黄色い声を上げる。
男子も目が離せない
ことになっている。


純心の嫌な予感は的中した。


「…ファーストキス、
奪われちゃった…」


顔を赤くして
照れている図書委員。


図書委員はクラス全員の前で
そんなカミングアウトを
してしまったが、
果たしてそのカミングアウトは
必要だったのだろうか。


『久しぶりに出たなぁ~
ファーストキス被害者の会』


自分をはじめとして、
夏希、お嬢様、生徒会長と来て、
実に五人目の被害者である。


愛ちゃんと小夜子先生ですら
まだしてもらったことはない。


犬女ちゃんとしては、
図書委員の肉球ぷにぷには
唇だと思ったということなのか、
それとも文化祭で
いろいろとお世話になった
そのお礼の気持ちなのだろうか。
はっきりはわからないが、
図書委員をよく思っているという
気持ちは伝わったことだろう。




目の前で憧れの
犬女さまのキスシーンを
見せつけられた小夜子先生は、
嫉妬するよりも、
すっかり犬女ちゃんに
見惚れてしまい痺れていた。


『さ、さすが犬女さま、
このような大胆なやり口で
犬奴隷を集めておられるとは』


同時に変態的観点から
身悶えもしていた。


『こんな大勢の生徒達の眼前で、
犬女さまを寝取られてしまいましたわ…』


小夜子先生は、
一生犬女ちゃんの肉球に
触らせてもらえないような気もする。




文化祭の打ち上げは
カオスの様相を呈していたが、
犬女ちゃんの
カッコいいモード発動も
今日で有効期限切れで、
明日からはまたいつもの
ちょっと天然ボケで
可愛い犬女ちゃんに
戻ってしまうのだった。













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