犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと文化祭(1)/メイド喫茶

文化祭当日。
文化祭は二日間あるが、
二日目は午後早めに
終わりとなるために、
実質は一日半の
ようなものだった。


犬女ちゃんの
スケジュールは、
すでに予定がいっぱいで、
休憩時間すらまともに取れるか
わからないような状況だ。


純心は自分が犬女ちゃんの
マネージャーに
徹するしかないと
覚悟を決めている。


自分も舞台に
出なくてはならないのだが、
忙しいほうが、
そうした重圧も忘れられて
いいかもしれない、
と前向きに思うことにする。


-


忙しい文化祭のはじまりは
まずクラスで催す
出店への参加からはじまる。


純心クラスの出し物は、
教室を使用したメイド喫茶。


クラスの女子は、すでに
白ギャル黒ギャルが用意した
メイド服の衣装を着て
スタンバイが完了している。
いつでも店を
オープン出来る状態だ。


犬女ちゃんも、図書委員に
お着替えしてもらい
メイド服に身を包んでいる。


「あんたが、
メイド服とか超うけるしー」


「うるせぇっ!
ぶん殴るぞこの野郎!」


スケ番お京のメイド服姿を
白ギャルは指差して笑う。
お京もスケ番のくせに、
学校への出席率が高過ぎる
ような気がするのだが。




「お帰りなさいませ、ご主人様」
「にゃんにゃん」


メイド喫茶に来客があると、
こう言ってお出迎えすることに
なっているのだが、
犬女ちゃんは言葉が喋れないため、
当然ワンワンとしか言わない。


しかし、それがかえって
お客さんに受けたりもしていた。


ご主人様と言われなくても、
出迎えを受けて、これほど
自分がご主人様であると
感じることが出来る存在が
他にいるだろうか。


犬女ちゃんが、
四つ足で出迎えてくれた時点で、
自分がご主人様であることを
自覚出来るわけだ。
もちろん本来のメイド喫茶の
主旨からは大きく逸脱しているが。


-


さらに、
白ギャル黒ギャルは、
隠し玉として、
特別サービスを用意していた。


「今なら、犬女ちゃんの
超ぷにぷにの肉球に触れますよー」


「超気持ちいいー
美少女の肉球ですよー」


あくまで女性に限り、
一回だけ犬女ちゃんの肉球を
ぷにぷにさせてくれる、
というサービスだ。


このサービスが大反響を呼び、
純心クラスのメイド喫茶には
女生徒を中心に長蛇の列が出来た。


「はぁ、気持ちいい…」


犬女ちゃんの手にある
ぷにぷに肉球に触れた女子は
その気持ち良さに
思わずリラックスしてしまう。
それほどまでにほんわか
癒されてしまうらしい。
まるで犬女ちゃんの肉球には
特別な魔力でも
宿っているかのような話だが。




しかしこれには
当然ながら男子から
不満が漏れた。
なぜ男子は犬女ちゃんの
肉球に触らせてもらえないのか。
焦点はそこに尽きる。


「はぁ?
犬女ちゃんの大事な肉球、
男子なんかに触らせられねーし」


「あんたらどうせ、
トイレ行って手も洗ってねーんだろ」


「チ○コ触った汚い手で、
犬女ちゃんに触るとかありえねーしー」


白ギャル黒ギャルはいい奴なのだが、
口はこの上なく悪い。


「どうしても触りたいと言うのなら、
あたいを倒してから行くんだな」


なぜ犬女ちゃんの
肉球を触るために、
屍を乗り越えて行かないと
いけないのかよくわらないが、
それがスケ番お京の流儀なのだろう。


-


そんなメイド喫茶に
出来た長蛇の列の脇を、
行ったり来たり、
うろうろしている小夜子先生。


「メイド喫茶のお客になって、
犬女さまの肉球をぷにぷに
させていただく、ですって?」


腕を組みながら、
ひとりでぶつぶつ言っている。


「な、なんという、
卑劣なサービス!
そんなの入店してしまうに
決まっているじゃないの」


肉球の誘惑には抗えそうもない。


「し、しかし、
そ、それでは、
そんな方法で犬女さまの
肉球に触らせていただくなど
犬奴隷としては、
失格なのではなくて?」


相変わらず面倒くさい性格で、
ひたすらそんなことを
ぐじぐじと思い悩んでいる。
犬女さまのことで苦悩する
そんな自分に酔いしれていたりもする。


苦悩の末、
肉球の誘惑に負けて、
長蛇の列に並んで
しまう小夜子先生。


長いこと待たされて、
ようやく入店出来たときには、
犬女ちゃんの姿はどこにもなかった。


「あら、犬女さま、
いえ、犬女さんは?」


「先生、犬女ちゃんなら
もう次行きましたけど」


「な、なんたる大失態…」


-


犬女ちゃんと純心は、
次のスケジュールである
舞台の準備のため、
とっくに移動してしまっていた。


今さらながら、
セリフを忘たりしないか、
不安で落ち着かない純心に、
犬女ちゃんは、
両の掌を差し出してあげる。


純心は犬女ちゃんの肉球を
ぷにぷにさせてもらって、
癒されて、ようやく
少し落ち着くことが出来たのだった。













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