犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと文化祭(6)/スクールアイドルコンテスト

文化祭二日目。


犬女ちゃんは、
スクールアイドルコンテストに
参加することになっていた。


白ギャル黒ギャルに半ば強引に
エントリーさせられていたのだ。




従来のミスコンは、
学校一の美女を決める
コンテストであったが、
時代の移り変わりとともに、
女性を容姿だけで判断して
優劣をつけるなんて
侮蔑的である
という風潮になり、
現在では、歌や踊りなどの
パフォーマンスを含めた
総合評価で判断され、
エンターテイメント性が
重視されているそうだ。


そしてついに今年から
ミスコンという名称も改められ、
スクールアイドルコンテストとして、
開催される運びとなっていた。


この学校の
スクールアイドルは、
ミスコンからの
流れであるため、
基本は個人参加が
原則となっている。


以前、生徒会長は
スクールアイドルコンテストについて、
そんな説明をしてくれた。




「見た目だけで
女性を評価とか、
よくありませんわよね」


「もちろんでしてよ、
女性は内面から滲み出る
美しさこそが大事でしてよ」


「いくら見た目だけよくてもねー」


生徒会長、夏希、お嬢様が
そんな話をしていたので、
純心は、犬女ちゃんが
コンテストに出場すると
言い出しづらかった。


だからコンテストに
出るときに必要な
犬女ちゃんの
着替えなどの準備は、
図書委員に手伝って
もらうように頼んだ。


-


クラスのメイド喫茶を
少し手伝ってから、
コンテストに向かった三人。


純心達が
コンテスト会場に着くと、
もうすでにコンテストは
かなり進んでいるようであり、
あやうく遅刻で
失格になるところだった。


このコンテストも
生徒会メンバーが
仕切っているようだ。
生徒会主催なのだろうか。


コンテストのMCも
やはり生徒会メンバーが
担当している。


文化祭中、
生徒会メンバーの
扱いぶりが
あまりにひどくて
純心は同情してしまう。


この有名名門私立学校の
校内でもトップクラスに
頭が良い人達なのだから、
将来この国の
官僚などになるような
超優秀な人材なのだが、
会場整理とか警備とか、
出演者のパシリとか、
雑用っぷりがあまりにひどい。


ここまで来ると
生徒会長がとんでもない
大人物なのではないかと
錯覚しそうになって来る。


-


一緒について来てもらった
図書委員に準備を
手伝ってもらい
会場に着いて早々
犬女ちゃんの出番となる。


いや正確に言うならば
イオちゃんの出番だ。


犬女ちゃんは、
人間の変装をしないと
電車に乗れないため、
登下校はまだ
イオちゃんの姿で、
通学していた。


犬女ちゃんが
イオちゃんであることを
知っている人間は
ごく限られているため、
男子生徒の間では、
登下校にだけ
姿を見ることが出来る
謎の美少女として、
ずっと噂されていた。


その内容も、
尾ひれがついて
もはや都市伝説とか
学校の怪談レベル
にまでなっている。


在学中に事故で死んだ
美少女の幽霊だとか、
この学校の精霊であるとか、
怪異の仕業だとか、
みんな割りと
好き放題言っていた。


犬女ちゃんも
人類にとって今なお
正体が解明されていない
謎の生き物という点では、
あながち間違っては
いないのかもしれないが。


幽霊とか精霊を
全否定してしまうと、
では犬女とは一体なんなのだ?
と犬女の存在自体を
突っ込まれてしまう
ことになりかねない。




そんな伝説の美少女が
ステージ上に立つと
会場は一気にざわついた。


「お、おい、あれ…」


「マジか、本当にいたんだ」


噂だけで実物を見るのは
はじめてだという生徒も多かった。


もはや伝説のツチノコを発見したとか、
そういうレベルの反応に近い。


合掌して念仏を
唱えはじめる生徒すらいる。


MCの生徒会メンバーには
事前に話をしていたので、
名前など何も聞かれることもなく、
いきなり曲が流れはじめる。




幻の美少女、
イオちゃんが、
静かなスローの
曲に合わせて
優雅に踊る姿を、
会場の一同は
息を吞んで見つめている。


まだ何も知らない人々は
今現在どんな幻想を抱いて
見ているかもわからない。


イオちゃんが
優雅に踊る姿は
まるで人ではない何かが
舞っているような
そんな不思議な魅力で
見ている人々を惹きつける。


美しく優雅であるのに、
眼光が鋭く精悍で、
どこか妖しげで、
人間にはない何かを
見る者に感じさせる。


実際に本当の
人間ではないのだから、
間違えている
というわけでもない。













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